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旅行作家 竹村 節子氏がお薦めする
"癒しの温泉" シリーズ  第9回

竹村 節子 竹村 節子
温泉雑誌の編集者を経て旅行作家へ。現在は、(株)現代旅行研究所の専務取締役。旅行雑誌、婦人雑誌などへの執筆も多く、講演も行う。温泉に関する著書多数。全国の温泉地をつぶさに周り、各地とのネットワークも広い。



手掘りの露天風呂をたのしむ秘湯
切明温泉(長野県)

モタリゼーションの発達に比例して、「秘湯」がどんどん失くなってゆく。道路行政が辺鄙であればあるほど、立派な道路を作ってくれるからだ。人間の生活を均一化しようとすればするほど自然が壊されてゆく現実と、私達はどう折り合いをつけてゆくのか。真剣に考えなくてはならない時代にきている。

それを痛感したのは6月上旬上高地から秋山郷へ走った時である。奥志賀から流れ出る雑魚川の、人の手の全く加えられていない渓流の美しさ、山の新緑のバリエーションの多様さは、まさに「目からウロコ」。日本の山の美しさを再認識させられた。




秋山郷最奥の温泉が切明(きりあけ)温泉である。宿は3軒。渓流の河床、およそ30mほどの間に源泉が湧いている。カルシウム・ナトリウム-塩化物・硫酸塩泉、54度の熱湯。
1ヶ所直径1mほどのコンクリート管を埋めて湯筒を作ってあるが、あとは全くの自然で、河原の石を掘り起こしたくぼ地に湯が溜まって流れ出していたり、水辺に湯溜まりができていたり。紀伊半島の川湯温泉と同じで、川床そのものに温泉が湧いている。群馬県の尻焼温泉は同じ河原の湯でも川水そのものが温かく水浴している気分だが、川湯と切明は河原を掘って入るという、天然自然温泉だ。しかし、実際には河原を掘るという作業は並大抵の体力では無理だから、結局先客の使った湯舟を借用することになる。そうした湯舟は表面は熱いが底は水ということも多いので、しっかりかき回して湯加減を見ること。河原には脱衣場も目隠しも一切なにもないから、素裸になるには男性でも躊躇している。
温泉フアンが「ここ一番」とばかりに大自然の湯にチャレンジするが、最近はこの河原でバベキューなんかをやっているグループが出てきた。飲んで、食って、湯に浸かって、と一見天国のようだが、入浴、炎天、アルコールの三点セットでは危険千万。しかも飲んだくれた後ではバベキューの跡片づけなどできっこないのだから、河原を汚すだけでもある。折角、山の風と川のせせらぎに天然自然のヒーリングを堪能しようと遠路をやってきた温泉フアンにとって、バベキューの臭いと煙は迷惑千万。禁止したほうがいい。 こんなヤカラが出没するのも、どこまでも道路が整備され、車で入ってこられるが故の弊害である。そう思いません?旅もTPOをわきまえて、秘湯を秘湯として守ってゆこうではありませんか。



所在地/長野県下水内郡栄村切明
交通/上越新幹線越後湯沢駅から津南行きバス50分の津南乗換え、和山行きバス利 用1時間20分の終点切明温泉下車
電話/栄村企業観光課 TEL0269-87-3333
http://www.janis.or.jp/users/sakae
宿泊料金/1泊2食9000〜1万5000円(税別)
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