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旅行作家 竹村 節子氏がお薦めする
"癒しの温泉" シリーズ  第26回

竹村 節子 竹村 節子
温泉雑誌の編集者を経て旅行作家へ。現在は、(株)現代旅行研究所の専務取締役。旅行雑誌、婦人雑誌などへの執筆も多く、講演も行う。温泉に関する著書多数。全国の温泉地をつぶさに周り、各地とのネットワークも広い。



町歩きが楽しくなってきた 山中温泉






 一時期、男性天国と言われた加賀温泉郷。最近は女性を大切にする小ぶりの宿が元気である。一年ほど前、観光診断や企画相談にのる友人が、「山中温泉が良くなっているよ。一度行くべきだね」とのたまった。宿には良い宿もあるが、町の商店の人々が観光客には鼻も引っかけない風があって、実際好きではない町だったのだ。とはいうものの町長の朴訥としていて町づくりに真剣に取り組まれているお人柄も好きだったし、かよう亭のご亭主も大好きな人。理想としての日本旅館づくり、料理づくりに邁進していて、何より語りはじめるとその年齢を忘れさせる情熱がほとばしり、いつも刺激を受けるのである。
 今回は友人の言葉もあり、どんな町に変身しているのか・・・。







 いや、びっくり。確かに変わった。町並みもだが人も変わったのには驚いた。まず11月2日に山中座と女性用菊の湯が町のまん中にオープンしていた。以前は天平風の男性専用菊の湯があって、女は向かいの福祉センター内にある味も素っ気もない風呂に入っていたものだ。「時間を区切ってでもいいから、婦人タイムを設けたらいいのに」と恨みがましく言ったことがあったが、よそ者のしかも女の言葉になど耳をかす人などいなかった。「胸まである深い風呂でねぇ・・・」などと聞くと、名物風呂に入れぬ悔しさにイリイリしたものである。




 



 それが立派な御殿風の建物でオープンしていた。格天井も太い丸柱や梁も伝統工芸の山中塗りの漆仕上げ。浴場の1/3が湯舟で、しかも立ち湯。胸までの深さで一部が子供でも安心して入れるよう半分の深さに調節してあり、バブルバスの装置が付けてある。湯舟のまん中には菊の花をかたどった水盤型の湯口があり、こんこんと湯が溢れてくる。天井は高いし正面は坪庭風にしつらえられていてしばらくは上がる気になれない。しかしオープン時には一日1500人入ったというから驚きだった。隣接する山中座は芸妓さんたちが伝承の山中節を上演して見せてくれる舞台となっている。








 町並みは北側に永平へ辺抜けるトンネル工事に伴って道路の拡幅工事があり、沿道の店がセフトバックするのをきっかけにイメージを統一した和風の店構えに変身させたもので、その中の19軒が「街角ギャラリー」として店内を開放している。格式の高い漆器店が多かったが、店先のデザイン次第で旅行客でもふらりと入ることが出きるようになった。酒屋が銘酒を試飲(有料)できるバー風のカウンターと、地下に日本酒セラーを作って公開していたり、木挽きの体験をさせてくれる店もある。下駄屋だってショーアップすれば土産に一足買って帰りたい気を起こさせる。地元相手だった飯屋がいっぱしの和食処となり客が増えた。「いらっしゃいませ」のひと言が「お足もとに気をつけて」とふたことに増えて、旅行客には優しいイメージの町になってきた。小さい町だが「お散歩号」と名付けた町めぐりの循環も観光協会で運行して、宿泊客を無料で乗せて町の魅力を味わってもらおうと努力している。町の気持ちがひとつになっている、というエネルギーが訪れる客にも伝わったくる良い町に山中はなってきた。







所在地/石川県江沼郡山中町
交通/北陸本線加賀温泉駅から山中温泉行きバス20分
宿泊/町内に温泉旅館16軒、1泊2食付き1万5000円〜
問合せ/山中温泉観光協会 電話:0761-78-0330


 
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