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旅行作家 竹村 節子氏がお薦めする
"癒しの温泉" シリーズ  第38回

竹村 節子 竹村 節子
温泉雑誌の編集者を経て旅行作家へ。現在は、(株)現代旅行研究所の専務取締役。旅行雑誌、婦人雑誌などへの執筆も多く、講演も行う。温泉に関する著書多数。全国の温泉地をつぶさに周り、各地とのネットワークも広い。



湯治場健在なり
湯の鶴温泉(熊本県)








 ここのところ「湯治場」を訪ね歩いている。伝統的な湯治場は基本的に湯量にあった宿造りができているし、安心してピュアな温泉浴を楽しめる場合が多い。そこにある宿もちょっと見には建物が古かったり、部屋が小さかったりはするが、安価な料金から評価してみると、「よくこの値段でやっているな」と感心する。多くは家内の手で賄っているところから、人件費の比重が少なく、また経営者側にもあまり欲が無く「長年の客が喜んでくれるから」「食べていければ満足」といった、恬淡とした人柄に行きあうことが多い。湯治場にハマル人はそんなところに居心地の良さを感じるのかもしれない。







 水俣市の郊外に湯の鶴温泉という静かな湯治温泉がある。50年前に国民保養温泉地の指定を受けているものの、その恩恵は予想ほど受けることができなかった温泉だ。湯歴は古く、平家落人伝説も残るほど。むろん温泉名からも推察できる通り、湯出川のほとりの水たまりで、気持ちよさそうに足を浸している鶴を見た村人により発見された温泉という。
 渓流に沿って木造の旅館が並んでいるが、改装したものの持ちこたえられなかったとみえて廃業したところも出てきて、かつて10軒あった宿も現在では5軒しか営業していない。したがって寂れた感がなきにしもあらずだが、他所から訪ねる者にとっては、そこはかとない旅情めいたものを感じたりするのだからおもしろい。






 






 今回は温泉街入口の喜久屋に泊まった。パンフレットも作っていないという、客室15室しかない湯治宿だ。といっても、昔はジャングル風呂などをこしらえ、風呂付きの小部屋を並べて華やかに営業していた時代もあったようだ。部屋は古いが寝具などは清潔で、何より風呂が贅沢である。対岸の河原に自家源泉が湯煙を上げているので、この豊富な温泉を活用して婦人風呂、岩風呂、殿の湯、家族風呂、露天風呂と五つもの風呂がある。もっとも婦人風呂と殿の湯だけは専用だが、後は看板を掛けて鍵を締めることができるので、貸切状態で利用できるのだ。露天風呂など座敷の庭を露天風呂に改装してしまったで、床の間付きの座敷そのものが脱衣所という贅沢さ。







 料理も奥さんたちの手づくりで、料金の安さからみると出血サービス。自炊も受けていて米を持参すれば「ご飯だけは炊いて差し上げますよ」とのこと。但し、客は火を使えないので、近くのコンビニでおかずなどは買って来るか、持参することになっている。それでも楽しそうに談笑しているシニアのグループもいてフアンは多いようだ。川の瀬音も静かな谷間の湯治場は、小春日和のよく似合う時計不要の別天地である。ちなみに泉質は単純硫黄泉、59度。アトピー性皮膚炎、皮膚病、神経痛、リウマチのほか、飲用すれば糖尿病、肝臓病、痛風に効果を示す。




住所/熊本県水俣市湯出
交通/鹿児島本線水俣駅から湯の鶴温泉行きバス30分の湯の鶴下車、またはタクシー25分
車/南九州自負同社道日奈久ICから国道3号利用、水俣市内湯の鶴温泉方面分岐交差点より約10km,20分
宿/喜久屋 0966-68-0211 1泊2食1万円〜、湯治滞在は1泊2食5000円〜、自炊(布団付き)2700円〜。他に四浦屋本店など4軒あり
問い合わせ/水俣市商工観光課 0966-63-1111





 
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