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旅行作家 竹村 節子氏がお薦めする
"癒しの温泉" シリーズ  第22回

竹村 節子 竹村 節子
温泉雑誌の編集者を経て旅行作家へ。現在は、(株)現代旅行研究所の専務取締役。旅行雑誌、婦人雑誌などへの執筆も多く、講演も行う。温泉に関する著書多数。全国の温泉地をつぶさに周り、各地とのネットワークも広い。



蔵王温泉(山形県)





 久しぶりで宮城側から蔵王エコ−ラインを越えて蔵王温泉を訪ねた。遠刈田温泉は見違えるようにきれいな町並みとなっていたし、蔵王山のお釜も相変わらず神秘的だった。高山植物の花が盛りを過ぎるころだったが、エコ−ライン沿道でもシャクナゲ、ウラジロヨウラン、ハクサンチドリなどが花盛り。車を止めてシャッタ−を押しまくっていた。


蔵王連山の北西麓に湧く蔵王温泉は、日本でも有数の酸性温泉として有名である。PHが1.7前後というから群馬県の草津温泉に匹敵する強酸性泉で、皮膚疾患には特効を示す。町の一番高みには湯の湧く川を利用して町営の大露天風呂も拓かれていて、これが観光客になかなかの人気で、日中は駐車スぺ−スの空くのを長いこと待たなけ
ればならないほどだ。




 傾斜地にそった湯町には中小の旅館が軒を並べ、落ち湯が流れる側溝は湯の花で黄色く変色しているほど。その中に上ノ湯、川原湯、下ノ湯と三ヵ所の共同浴場があるのだが、その間、数十メ−トルしか離れていない。大人200円、子供100円で入浴できるので、こちらは地元とその周辺の人々が日常的に利用しているようである。




 



 川原湯が混んでいたので隣の旅館・かわらや旅館で入浴をさせてもらう(500円)。風呂場の造りも似ていて源泉の上に直に格子を置いて湯舟を組み上げてあるという理想的な浴場だった。




 上ノ山から登って来たという姑さんとお嫁さんの二人と一緒になった。息子と孫は共同浴場へ入っているのだそうだ。蔵王も女性客が多いのだろう。温泉は透明で、熱いが体を沈めてしまえば柔らかな湯である。彼女らは姑さんが畑仕事で虫に刺された傷を治しに来たのだそうだ。「一度でよくなるんですよ」という。蔵王は胃腸の名湯であり、カンの虫やノイロ−ゼにも良いのだそうだ。「息子が二歳の時でしたか、カンをおこした時、かかりつけの医者に蔵王へ連れてゆけ、といわれましてね。この宿に連れて来たんです」 

 当時は先代の女将さんで、先ず夕方まで湯川のほとりで遊ばせておくようにと指示、夜一度入浴させ、翌日は朝夕二回、三日目に三回入浴させたところ、早くもよくなって帰宅できたという。標高900mという高地効果と気化した硫黄の吸入が精神安定効果を発揮したのだろう。温泉の特質と医療が実践的に結びついてる日本の温泉の伝統が生きていた時代のエピソ−ドである。






所在地/山形県山形市蔵王温泉
交通/山形新幹線山形駅からバス40分
施設/かわらや旅館 電話023-694-9007
1泊2食1万円〜、3泊以上で半自炊の場合は5000円〜。
その他旅館も8000円位から宿泊可能。

問合せ/蔵王温泉観光協会 電話023-694-9328
 
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