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旅行作家 竹村 節子氏がお薦めする
"癒しの温泉" シリーズ  第24回

竹村 節子 竹村 節子
温泉雑誌の編集者を経て旅行作家へ。現在は、(株)現代旅行研究所の専務取締役。旅行雑誌、婦人雑誌などへの執筆も多く、講演も行う。温泉に関する著書多数。全国の温泉地をつぶさに周り、各地とのネットワークも広い。



ジュウガツザクラがほころぶ花の山
こだわりの究極は塩づくり炭づくり 大滝温泉運龍(静岡県)






 伊豆は河津町。天城峠をトンネルで抜け、ループ橋をぐるりと下りた河畔に湧くのが大滝温泉だ。大滝と書いて「おおだる」と読む。中伊豆では滝を「だる」というのである。宿は2軒。その一軒が「大滝温泉運龍」。宿名も勇ましくおめでたい。木造2階建て、22室の客室が緋鯉の泳ぐ池を囲んである。一階の客室には月見台がつき、広縁にはマッサージチェアーが置いてあり、湯上がりに他人に気兼ねなくマッサージを堪能できるとは贅沢だ。







 むろん部屋つきの風呂は伊豆石で畳んで温泉がひかれている。しかし、大抵の客は大浴場を利用する。大浴場といっても宿泊人員に対して風呂の数が11もあるので、ほととんど貸しきり状態での入浴が楽しめるため、部屋つきの風呂へは入る必要がないからである。一カ所混浴用の湯舟も設えてあり夫婦やファミリー客に好評である。温泉自体は弱アルカリの単純温泉。透明で無味無臭のきれいな湯である。


 



 楽しいのはアメニティーグッズの入っている袋。藍染の布袋にシャワーキャップ、綿棒、コットン、ハブラシ、クシ、ティッシュはむろんのこと、髪を束ねるおしゃれな輪ゴム、髪止め、スポンジ、足の疲れを取るという指挟みまで入っているのにはびっくりした。






 どうあれ、すべて『お客さまに満足していただきたい』の思いをベースに置いての発想。裏山5万坪を整備して5百種の花を植え、通年何かの花が咲いている文字通りの花の山「花小路」を作ってしまったのもその一つ。今年は季節が一ヵ月ほど早いようで、9月中旬に訪ねたときはシーズンであるはずのシュウカイドウの群落は散って彼岸花に変わり、十月ザクラが咲き早くもアケビが割れているのには驚かされた。これから冬にかけてはツワブキがサ盛りとなる。この花の山道を歩くのに浴衣地で作った作務衣、ゴム草履に足袋靴下、杖も用意されていいる。欲しいと思うものがちゃんと支度されていることには舌を巻いた。しかも天城の清水を冷やして詰めた水筒も「山頂で飲むとおいしいですから」と持たせる周到さ。ここまで至れり尽くせりだから料理もさこそと思いきや、いやいやその上を行くのがこの宿の憎いところ。「食の極みは塩にあり」とばかり、毎朝相模灘の海水を汲んできて裏庭に釜を作り、薪を焚いて塩を作るのである。手前味噌ならぬ手前塩というわけだ。「食にこだわるなら、とことんこだわる」とオーナーの岡秀彦さん。途中で得られる「天然にがり」は高血圧に効果があり、自家製の炭も館内至る所でマイナスイオンを発生している。ここにいるだけで身も心も健康になる・・・。それこそ「これからの宿のあり方」なのかも。







所在地/静岡県賀茂郡河津町梨本175
交通/伊豆急行河津駅から七滝行きバス30分
施設/大滝温泉運龍 電話0558-36-8331
料金/1泊2食2万8000円〜

 
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