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旅行作家 竹村 節子氏がお薦めする
"癒しの温泉" シリーズ  第32回

竹村 節子 竹村 節子
温泉雑誌の編集者を経て旅行作家へ。現在は、(株)現代旅行研究所の専務取締役。旅行雑誌、婦人雑誌などへの執筆も多く、講演も行う。温泉に関する著書多数。全国の温泉地をつぶさに周り、各地とのネットワークも広い。



温泉ソムリエ活躍はじまる
赤倉温泉






 温泉地の暗中模索が、なんとなく方向性を見いだしはじめているように思える。団体旅行志向がグループ志向へ移行し、いままた個人旅行客へシフトを変えてきたのとともに、単に露天風呂を作れば「客を呼べる」という錯覚から冷めたかして、温泉地全体の個性化を図る必要性に目覚め始めている。
 つまりは「健康管理のための温泉リゾート地をめざす」方向だ。それは良いことなのだが、いかにも日本人の性癖らしく、どこもかしこも地域性を考慮することなく「温泉保養地づくり」を目指しているところがちょっと心配ではあるのだが。たしかに国民は一泊歓楽型の温泉ライフを望まない傾向にはあるものの、全部が全部おなじ志向性を願っているわけではないのである。宴会型の旅館も必要だし、保養型も必要、長期滞在できる湯治場の復活も期待されている。要は住み分けの問題で、温泉地が如何にテーマをしぼり、それに沿った整備・サービスを徹底追求できるかに問題点があるのではないか。国民すべてが日本の温泉地の総保養地化することを望んでいる、というわけではないことを知って欲しい。







 先日、取材で赤倉温泉へ行った。日本百名山の一つ、妙高山の麓にひろがる妙高高原に湧出する温泉群の一つである。ながらく冬のスキーリゾートとして発展してきた。ところが近年のスキー人口の激減の影響をまともに受けて最盛期の半分にまで集客数が減ってしまったのである。
「なんとかしなければ・・・」
 という民間の動向を後押しする形で新潟県でも「うるおいの温泉街づくり事業」をスタートさせた。幸いなことに赤倉温泉はこの事業の指定温泉地に選ばれたのである。





 





 県の予算で派遣を受けたコンサルタントを囲んで、地元の観光関係者が赤倉温泉についてあらためてデスカッションする機会をもった。予算事業が決まってゆく。明治の美術界のリーダー・岡倉天心が晩年愛した地という歴史から「赤倉温泉バルビゾン構想」を立ち上げ、高原全体を絵画として見直し、大きな額で風景を切り取ってみせたり、女将会が町中を花で飾ったり。その事業の一環として実施されたのが「温泉ソムリエ」の教育と資格審査だ。近年の客は温泉そのものへの興味が大きく、温泉の入り方や効能などに関しての質問も増えている。そこでそうした質問に答えられる人材の育成を急務としたのである。






目下青年部を中心に55名の「温泉ソムリエ」がいる。幸いに温泉は湧出量も豊富で、掛け流しで利用できる。遠間旅館のように滞在型の独自パックを組んでいる宿もあって、湯治保養にも好適だ。冬のリゾートとしてでなく四季対応できる温泉地としての再生に向かって、町を挙げて努力中だ。







途中で雨が上がれば近くの店へと「置いていって結構」という。しかし、雨が上がらなければそのまま持ち帰る人もいるに違いない。失くなる率も高いのでは、と心配すると「ある程度しかたないですね。それも城崎温泉のサービスの一つでしょう」。なるほどなぁ。とたんに雨の城崎が楽しくなってきたから不思議である。




住所/新潟県北頸城郡妙高高原町赤倉温泉
交通/JR信越線妙高高原駅から赤倉温泉行きバス20分
車/上信越自動車道妙高高原ICから約3km
宿/遠間旅館 0255-87-2028ほか旅館、ホテル、ペンション、民宿等多数。1泊2食付き8000円位から
問い合わせ/妙高高原観光協会 0255-86-3911
 
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