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旅行作家 竹村 節子氏がお薦めする
"癒しの温泉" シリーズ  第27回

竹村 節子 竹村 節子
温泉雑誌の編集者を経て旅行作家へ。現在は、(株)現代旅行研究所の専務取締役。旅行雑誌、婦人雑誌などへの執筆も多く、講演も行う。温泉に関する著書多数。全国の温泉地をつぶさに周り、各地とのネットワークも広い。



21世紀のスパリゾートへ転進を
和倉温泉(石川県)






 不況スパイラルのなかで盛り上がったサッカー国際大会。日本なんかに縁のなかったヨーロッパの人々がわんさと押しかけて、各地でニッポンを体験して帰っていた。とたんに政府も新たな産業として「観光」を見直そう、と首相のツルの一声で研究会が発足、観光大臣必要論まで出始めて、新年度には外客誘致のための予算も組まれる模様だ。ギョーカイとしては「遅きに失した」感も否めないが、やらないよりやってくれたほうが良いに決まっている。
 先日ある会で大臣経験者が「観光立国になれば都市・地方にかかわらず外来の旅行客が平均的に増える」と演説。中国を中心とする東南アジアの旅行客を主なターゲットに狙いたいとの見通しを述べていた。







 しかしこの国の観光資源の中で特筆すべきは温泉の存在だ。世界に誇れる数と湯量そしてその効能は日本の財産といってよい。しかし入浴の習慣のない東南アジアの人々にとにとって「温泉」はあまりにも異次元な存在ではある。いっそ温泉知識のあるヨーロッパの人々にもっと強力にアッピールすべきではないのか。欧州ではシニア層のリウマチ罹病率が高く、フランスのエクスレバン等には専門の国立治療施設があるほどだ。
 退役した多くのシニア達は年金を節約し旅費を貯めて、冬場はタイ南部の海浜リゾートホテル辺りまで保養にやって来る。砂浜でごろごろしているだけで、
「痛みがラクになって、帰りには杖をおいて帰られる人もいます」
 と支配人はそのリピート率の高さを自慢する。チョット待った!ニッポンの温泉ならラクになるどころか2週間も滞在すれば全快して帰れる温泉が沢山あるはずだ。北回りで飛んでくれば距離としてもタイも日本もさほど違いはないではないか。
「ニッポンは優れた工業製品を作る国」としてのイメージを世界に売りすぎた結果として、世界のリゾートとなりうる優れた自然資源を持つことを、行政も国民もすっかり忘れて有頂天になっていた。
 



 そんなことを考えさせられたのが和倉温泉だった。一軒で1400人も収容するホテルが整備され、しかも設備は超一流。海を眺めながらラウンジでのんびりとコーヒーを楽しんでいると、外国のリゾートホテルにいるのとちっとも変わらない。特に団体の出発した9時過ぎからはゆったりとした静かな時間が流れ、癒しのひと時となって居心地はグー。時間とお金が許せば3,4日連泊してもいい気分である。






 バブルがはじけて13年。全ての価値観が変化しつつある。ちょうど明治維新に西洋文化が怒濤のごとく押し寄せ、日本人の価値観が変わった時と同じように。
 今まさに「平成維新」。日本の観光は、新な価値観によって新しいシステムと新しい顧客を生み出す時に来ているのだろう。日本に団体客がいなくなったら海外へ求めるのも良い。しかし、なぜ年間1500万人もの国民が海外への旅に出かけるのかも、観光に携わる人々が真摯に考えて欲しいと思うものである。






所在地/石川県七尾市和倉温泉
交通/金沢駅から七尾線特急で55分和倉温泉駅下車
宿泊/旅館27軒 1泊二食付き8000円〜
問合せ/和倉温泉観光協会?0767・62・1555

 
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