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旅行作家 竹村 節子氏がお薦めする
"癒しの温泉" シリーズ  第37回

竹村 節子 竹村 節子
温泉雑誌の編集者を経て旅行作家へ。現在は、(株)現代旅行研究所の専務取締役。旅行雑誌、婦人雑誌などへの執筆も多く、講演も行う。温泉に関する著書多数。全国の温泉地をつぶさに周り、各地とのネットワークも広い。



秘湯の宿をリードする奥会津山中の宿
二岐温泉(福島県)







 最近秘湯をめぐる旅が盛んである。秘湯といわれる旅館が「日本秘湯を守る会」というグループを作り、参加旅館を10軒泊まると一軒無料で宿泊できるという、スタンプラリー的な事業をやっていることもあって、このグループの旅館に人が集まるのである。もともと旅行会社に相手にされなかった小規模旅館が、自分たちでグループを組んだ相互扶助的な会だった。それが温泉ブームに乗って人気を得て拡大してゆき、今では全国に170軒に近い宿を糾合する大グループとなっている。






 そのグループを統括代表しているのが二岐温泉大丸あすなろ荘の佐藤好億氏だ。会員旅館を公私にわたって面倒を見、子弟の教育から結婚・離婚の面倒まで目を配る。なかなかできることではない。参加旅館の条件は何をおいても湯質の良さと湯量の豊富さ。秘湯という立地条件もあって参加旅館のほとんどが自家源泉を持ち、掛け流しで温泉を使える状態であることが自慢だ。






 



 無論大丸あすなろ荘も3本の源泉を持ち、二つの露天風呂に二つの内湯、一つの源泉浴舎を持つ。二岐川の畔に作られた露天も風情があるが、なにより湯の湧く川床その物を湯舟としてしまった浴舎「あすなろの湯」が出色だ。今では岸から10mほどの距離となってしまっているが、もともとは川床であったことは湯舟の底を見れば一目瞭然。なにしろ長方形の湯舟の中に甌穴が三つもあるのだから。一番深いものは湯の面まで120cmはあろうか。あと二つは腰くらいまでともう少し浅いもの。平らな床部分は膝までの深さ。そして岩の重なる断層の間から湯がこんこんと湧き出すのである。太古温泉の温泉とはこうであった、という自然の姿を残しているという点で、湯ノ峰の壺湯に匹敵する文化財的温泉だ。湯は54度だが、外気が低い冬は長湯が堪能できる良い季節。身体を伸ばしていると、澄んだ温泉のあふれ出る様子が自分の胸や腹の上で揺らぐほのかな影で認められる。その何と豊かなことよ。久しぶりで後ろ髪引かれるような湯に行き合ったものだ。






「この風呂こそわが家の創業からの歴史を刻む風呂です」
 と家人。庭園風呂だ、檜風呂だと人の手と智恵を加えて作られる風呂も悪くはないが「温泉を預かるの者の使命として」お湯その物を大切に思い、扱い、生かしているこの宿の姿勢は、さすが秘湯のリーダーの宿にふさわしい。ちなみに泉質は石膏泉でPH8.8。入浴するとたちまちに肌がつるつるする美肌の湯でもある。




所在地/福島県岩瀬郡天栄村大字湯本字下二俣5
交通/東北新幹線白河駅から宿の送迎バス(1日1往復)で50分
宿/大丸あすなろ荘 0248-84-2311 1泊2食付き1万8000円〜
 11時〜15時は入浴のみも受けている 735円





 
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