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旅行作家 竹村 節子氏がお薦めする
"癒しの温泉" シリーズ  第4回

竹村 節子 竹村 節子
温泉雑誌の編集者を経て旅行作家へ。現在は、(株)現代旅行研究所の専務取締役。旅行雑誌、婦人雑誌などへの執筆も多く、講演も行う。温泉に関する著書多数。全国の温泉地をつぶさに周り、各地とのネットワークも広い。


酸ヶ湯温泉 酸ヶ湯温泉旅館 (青森県)

日本人と温泉の係りには1000年を超える歴史がある。 文献として残る古いものでは奈良時代に編纂された『出 雲風土記』。その中に玉造の湯に老若男女が入浴する様 子が紹介されている。いわく「一浴すればたちまち容貌 引き締まり、再度入浴すれば万病ことごとく癒える」と。
 こうした永い温泉との付きあいから、先人達は温泉の 効果というものを身体で実感し、上手に付きあってきた。 [混浴」という習慣も明治時代はじめまで、ごく日常的 な日本人の習慣だった。
 東北地方には、現在も混浴を続ける温泉が幾つか残っ ている。その代表格が酸ヶ湯温泉だ。300年の歴史をも つ八甲田山中の秘湯で、強酸性の温泉は万病に効く。浴 舎は周辺に自生するヒバ材を用いて、縦10間(18.18m)、 横8間(14.54m)という、ちょっとした体育館なみの 大きな建物が造られている。番台をはさんで男女に脱衣 場は分れているが浴場内は混浴。「熱の湯」[四分六分 の湯」「冷えの湯」、打たせの「鹿の湯」があり基本的 な入浴法も決まっている。最近は観光客も増えて入浴に 立ち寄る人も多いため新緑や紅葉シーズンは大変な混雑 だが、雪の降り積む冬期は、近在のなじみ客が多いせい か、昔ながらの湯治風景が再現されている。山芳園 室内温泉

 


 ここで思うことは、本来の日本人は実におおらかであ ったということだ。東北の男性達は伝統的に混浴に慣れ ていることもあってか、混浴の仕方が実に上手である。 つまり混浴のエチケットを心得ているのである。女性に 性を意識させない自然態が、混浴の楽しい雰囲気を醸し 出す。従って女性達も自然に入浴が楽しめる。白濁した 湯船に入ってしまえば、あとは和気靄々の歓談となるの も自然の成り行き。山芳園 露天風呂

 こうした湯の中の交流から身体と心のストレスを癒し たのが、日本の温泉のもう一つの力だったのである。そ の伝統を絶やすことはいかにも惜しいことではある。
 それにしても、最近の男たちのなんとあからさまで無 粋なことよ。混浴の仕方を酸ヶ湯の男たちに学んで欲し いものだ。それも男の嗜みの一つと思うのだが。如何?

所在地/青森県青森市八甲田山1
交通/東北本線青森駅から酸ヶ湯温泉行きバス1時間10分 青森空港から送迎バス連絡(要予約)
電話/ 0177・38・6400
料金/1泊2食9000円〜、湯治は3日以上で1泊2食付き 6000円〜、自炊部あり

 

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