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旅行作家 竹村 節子氏がお薦めする
"癒しの温泉" シリーズ  第39回

竹村 節子 竹村 節子
温泉雑誌の編集者を経て旅行作家へ。現在は、(株)現代旅行研究所の専務取締役。旅行雑誌、婦人雑誌などへの執筆も多く、講演も行う。温泉に関する著書多数。全国の温泉地をつぶさに周り、各地とのネットワークも広い。



春一番!人気の足湯と雛の吊しかざりまつり
稲取温泉(静岡県)






 旅をしていて年中行事にめぐりあうということは僥倖といわなければならない。日時の決まっている祭に、たまたま旅程が重なるということはそう度々あることではないからだ。国道135号の路傍に見つけたピンクの幡。「雛の吊しかざりまつり」とある。平成10年に稲取温泉のおかみさん達が中心になって始められた、まだ新しい行事と記憶していた。








 稲取駅前の観光案内所で地図とパンフレットをもらう。町内に私設を含み4ヵ所の会場が公開されている。先ず海岸の「むかい庵」を尋ねる。雛の吊しかざりとは赤子が無病息災に育ち、良縁を得ることを祈って初節句に贈られる飾り物。母や祖母たちが端切れで縁起の良いぬいぐるみを作り雛段の両側に飾る。竹ヒゴを輪にして5本の赤いヒモを垂らし、1本のヒモに七つ、九つ、十一など縁起の良い奇数の飾りを下げてある。安産を祈るイヌ、五穀豊饒、食うに困ることのないようにとの願いを籠めた俵ネズミ、お金に不自由しないようにと巾着、這子人形、松竹梅などおよそ40種が作られる。全国でも九州の柳川とここ稲取にしかない珍しい風習だそうだ。文化公園内の雛の館ではまつり期間内、時間を決めて地元の婦人達によるつるし飾り作りの講習会も開かれている。まつりは1月21日〜3月31日まで開かれており、隣町・河津のカワズザクラと共にたのしむことができる。






 


 稲取温泉は漁港を抱くように伸びた岬に旅館が点在する温泉。天気の良い日に海岸に出ると伊豆七島うち利島、新島、神津、式根の島々が海上にズラリと並んで見える。弱食塩泉、80度という高温泉で、旅館も大規模なところが多く、露天風呂自慢の宿が揃っている。そんな中で最近ひそかな人気を得ているのが漁港の桟橋近くの食事処が作っている足湯だ。稲取は東海岸では有名な魚料理屋・海徳丸の発祥の地で、いまでもその本家本元が健在だ。稲取港に揚がる地魚を扱う魚屋が二階で食事処を開いたのが始まりで、ずいぶん人気だった。マンボウなども網にかかると一階で捌かれ、二階で試食したり出来たものだった。








今回尋ねるとワンブロック手前の民家を改良して丼屋が開かれていて、その一階が足湯になっているのだった。丼屋は安い上にボリュームもあるところから、食事時間などには順番待ちの客が列を作るほど。その待つ人々を無為に待たせるのでは申し訳ないと「足湯にでも浸かってゆったりした気持ちでお持ち下さい」この店のサービス精神が生んだ施設なのである。無料ということもあって、順番待ちの人ばかりでなく、行きずりの観光客も足を入れて、稲取温泉を体感している。まわりを歩行浴用の浅い湯舟にしてあるのも気が利いていて、「はじめての体験!!」嬉々として足裏刺激を楽しむご婦人達のにぎやかな声が辺りに広がっゆく。帰港する白い漁船と春の気配が生れはじめた背山をぼんやりとながめながら楽しむ稲取の湯のあたたかさ。時計の針もゆっくり動いているように思えたものだ。




住所/静岡県賀茂郡東伊豆町稲取
交通/伊豆急行伊豆急稲取駅下車
車/熱海温泉から国道135号利用で熱海から80km
宿/23軒、1泊2食付1万円〜
雛のつるし飾りまつり/1月20日〜3月31日、むかい庵・文化公園雛の館は共通入場券200円
問合せ先/稲取温泉旅館協同組合 0557-95-2901 または稲取温泉駅前案内所 同95-1402




 
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