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旅行作家 竹村 節子氏がお薦めする
"癒しの温泉" シリーズ  第36回

竹村 節子 竹村 節子
温泉雑誌の編集者を経て旅行作家へ。現在は、(株)現代旅行研究所の専務取締役。旅行雑誌、婦人雑誌などへの執筆も多く、講演も行う。温泉に関する著書多数。全国の温泉地をつぶさに周り、各地とのネットワークも広い。



豊かな湯量、伝統の共同浴場が魅力
小浜温泉(長崎県)



 橘湾の海岸沿いを国道が抜けているせいもあって、小浜の景観は、決して味わいのある景色とは言いがたい。団体旅行全盛時代の名残も残すがゆえに、わびしさも感じられる温泉地である。ところが今回裏通りを散策してみると、さすが歴史のある温泉地だけに、今迄見落としていた発見があって面白かった。







 まず、地元の人の言によると、普賢岳のマグマ溜まりが、実は橘湾の底にあるという説があるというのだ。確かに島原市をはじめとして、雲仙岳周辺には湧水現象が顕著だ。島原のちょうど反対側に当たる小浜も同様で、湧水に恵まれた地である。少し山際に入れば清水がそこここに湧いている。







公民館下の「馬の川湧水」、庄屋本前の「上の川湧水」、光泉寺門前の「洗い場湧水」がその代表。言ってみれば町内28ヶ所に湧く源泉も、たまたま地熱が強い所に湧く故に「温泉」なのだ、ということらしい。清水と100度の源泉が、地下で入り乱れているようなのだ。しかも熱泉ばかりと思っていたら、住宅街のまん中に炭酸泉を発見。25度前後の硫化水素臭をもつ濃厚な炭酸泉で、こんこんと自噴している。聞けば昭和10年代には浴用に使用していた歴史もあるそうだ。100度前後の高温の源泉に囲まれている場所なのだから、これも自然の摩訶不思議さというほかはない。

 












 町の南はずれに「おたっしゃんの湯」と地元民が呼ぶ古い共同浴場を発見。昭和12年に建てられたままの木造、タイル貼りの浴舎で、今でも入浴料150円。木目の浮いた無人の番台にバラ銭が散らばっていて、常連客がのんびりと湯を楽しんでいる。むろん自家源泉で溢れるに任せている。脱衣場の壁には灰色となった昭和十二年九月付の「本鑛泉療治効用」の額が掲げられていた。その効用は呼吸器疾患に始まり18項目にも及ぶ。肋膜癒着、淋巴性滲出性体質、僂麻質斯、虚弱体質、肥胖症、皮膚病など旧字体であるところに歴史を感じる。







 入口の藤棚を通して差し込む午後の日差しが、なんとものんびりとした雰囲気を醸してい、66年の時を刻んできた浴舎に、しばらくはぼんやりと座っていたものである。

所在地/長崎県南高木郡小浜町南本町7(おたっしゃんの湯)
交通/長崎本線諌早駅下車、バスセンターから小浜温泉・雲仙・口之津方面行きバス利用で55分の小浜温泉下車
車/長崎自動車道諫早ICから国道57号・251号利用で32.7キロ
宿/部屋さえ空いていればひとり客も受けてくれる旅館国崎 0957-74-3500など30軒
問い合わせ/小浜温泉観光協会 0957-74-2672




 
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