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旅行作家 竹村 節子氏がお薦めする
"癒しの温泉" シリーズ  第8回

竹村 節子 竹村 節子
温泉雑誌の編集者を経て旅行作家へ。現在は、(株)現代旅行研究所の専務取締役。旅行雑誌、婦人雑誌などへの執筆も多く、講演も行う。温泉に関する著書多数。全国の温泉地をつぶさに周り、各地とのネットワークも広い。



万座温泉(群馬県)

あらためて日本人の風呂の好みや評価の仕方を見てみると、すべて視覚、聴覚、嗅覚、 味覚、触覚に密接に連携している。風呂から何が見えるか?湯舟は何で作られている か?湯の色は?匂いは?温度は?これほどのこだわり様は世界広しといえども日本人 だけではあるまいか。外国、特にヨーロッパにも温泉は多いが、本来が治療用に利用 されてきた歴史からか、入浴という行為にそれほどデリケートな要求はないようだ。

日本人もヨーロッパ人(特にローマ人)も有史以前から、温泉利用を続けてきた歴史 は同じなのだが、2000年という時間が全く異なる温泉文化を作り上げてしまった。日 本人のDNAには強い自然志向が組み込まれているようで、温泉入浴により自然に近 い状態であることを望むきらいがある。落ち湯の音や風にそよぐ葉ずれの音に入浴気 分を刺激され、鼻をくすぐる温泉の匂いや湯の味に「ああ、ずいぶん濃い温泉だ。こ れは効くゾ」とわくわくする。そして岩や木で作られた湯舟の感触や湯の滑らかさに 心を動かされる。生体の全感覚で温泉という自然と一体化しようとするのが日本人の 温泉観であるらしい。



それほど我々の思い入れ深い温泉へ、最近、レジオネラ菌予防のため塩素を混入させ る行政指導が行われようとしているのはちょっとおかしい。
温泉先進国ニッポンであるからには、消毒すれば足りるという単純な論法でなく、温泉の使い方、菌のわかな い浴場づくりをこそ、指導するべきなじゃないだろうか。皆さんも体を流してから湯 舟に入りましょう! 先日、久しぶりで万座温泉へ行った。環境はすっかり面変わりして新しい建物ばかりがハイマツの斜面に並び、立派なスパリゾートに変身していた。かつては際だって立 派だった万座プリンスホテルでさえ、外観だけではさして特別に見えなくなってる。
何処の宿も浴場を開放していて、1000円前後で入浴させてくれる。なかでも感動的だっ たのが万座高原ロッジの石庭露天風呂。万座温泉の源泉・姥湯と、近くの「空吹き」 に湧く濃厚な温泉の2種類の湯が八つの湯舟に引いてある。混浴だがいやはやその湯 の色のよろしいこと。温泉フアンでなくともその魅力的なとろりとした黄緑色に誘惑 されてしまうこと必定。「空吹き」とは沢沿いに50〜60m下った駐車場の山裾にある 噴気口のことで、もうもうと立上がる湯煙が地中の生命を誇示しているかのよう。引 湯しているのはここだけで、写真を撮ってはみたが、陽光を通す鮮やかな色は写って いなかった。中央に砂湯コーナーもるが混浴。抵抗ある女性には湯あみ着の着用が許 されている。

所在地/群馬県吾妻郡嬬恋村万座温泉
交通/吾妻線万座鹿沢口駅から万座温泉経由草津温泉行きバス40分の万座プリンスホ テル前下車。長野新幹線軽井沢駅からの定期バスもある。
宿/万座高原ロッジ 電話0279-97-1111
http://www.princehotels.co.jp/manza/
料金/3名1室利用で1泊2食1名9000円〜(夏休み期間を除く、税別)。
ほかにら くらく湯治プランがあり2名3泊以上で1泊2食付き、3泊1名2万1000円、4泊2 万6000円、5泊3万5000円など。いずれも税別。

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