日本には約2000を超える温泉地があり古来より人々は天然の温泉を治療に健康増進にと広く利用してきました。
又、天然に生育する各種の植物を薬用として入浴の際に用い今日まで伝えられてきました。
入浴剤の発生はこれら自然の恵みである天然の温泉と薬用植物による薬湯に由来しています。 |
■泉質の違いにより種々の効果をもつ温泉(例えば子宝の湯、腫れものの湯、中気の湯、美人の湯等)の素晴らしさを温泉地に行かなくても家庭で簡単に応用できないかという考えから入浴剤は発生しました。
当初は天然の温泉成分を乾燥、粉末化したもの(湯の花)が利用されましたが昭和初期には温泉成分を分析した結果をもとに塩類浴剤(バスクリン、ノボピン等)が商品として開発されました。これらの成分には安全性がたかく、効能効果を有し品質が安定で確保しやすい基剤が選択されました。
又、入浴で得られる疲労回復、リラックス感などを助長し入浴を楽しくするために色素や香料等を添加した商品が考えられました。 |
■薬用植物を用いた薬湯は端午の節句の菖蒲湯や冬至の柚子湯のように民間で慣習として受け継がれ江戸時代にはいると治療を目的としたものが処方化されるようになり皮膚病の治療などに用いられました。
例えば貝原益軒の養生訓のなかには「五木八草湯」の記載があり桑、楡、桐菖蒲、忍冬等の植物が配合されこれらの薬木、薬草を切栽したものを湯で煮だして使用しました。
入浴剤としては明治中期に種々の生薬を配合して布袋に詰めたものを浴湯のなかに入れて用いる商品(浴用中将湯、浴用実母散等)がつくられました。
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■外国における入浴剤の歴史は例えば古代エジプトにおいて針葉樹のエキスや精油が入浴や塗布として使われたりギリシャ本草には「坐浴」の記載もみられます。なかでもギリシャの「カミツレ浴」は戦傷兵の創傷治癒の目的で使われ有名です。古代ローマいおいても花、葉、花精油を湯に浮かべハーブティーを飲みながら入浴を楽しんだようです。
外国では温まるというよりも身体を洗い香りを楽しむという発想から硬水軟化作用と洗浄力をもつバブルバスを中心にボディケアを兼ねたバスオイル、ミルクバス、バスパヒューム等の入浴剤が商品化されました。
ドイツの「クナイプ療法」から生まれた入浴剤もよく知られています。
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■日本における入浴剤は戦前においては主に公衆浴場で使われ一般家庭のお風呂には使用されていませんでした。これは当時、都市部において風呂付きの住宅が少なく殆どは銭湯を利用することが一般的であったという背景があります。
その後日本の住宅事情も変わり1960年代にはいるとマイホーム、公団住宅、アパート、マンション等には風呂付きが常識となってきました。
この頃から健康志向、ファミリーでのリラックス空間のお風呂の新しい位置付けが認識されるようになり各種の入浴剤が登場し市場も拡大するようになってきました。
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■現在、日本浴用剤工業会には約70社が加盟し、その市場規模は約550億円であり市場では約2000種の商品が販売されています。
今後、超老齢化社会をむかえるにあたり入浴剤が各種疾患の予防、治癒の促進等の目的で手軽に家庭でできる健康法のひとつとして注目されています。
入浴剤を目的別に選び美容効果、脱ストレス、、緊張緩和等「健康入浴」として上手に使いバスタイムを楽しみ明日への活力を養うことも忙しい毎日を送っている私達には必要かもしれません。
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