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旅行作家 竹村 節子氏がお薦めする
"癒しの温泉" シリーズ  第41回

竹村 節子 竹村 節子
温泉雑誌の編集者を経て旅行作家へ。現在は、(株)現代旅行研究所の専務取締役。旅行雑誌、婦人雑誌などへの執筆も多く、講演も行う。温泉に関する著書多数。全国の温泉地をつぶさに周り、各地とのネットワークも広い。



つばめとイルカと温泉と 天草下田温泉(熊本県)


 今春三月に鹿児島と八代の間を新幹線つばめ号が運行された。九州の鉄道は車両が面白いことでつとに有名だ。しかも新幹線とあってはさぞや力が入っているはず、と4月下旬に鹿児島中央駅から八代駅まで試乗。ウッディな車内は窓のブラインドも木製、手洗いの暖簾が地元産の藺草、シートが西陣織とデラックス。車両は人を「運ぶ」のではなく乗ることを「楽しんでいただく」というコンセプトが貫かれていて、またひとつ九州旅行の魅力が増えた。








 八代からフェリーで天草へ。天草下田温泉を訪ねた。前回訪ねたのは宅配便の未だ無いころだったから、かれこれ30年はたっているのだろうか。というのも旅館の改築が盛んな頃で、町を歩いていると空き地にみごとな船箪笥が雨に濡れてい、ものを知らない私でさえあまりに惜しく、何度もその前を往き来したものの送る術がなくて、後ろ髪を曳かれつつ宿へ帰った思い出あがる。








 湯町には昔の面影はなく、中学生が腰にタオルを巻いて入浴していることに仰天した思い出の公衆浴場・白鷺館も立派な建物となっていた。一時期は大型化をめざした旅館も、時代とともに変貌し、個人旅行が主体となり、また昔のように小さくて経営者の顏が見える施設に人気が集まる傾向になってきた現在、天草下田温泉は混とんの中にあるようだ。それでも明治元年創業という群芳閣ガラシャが和洋折衷の個性的な宿づくりをしているほか、昔の民家をイメージする桟を打った板張り外装が印象的な旅館いがや、少し離れてはいるが海を見はるかす台地に凝った別棟方式でヨーロッパとアジア・日本の文化をミッスした面白いセンスで都会からの客をもてなす石山離宮五足のくつなど触手が動く宿も生まれてきている。
 





 泊まったのは地元で「一番設備の整っている」という紹介の湯本の荘・夢ほたる。下田川の畔に露天風呂を持つ鮮魚商が本業という宿で、食事で勝負している様子だ。ペット同伴もOKで、専用の風呂も作ってあった。「沸かさず うすめず 循環せず」が売り物。湯も良かったが、のんびりできたのはラウンジだった。女性の設計者だというが、「鄙にはまれな」といったら失礼だが、センスのいい家具と配置にすっかりいい気持ちになって、夜は町へ出ることもやめて、名産の麦焼酎を傾けつつ楽しむのんびりとした旅の夜が、天草下田温泉の新しい思い出となった。








 翌日、天草空港から帰る予定だったので、途中五和町通詞島でイルカウオッチングを体験。有明海の南の入口に当たる早崎海峡には根づきのバンドウイルカ約300頭が棲息しており、港を出たとたんにイルカの群れに遭遇。右に左に20〜30頭の群れが並走しジャンプする豪快な眺めにはちょっと感動的。これほどイルカの集まるのは、この地の漁法が小魚を採る漁業ではないため、餌が豊富だからだという。イルカと人間が共存できる天草の風土に癒される思いであった。






住所/熊本県天草郡天草町下田温泉
交通/天草空港(天草エアライン)からバス35分(宿の送迎あり)または鹿児島本線
熊本駅から快速バスで本渡バスセンター乗継ぎ2時間15分
宿/12軒1泊2食8000円〜2万5000円
問合せ先/
下田温泉観光案内所 0969-42-3239
天草観光協会 0969-22-2243




 
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