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旅行作家 竹村 節子氏がお薦めする
"癒しの温泉" シリーズ  第31回

竹村 節子 竹村 節子
温泉雑誌の編集者を経て旅行作家へ。現在は、(株)現代旅行研究所の専務取締役。旅行雑誌、婦人雑誌などへの執筆も多く、講演も行う。温泉に関する著書多数。全国の温泉地をつぶさに周り、各地とのネットワークも広い。



雨の日に優しさを伝える「みんなの傘」
城崎温泉(兵庫県)



 旅先で雨に降られるほど滅入ることはない。あそこも行きたい、ここへも行こう、と前もって計画は立てていても、目覚めて雨が降っていると、トタンに戦意喪失。すべてが面倒になって、さっさと帰途についてしまうのは私ばかりではないだろう。





 先日、城崎温泉へ出かけた。前日は良い天気で、一の湯から御前湯、鴻の湯と名物の外湯をめぐり、流行の足湯にも若い女性たちにまじって足を突っ込んで、湯の熱さを確かめたものであった。カニのシーズンの最後の頃だったし、土曜日でもあった関係で、宵の口は町中が外湯めぐりに繰りだした客でごった返している状態。久しぶりで「温泉町の賑わい」というものを見た思いがした。






 近年の外湯ブーム、特に無料で入れる外湯をもっている温泉地の人気ぶりは、群馬県草津温泉をはじめ、ひときわ目立つ現象だ。城崎温泉も町内に一の湯をはじめとする7つの外湯(柳湯は建替え中)をもち、500円程度で入浴できる。








 





しかも宿泊客は無料の入浴切符が貰えるので、宿にチェックインすると早速着替え、浴衣掛けで外湯のハシゴに出かける人たちが多い。宿泊当日の14時から翌朝10時まで、という時間的な制約はあるものの、何回でも、何ヵ所でも入れるというマル得感は強烈なものだ。しかもスタンプラリーをやっていてスタンプ帖を一杯にすれば、観光協会から記念品が貰えるとあって、外湯めぐりの客が町中にあふれかえっている。下駄の音がかまびすしいという湯町は他にないだろう。





 さんざ外湯を楽しみ地ビールは「カニビール」という珍品で仕上げて寝た翌朝、雨足が見えるほどの雨にげんなりして町歩きを中止しようと思った。タクシーで駅まで出ようかと思案していたとき、宿のスタッフが、「ご心配なく。どこへ置いていらしてもいい傘ですから」
 と渡してくれたのが城崎温泉観光協会で管理している<みんなの傘>だった。ビニール製のちゃちなものではなくパープルピンクのしっかりした布張り。しかもけばけばしい宣伝文句も入っていないおしゃれな傘。








途中で雨が上がれば近くの店へと「置いていって結構」という。しかし、雨が上がらなければそのまま持ち帰る人もいるに違いない。失くなる率も高いのでは、と心配すると「ある程度しかたないですね。それも城崎温泉のサービスの一つでしょう」。なるほどなぁ。とたんに雨の城崎が楽しくなってきたから不思議である。




住所/兵庫県城崎郡城崎町湯島
交通/山陰本線城崎駅下車
車/京都縦貫道・国道9号・426号で出石、豊岡経由
宿/約95軒、1泊2食付き1万円〜
問い合わせ/城崎温泉旅館協同組合 0796-32-4141
URL/http://www.kinosaki-web.com/
 
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