月山麓の湖畔にみつけた憇いの宿
月山志津温泉(山形県)
早くも紅葉の最盛期を過ぎようという羽黒三山。或る日突然、山々の頂きに冠雪が
くると、見事な三段染めが愉しめる季節だ。山採りキノコの最盛期で、町の食堂でも
民宿でもメニューの主役は天然キノコ。マツタケ、シメジ、シシタケ、ナメコ、カノ
カにマスタケ、クリタケ、ホウキダケ。見つけたら舞い出すほどうれしいというマイ
タケと、その名を挙げればきりもない。それほど出羽の山は自然が保たれているということだ。
月山登山口の一つ西川町志津地区に平成元年に開発されたのが志津温泉。スキー客
を見込んだ民宿・旅館が10余軒ある中で、都会の疲れを癒す宿としてお勧めできるの
が変若水の湯・つたやである。「変若水」と書いて「おちみず」と読ます。『万葉集』
に「月読の 持てる変若水 い取り来て 君に奉りて 変若しめむはも」という和歌
があり、月山神社の祭神が月読命(つきよみのみこと)であり、変若水が若返りの水
であるところから、志津温泉で日頃の疲れを取り除き、明日への再生を計ってもらお
うと命名したという。志津温泉2号泉を使用しており、ナトリウム・塩化物泉、いわ
ゆる食塩泉で源泉温度は42.4度、PH7.6。硫酸イオンやマンガンも含まれているとこ
ろから、慢性皮膚病が効能のトップに掲げられ、虚弱体質や病後の保養、慢性婦人病、
神経痛、筋肉痛と効能も広範だ。館内が民芸家具やパッチワークのタペストリーで統一されているのも喧騒とストレ
スの中で日常を送っている都会人にとっては、吻っとできる演出。
|
|
別棟の浴場へ行く 渡り廊下の片方を硝子窓にして、丸太を挽いた板をカウンターと長椅子に組んで、浴
後のひととき五色沼と芝生の庭を見ながら休めるように工夫してある。本を天井まで
並べた読書コーナーが各フロアーに作ってあるなど、リゾートとしての取り組みをしっ
かり形にして提供している。しかも一人客の受入体制を整えており、部屋のタイプ別
にしっかり料金システムが組まれているのも感心だ。心身を癒すために一人旅は最高
だし、本当に旅が好きな者は一人旅を愉しむものだ。 「一人旅は自殺や無銭飲食など危険が多いから」
と嫌がる日本旅館が多いが、「一人客では採算が取れない」という旅館側の本音が
見え隠れして、旅をする側としてはいい気分ではない。
ところが先日、知り合いの料亭旅館で、一人で泊まった客が、食事後浴衣がけで町
へ出かけ、浴衣の信用で3、4軒飲み屋をハシゴしたあげく、翌朝ドロンしてしまっ
たという話を聞くと、客と宿の信頼関係も成り立たぬ、せち辛い世の中になってしまっ
たかと悲しくなってくる。
所在地/山形県西村山郡西川町大字志津10
交通/山形新幹線山形駅から鶴岡・酒田方面行き高速バス(8:22、10:02、12:32、
14:47)利用で月山口下車、シャトルバスに乗り継ぎ、7分の志津下車
宿/変若水の湯 つたや 0237-75-2222 1泊2食1万3000円〜。一人宿泊の場合
は1万4000円〜。いずれも税別サ込。
なお、年末年始は2000円増しとなる。 総合問合せ/西川町商工観光課 0237-74-2111 |