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竹村 節子 |
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1分で大腸菌死滅! 三軒で守る武田信玄の薬湯 毒沢温泉 (長野県) ここ数年、毒沢温泉「沢乃湯」の牛山勝弘支配人から自慢の鉱泉が事務所へ送られてくる。事務所代表の野口冬人が取材に行った折り、高血圧と尿酸値が高い旨を話して以来、その健康を気づかっての厚意なのだ。飲みにくい鉱泉らしく、冷蔵庫で冷やした鉱泉を水で二、三倍に薄めて毎日飲用している。効果があるのかと聞くと「あるように思う」という返事。今夏の熱さは尋常でなく、ある日外から帰ってつい冷蔵庫で冷えている鉱泉を盗み飲んだ。甘い、辛い、酸っぱい、苦い、塩辛いの五味すべてが混濁する強烈な源泉である。ところが私の味覚はその中で特に甘味を強く感じるためか、それほど抵抗なく源泉のまま飲めてしまったのである。万病に効くという鉱泉。どんな結果が出るのか、ちょっと試してみたくなった。さすがに空腹時では胃に悪い(といっても、若いとき胃潰瘍で五分の三を摘出されているので健康な胃袋とはいえないのだが)と、昼食後に飲むことにした。私自身は血圧が高く50歳になってから降圧剤を服用し続けてきている。10日ほどして掛り付けの医者に血圧を計ってもらうと正常値になっている。朝型の高血圧なので下がると寝覚めも爽快だ。これにはちょっと驚いた。 一体どんな温泉地なのか確かめに行くことにした。下諏訪から和田峠へ登る国道142号線からちょっと山側へ入った高台で、一番手前が「宮乃湯」。ここは館内をバリアフリーに改造して体の不自由な人への対応に努力しており、廊下や湯舟にも手摺りをつけて対応している。住宅地の外れにあるのが「沢乃湯」。民営国民宿舎の指定を受けているので、質素だが安く泊まれるのが魅力だ。錆色の湯に浴槽も流し場も真っ赤で一見不潔感はぬぐえないが、これは鉄分を多量に含むための結晶だ。今年の暮れには新しい浴場に改修します、とのこと。 |
沢乃湯から急坂を100m程登った一番奥にあるのが「神乃湯」。近年木造二階建ての新しい建物に新築されて快適な宿となっている。毒沢はこの3軒の宿で守られてきた。何しろ武田信玄の隠し湯と伝承されている通り、神乃湯の奥には信玄が掘ったといわれる金鉱のトンネルが10年ほど前まで残っていた。「私が小さい頃は奥へ70m位は入れたので、子供たちのいい遊び場でした」と案内してくれた牛山さんの兄さんが指さす。丹塗の橋の残骸がわずかに崩壊した山土の中から顔を出していた。遺跡として修景保存したらいいのに、と思う。 昔は鉱泉そのものが販売されていたようで、沢乃湯には明治27年の宣伝用ビラが、神乃湯には昭和10年頃に販売していたという温泉を練り込んだ軟膏が残っていたのにはおどろいた。泉質は含鉄アルミニウム硫酸塩を主成分とする強酸性の湯で収斂作用にすぐれ、殺菌力も強い。湿性のアトピーや菌性の皮膚病には特効があるようで、湯を送ってもらって湿布する人も多いという。 薬剤師でもある神乃湯の小口富明さんは、「人工では到底不可能な自然湧出鉱泉の医療学的効果は、現代医学の粋を集めても未だに解明できない深遠微妙、純粋神秘な効力が無限に隠されています。医薬に見放された重病や難病が短時日に快癒するのを目の当たりにすると、あらためて大自然の偉大な力を感じます」と述懐する。錆色の温い湯に浸かりながら、私もあらためて「心と体を癒す秘湯」のキャッチフレーズを実感していた。 所在地/長野県諏訪郡下諏訪町星ケ丘・社 交通/中央本線下諏訪駅からタクシー15分 施設/宮乃湯 電話0266-28-9888 1泊2食8000円〜 沢乃湯 電話0266-27-2670 1泊2食6800円 神乃湯 電話0266-27-5526 1泊2食9500円〜 *健鉱会=沢乃湯内にあり、入会すると鉱泉を送ってもらえる。 2リットル×6本1凾で送料とも4000円 |
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