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レジャー、健康、ウェルネス:マクロ的アプローチ


抄訳 H.ラスキン(イスラエル)


本論文は、Freizeit und Wellness:
Gesundheitstourismus in Europa、IFKA 2001
の所収論文である。


本論文は、1.序、2.生活の質と生活の質に関連する健康、3.ウェルネスと幸福、4.健康・健康増進・レジャー、5.健康の経済学、6.現代社会のライフスタイルにおける望まし展開、7.健康増進とすべての人のための健康、8.自由時間の賢い使い方と健康増進、9.レジャーを通じた健康増進のためのモデル、10.ヘルスツーリズム・温泉・ヘルスリゾート、11.結論という構成である。

本文の趣旨は、ウェルネスとは身体・精神・社会的生きがい・環境意識を含み、これを改善することが、社会的にも、経済的にも、文化的にも重要であるとし、健康教育、レジャー教育のあり方、ヘルスリゾートの役割を述べている。

高齢化と医療費の高騰は、先進諸国の重要課題であり、この課題解決のためには健康的なライフスタイルの習得が必要であることを、5の健康の経済学で述べている。日本では、これら各国に比して高齢化が急激に進行しており、健康的なライフスタイルの習得は個人の幸福や地域社会の活性化の鍵であり、かつ医療費の削減にも通じる。
こうした観点から、論文の一部を紹介する。

5.健康の経済学
第二次大戦以降、健康のコストは全ての工業国で著しく増加しつづけている。WHOは、工業国で健康サービスのために費やした費用の10年毎の増加率は、GNPの少なくとも1%ずつ増加していると見ている。このまま行けば、2000年までに、工業国の健康サービスはGNPの10%以上になる。

同時に、医療サービスや薬物療法に対する需要は、その他の需要よりも急速に増加しつつある。さまざまな工業国では、1930年代には健康にたいする家計消費の構成は10%から15%であったが、今世紀末(20世紀末)までにはそれらはより高まる可能性がある。ヘルスケア消費者数は都市化や都市化によってもたらされた文化パターンとともに、増加しつづけるであろう。医者を訪問する回数もかなり上昇するであろう。特に、高齢者や限定された能力しかない人々のような弱者では上昇すると思われる。

病院費用は全ての健康関連費用の40%以上を占める。臓器移植のような高度医療技術の発達に伴い、この割合が増大することが予想される。そのため、病院医療支出の5%は患者のたかだか10%で浪費されるかも知れない。このトレンドは全ての工業国で増加しており、国が豊かになればなるほど、悪化していると思われる。

他方では、一般のメディカルケアの支出は多かれ少なかれ、国民の健康状態に合致するレベルのままである。公的健康や予防医学の分野における努力はこの分野で重要な手段である。疾病を減少するために自由時間を賢く使うこと手段の1つである。国民のフィットネス(運動)が低下するにつれ、病的状況が増し、事故や欠勤の増加になって現われる。

多くの専門家は、心臓病を10%程度減少させれば、大きな経済的節約につながることを認めている。こうした節約は欠勤日の減少、病院や医療サービスの支出の減少、事故の減少などである。これを行う道は賢いライフスタイルとレジャー行為のパターンにつながる。


6.現代社会のライフスタイルにおける望ましい展開

20世紀末までに、地球人口は増えつづける。増加率は西欧諸国では0.6〜0.9と緩慢である。65歳以上は人口の少なくとも15%に増加するであろう。75歳以上もまた増加する。これは、非労働者や高額サービスを必要とする人数を上昇させる。こうした展開は重大な経済問題を引き起こす。

また、全ての先進諸国は都市化され、都市人口は70〜85%に上昇している。これは、情緒的、身体的なプレッシャーを増加させる。交通は悪化し、騒音や環境汚染が増し、人々は自然からますます切り離される。

伝統的産業とハイテク産業における労働状況は匿名的になり、部品化される。他人との付き合いは面白みのない対象との付き合いに置き換わってしまう。労働は意味深い身体的活動や創造力のどちらももたらさない。

これら全てに伴い、定年年齢や労働時間が引き下げられ、一方で自由時間、特に週末とバカンスの自由時間が増加する。こうしたトレンドは自由時間と十分な自由裁量所得をもち生活を楽しむことができる人々の間では一般化するであろう。自由時間のための家計支出は全家計の20%に漸増するであろう(1960:8%、1985:11%、1990:15%)。

人々は自由時間を賢くすごすために必要なスキルを習得しなければならない。また生き生きしたライフスタイルは社会の規範的な行動として受け入れられねばならない。現代都市生活の状況は身体活動を必要としない。また、加齢に伴い、人々はエネルギーを節約する本能を持っている。人々は見るスポーツやコンサート、テレビなどの気楽な活動に引かれ勝ちである。こうした傾向は自由時間を多様な調和した方法で過ごすことを妨げ、新たな社会的規範の形成を困難にしている。これを創造するためには、教育システムやコミュニティが含まれねばならない。一般人の参加の範囲がその成功のものさしとなる。



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