名湯百選　温泉療法医がすすめる温泉

	名湯百選

瀬波温泉　せなみおんせん

胃腸病リウマチ神経痛筋肉痛慢性湿疹ほか

＜所在地＞新潟県村上市瀬波温泉
＜交通＞ＪＲ羽越本線村上駅からバス20分
＜泉質＞弱食塩泉

温泉療法医がすすめる温泉　石原義恕
（静岡県厚生農業協同組合連合会中伊豆温泉病院副院長／内科　リウマチ　リハビリテ－ション）

鮭の母なる村上〈まち〉。やすらぎの瀬波
また元気に"顔見せてね。"この願い、期待通り鮭は大きく育って川に帰って来た。鮭は産卵のため、生まれ故郷の川に戻って来る･･････この回帰習性を初めて見つけ、人工ふ化を世に知らせたのが、ここ村上市の三面（みおもて）川である。三面川は、美しい白砂と赤松林の海岸線が続く瀬波の海、日本海へ注ぐ。		目の前に粟島が浮かび、眺めは一幅の絵のよう。その絵の中に瀬波温泉がある。温泉は、明治３７年（1904年）石油を探して井戸を掘ったところ、突然地上高く熱湯が噴き出した、というのが始まり。ヤグラに組んだ源泉井は、今も現役で温泉のシンボルになっている。

"出会い"県内最古の城下町
牛が寝そべったような形をしている山が、臥牛山である。昔、砦の山城があったところで、村上は新潟県で最古の歴史をもつ城下町。侍屋敷の若林邸は、細かく部屋割りされた曲屋造り。東日本では残り少ない典型的な中級武士の住宅として国の重要文化財に指定されている。マチが熱く燃える村上祭りは３５０年以上も続く行事。オジャギリと呼ぶ、はやしと人形屋台が各町内から合わせて１９台も繰り出す。伝統工芸の堆朱や堆黒の彫刻美を競った見事なもの。とくに後ろ姿を飾る身返り板は豪華で、前より後ろに趣向を凝らすあたりは、気配りの県民性をそのまま現しているようで心にくい。お茶の産地としては北限と言われる村上茶、寒い冬が長く、日照時間が短いため、炭酸同化作用で、渋味のタンニンの含有量が少ない。他県産の茶樹は単一品種だが、村上茶は、寒冷地向きに長い間自然交配を重ねて育った混合茶樹。		このため味も他県産のストレ－トに対し村上茶はミックスブレンドで、まろやかな甘味のあるお茶だという。海岸線の松林は、荒々しい日本海から吹きつける北風、砂あらしから町を守る保安林。その中に一際美しい、お幕場と呼ぶ赤松林がある。昔、藩主の円遊会や奥方、御殿女中らが茶会を開いたという行楽地。茶どころだけに春から秋にかけて、各流派の茶会が今も盛んに開かれ、またペットのワン公も喜びはね回る楽しい家族連れのピクニック場となっている。

判っちゃいない高齢化社会、いまこそＱＯＬ
瀬波温泉を強く推薦したのは湯どころ静岡の中伊豆温泉病院副院長の石原義恕先生。一見殺風景に見えるが、人手が加わらない自然環境が素晴らしい･･････。東京から新幹線利用で３時間余り、ちょっと遠いが、表日本と裏日本では出会う人の顔、言葉も人情もガラリと変り、ゴチャゴチャした人間関係などで、積もりたまったストレスは“旅をした”というだけでふっ飛んでしまう。体長僅か２～３cm、卵からふ化したばかりの稚魚が、日本海の大海原に出て遠くアリュ－シャンの海まで旅をして帰る。多くの出会い、ドラマチックな鮭の生涯･･････イヨボヤ会館を訪ねたら、これからどうあるべでかを教えてくれる、アフタ－ケアまで付いた温泉である。泉質は弱食塩泉。よく温まるので関節リウマチなどはグンと痛みが軽くなり、筋肉のこわばりがとれる。飲めば胃液の分泌を促進させるから胃酸の少ない人には大変よい。高齢化社会と言われ誰でも知っているようだが、実は何んにも知っていない。ある程度の年配になると、それは成人病の予備軍。		心臓疾患、ことに脳卒中や梗塞を引っぱり起こして片マヒになってからでは遅いということ。このためにも健康なうちに温泉の利用をすすめたい。会社などで温泉地の慰安旅行の幹事は、どんな入り方をしたらよいか調べて、みんなに知らせたらよい。酒を飲んだら、また深夜の入浴はダメ。温泉に入ったら上がり湯にシャワ－はムダ･･････ということ位は教えてほしいものである。"ＱＯＬ"（クオリティ・オブ・ライフ）生活の質を上げる意味。これまで何でもかんでも薬にたよっていた時代から、もうそろそろ変わらなければ･･････である。イヨボヤ会館、日本最初の鮭の博物館。イヨボヤのイヨは、この地方の鮭の呼び名。ボヤは広く魚のこと。鮭を魚の中の魚と認めての方言という。人工河川を真横から眺められる生態観察室やミニふ化場などがある。サ－モンパ－クの中心建物で、入口の２階正面には長さ９ｍ、巾２ｍのどでかい鮭の看板がデンと飾られ「１度見に来っしゃ、いいとこらに･･････」と、呼びかけている。