ぬる湯の復活とシッケに賭ける保養温泉
長湯温泉(大分県)
温泉地も世相に敏感で、最近は元気な温泉地が少ない。元気のない温泉地は、そこに住
む人々に元気がない。元気な人達が住む町は楽しそうで旅人も集まるのか、旅人が来るか
ら地元の人々が元気になるのか・・・。鶏と卵で相互作用に因るのだろう。が、こと観光
地となると先ず「楽しそうで期待を抱かせてくれる町」を作らなければ、ユーザーが旅先として選んでくれないのは確かである。
由布院温泉から山一つ南へ越えた直入町。一見、静かで何の変哲もない農村に見える。
町を貫流する芹川の辺に湧くのが長湯温泉で「御前湯」ほか共同浴場が3ヶ所と、天満橋
上手の川床には石を蟹の形に組んだ長湯発祥の湯「かに湯」がある。かつては「がに湯」
といったものだが、最近はひびきが悪いからと濁点を取ったとか。伝統の地名や名称を軽
々に変えるのは伝統への冒涜だ。
17軒の宿があり自家源泉を持つところが多い。濃厚な炭酸泉で40度以上の高温泉である
のが特長だ。しかし昔はぬるい温泉だった。ゆっくり浸かれたから身体にも効いた。その
「ぬる湯」を有志たちが管理組合を作り、復活したのが「ラムネ温泉」。33度の特に濃厚
な炭 酸泉である。石組みの露天風呂で、身体を沈めると瞬く間に炭酸ガスの細かい泡が身体に
まとわりついてくる。
「一番よくわかるは、例のところ。一本一本の毛に泡がびっしり着いて、もりあがってくるほどだよ」真剣におどろく体験者が多い。
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低温なので心臓病や高血圧症の人でも安心して入浴でき るし、炭酸ガスの刺激で毛細管が刺激されるので血流がよくなり血圧も下がる。飲用すれ
ば胃液の分泌を促し消化促進するほか糖尿や通風にも効果が高いといわれる。但し汲み置
きができないから湯口の湧き出したところを飲むこと。20〜30分、青い空を見上げ真綿に
包まれているような感覚を楽しみつつ、湯に身体を任せる至福のひと時。
加えて今夏から健康飲料「すこやか一杯」が登場。韓国でいう「シッケ」で、麦モヤシ
を原 料に一晩醗酵させて作る。さっぱりとしてほのかに甘い飲物。昔は宮中で飲まれていたも のが、今は一般の家庭や店で作られお茶代わりに飲まれる庶民の味だとか。日韓交流から
誕生した町の特産品。麦芽糖に似たなつかしい飲み物である。御前湯前のおんせん市場で
買えるが、今のところ1日30本しか生産できない貴重な代物でもある。農業と観光業、町
が一丸となって、長湯らしい食文化の創造を計ろうと始めたもので、健康づくりの温泉地
を目ざす長湯らしい食品となることだろう。
「浴後はビール」から「浴後はシッケ」へ。新たな温泉文化のスタートである。元気な
長 湯温泉にエールを送りたい。
所在地/大分県直入郡直入町長湯温泉
交通/豊肥本線豊後竹田駅から長湯温泉行バス50分
宿/大丸旅館、丸長旅館、国民宿舎直入荘など17軒、 1泊2食7080円〜
施設/ラムネ温泉管理組合
TEL 0974-75-2002(大丸旅館内)
入浴料200円を組合に払 って鍵を借りて入浴する。
但し土・日曜日は風呂前で。
おんせん市場 TEL 0974-75-2805
すこやか一杯 350ミリリットル 600円
問合せ/直入町観光係 TEL 0974-75-2211 |