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駿河酔太郎よもやま話 バスルーム
 

いろはにほへと(其の弐/四)
(香りのお話)

■ 「源氏物語」では香の薫りと匂いを讃えて薫君(かおるのきみ)と匂宮(におうのみや)が登場する。
香りを生活のなかで楽しむようになったのは平安時代からで貴族はいろいろな香を調合して自分の香をつくり個性を発揮していた。当時の香料である沈香・丁字・白檀・竜脳・麝香・甘松・安息香等に炭の粉と蜜・梅肉・塩・酒等を練り合わせた練香が使われていた。
「源氏物語」には6種の練香について季節感を表した様子が描かれている。

 『梅花』 梅の花になぞらえる春の匂い
 『荷葉』 はすになぞらえる夏の匂い
 『侍従』 秋風がもの寂しく吹いて奥ゆかしい匂い
 『菊花』 菊の花に似た匂い
 『落葉』 秋の木の葉の落ちる匂い
 『黒方』 冬、氷がはる身にしみわたるような匂い

 衣服や寝具に焚き込める「えび香」、袋に詰め携帯用とした「匂袋」、趣味で香りを楽しむ「空焚物」等種々の薫物が流行した。
その後15世紀にはいり足利義政の時代に三条西実隆、志野宗信により「香道」へと発展していった。

■エジプト人は香りのよい水で水浴したといわれ水浴の後は香油を全身に塗ってマッサージをしたという。
エジプトといえばクレオパトラであるが女王は馬乳のミルク風呂や小羊の血風呂にはいり濃厚な香りをまとい時の権力者であるシ?ザーやアントニウスを虜にしたのである。
当時のエジプトにはすでに香料工場もつくられ砂漠で採取されるマラカイト、ガレナと呼ばれる岩石からアイシャドー等のメイク用原料もつくられていた。
使われていた香料はバラの香油、乳香、霊猫香、没薬等であったという。
 
■ギリシャ人もエジプトの化粧法をとりいれ男も女も水浴の後、香油を塗った。又、肌を白くさせるために一日に何回も入浴し貴婦人達は女奴隷に香水を口に含ませ霧にして神に吹きかけさせたという。
学者のヒポクラテスは病気の予防や健康に役立つとして植物、香料入りのお風呂や香油でマッサージすることを勧め症状によりいろいろな処方があったようである。

■古代ローマには多くの浴場がつくられ人々は社交場として健康保持の手段として多いに活用した。ローマが統治した場所には必ず浴場とコロセアムが造られた今日に残る遺跡群からもその素晴らしい設備が伺える。
ローマ人は特にバラ、水仙、菖蒲、蜂蜜、肉桂、没薬等を使い部屋に芳香剤としておいたり衣類、寝具等にも各種香料を用いた。

■昔は天然物からのみ香料が取れなかったので金以上の価値があり貴重品であった。そのため香料の略奪による戦争もたびたび起こった。
アレキサンダー大王のインド遠征も香料や生糸、香辛料を求めたものでありヨーロッパの国々が太古からはるばる中国と交通を開いたのも麝香や絹が欲しかったためである。
バスコダガマやコロンブスも東洋の香辛料、香料を求めて探検に出たのである。

(参考資料/香りの美学展U 発行:大丸ミュージアム)
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