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旅行作家 竹村 節子氏がお薦めする
"癒しの温泉" シリーズ  第29回

竹村 節子 竹村 節子
温泉雑誌の編集者を経て旅行作家へ。現在は、(株)現代旅行研究所の専務取締役。旅行雑誌、婦人雑誌などへの執筆も多く、講演も行う。温泉に関する著書多数。全国の温泉地をつぶさに周り、各地とのネットワークも広い。



大企業の利点を生かした温泉リゾート
花巻温泉 (岩手県)



 冬の花巻温泉を訪ねた。宮沢賢治のふるさと、高村光太郎が疎開時代を過ごした地として知られる花巻温泉。穀倉地でありながら、その歴史をひもとくと東北のリゾートのさきがけの貌が見えてくる。







 大正10年(1921)、岩手財界の覇者であった金田一国士が中心となり、西の宝塚温泉に匹敵する温泉リゾートをこの地に拓こうと、当時の金で250万円(現在のレートに換算すると約3000億円)を投資して建設したのが花巻温泉の始まりである。宿泊施設のほか別荘、ゴルフ場、テニスコート、プールのほか動物園や遊園地植物園まである総合レジャーランド構想であった。今もバラ園に残る花時計は宮沢賢治がその知識を乞われて設計したものという。壮大で先見性に満ちた先人の夢をしのびつつ、花巻温泉を訪ねたのは2月初旬。雪がまだ深く山も畑も冬眠のまっ最中であった。







 バラ園も膝あたりまで雪に埋れている季節だが、それでも訪れる人もあるらしく歩道も一部除雪され無料で開放されいる。小さいながら温室があり中では早くも数輪のバラが可憐な花を咲かせていた。ちなみにバラの見頃は6月中旬〜10月の下旬。450種、6000株のバラが花の色と姿を競うそうだ。パンフレットを見ると、自然のアカマツ林をバックにした花園で、北国ゆえか花色がことのほか鮮やかに見える。もっとも4月中旬に入れば雪も消えてチューリップやスイセン、パンジーなどの春の花が見られ、5月には温泉街のメインストリートのサクラ並木がいっせいに花を開いて、花見客で賑わいを見せるところではある。どんな小さな花であれ花は一年に一度、季節の約束をたがえず咲いてくれる愛おしさと、自然の作り出す配色のすばらしさが、楽しむ人々の心を癒してくれる。花は優秀なセラピストなのだ。





 


 現在の花巻は、青葉館、ホテル千秋、ホテル花巻、ホテル紅葉、佳松園の5軒を一つの企業が経営する大温泉地。リーズナブルな青葉館から数寄屋風高級リゾートの佳松園までを花巻温泉(株)一社で運営している。面白いのはホテル千秋、ホテル花巻、ホテル紅葉の3ホテルが渡り廊下で結ばれ、宿泊客は3館を自由に往来して館内設備を楽しめるという融通性だ。このシステムは泊まる側にはとても便利。3館でハシゴ湯を楽しめほか、レストランやバーなども好きな処を選べるからだ。








目下ホテル紅葉の庭園風の露天風呂が人気で、日中から客が訪れていた。源泉はPH7.9の単純温泉。源泉温度が65度もあり、透明で良く温まる。また食事システムが部屋食とバイキングをチョイスできるところもありがたい。県下の旬の食材を多用し和洋中に調理してあり、品数豊富。「花巻美食倶楽部」と称し四季でテーマを変えている。バイキングで泊まれば宿泊料金が安く上がるうえ、好きなものを好きなだけ、という近年のニーズにはピッタリな企画である。








所在地/岩手県花巻市湯本1-125

交通/東北新幹線新花巻駅または東北本線花巻駅からタクシー15〜20分。
「やまびこ号」に接続する無料シャトルバスを3往復運行。花巻空港からはタクシー10分

宿/花巻温泉予約センター 0198-37-2111
青葉館7000円〜、
ホテル千秋1万2500円〜、
ホテル花巻1万600円〜、
ホテル紅葉1万2500円〜、
佳松園2万6000円〜、
いずれも1泊2食付き平日利用税別料金


 
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