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旅行作家 竹村 節子氏がお薦めする
"癒しの温泉" シリーズ  第19回

竹村 節子 竹村 節子
温泉雑誌の編集者を経て旅行作家へ。現在は、(株)現代旅行研究所の専務取締役。旅行雑誌、婦人雑誌などへの執筆も多く、講演も行う。温泉に関する著書多数。全国の温泉地をつぶさに周り、各地とのネットワークも広い。



100年の土蔵を組み込んだ湖畔の宿
猿ケ京温泉(群馬県)



 群馬と新潟を結ぶ国道17号線は、江戸時代から栄えた幹道だった。三国峠への登り口に当たるところから寛永8年(1631)猿ケ京に関所が置かれたようである。いまでも町のまん中を抜ける国道沿いに、茅屋根の関所資料館が開かれている。その向かいを100mほど入った処に大きな養蚕農家が残っていたので寄ってみた。広い土間に囲炉裏のある板敷き。座敷も広い。
「使わなくなっても火を焚いていないと茅屋根が傷んでしまうんですよ」




薪をくべながら声を掛けてきたのは隣接する旅館「野の花畑」のご主人林具公さんだった。いまでは座敷を早く到着したお客さんのために開放して、お休み処として使っているのだそうだ。庭にあった3棟の土蔵のうち2棟は宿の中に組み込んであるという。面白そうだ。ちょっと見学させてもらうことにする。宿は赤谷湖を正面にする小さな岬のような処にあり、露天風呂が湖を眺めながら入浴が楽しめるように作られているのも魅力的だ。



 



 玄関を入ると黒い板敷きを黒い板壁が囲んだ真っ暗な空間。四隅と左右の入口に黒大理石の丸柱が並んでいる。正面に四角い窓が切ってありそこからだけ光が入ってくる趣向。暗い中に大壷に活けた白百合が白昼夢を見るようだ。実はこの不思議な空間が土蔵の中なだったのだ。裏へ回るとワラを練り込ん本物の荒壁。なんとも形容のしようのない柔らかな土の色である。そっとさわると懐かしいぬくもりさえ感じられる?養蚕農家の土蔵をそのまま屋根の部分を切って玄関とした設計の奇抜さが実に面白い。ロビ−のソファ−に座って土壁だけ眺めていても、ちっとも飽きず不思議な癒し感に満たされてゆく。自然の色の創りだす力だろう。も一つの蔵も屋根をはずされてバ−コ−ナ−の一部に使われていた。お土産コ−ナ−で売られていたのが手作りの蒟蒻と、手作りの味噌、沢庵漬けという「田舎」を意識した品ぞろえで、これがまたこの宿の名物として人気という。さもあらん。女将もおっとりとした対応で、里の母を思いださせる雰囲気だ。屋号が示す通り「ふるさと」として、巧まず客の心をつかんでいる珍しい宿であった。なお、泉質はカルシウム・ナトリウム-硫酸塩・塩化物泉、62度。神経痛や皮膚疾患、婦人病などに効果を示す、透明な温泉である。



所在地/群馬県利根郡新治村猿ケ京107
交通/上越新幹線上毛高原駅から猿が京行きバス30分の関所跡下車、徒歩2分
施設/ふるさとの宿・蔵やしき 野の花畑 
?0278-66-0641 1泊2食15,000円〜


 
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