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竹村 節子 |
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アジアンテイストと日本旅館の不思議なバランス 湯河原温泉(神奈川県) 最近の旅館業にも異業種参入や、若い経営者が自由な発想で演出する宿が増えてきて、既成概念を壊すことに抵抗感が無くなってきている。また、その感覚が新鮮で、泊まる側も大いに楽しめる宿が増えてきた。 先日、湯河原へ足湯の取材に行った。千歳川沿いの緑陰に遊歩道がつくられていて、入口から10分足らず。万葉公園の一番奥に作られている「独歩の湯」がそれ。日本列島をかたどった木道のあちこちに9ヵ所の湯舟が作られていて、どの湯舟の底にも石が埋め込んであってあしうらを刺激できるようになっている。脾骨の湯、腸鼻の湯、腎耳の湯などといった名称が付けてあるのが面白い。人の足裏には全身のツボがあるといわれるから、あしうらを石で刺激することで健康回復も可能かもしれないと期待を抱く。 この千歳川にはニナガイもいて、6月下旬まで蛍も見られるという自然境だ。とはいうものの、V字渓流だから駐車場がない。2本の足で歩くのが準備体操であり、キープアップでもある。 この独歩の湯の裏側の河畔にあるのが万葉の里・白雲荘という高級日本旅館。宿泊費が高いのは、駐車場に泊まっている車を見ただけでわかる。BM、ボルボ、ベンツといった外車がズラリと鼻を揃える。スズキアルトで乗りつけた筆者の場違いなこと。玄関はごく普通の日本旅館。3階建てで客室は16室という小型の旅館だが、平成15年にリニューアルをおえたばかりで、館内は木口も新しく気持ちが良い。家具類、特にリビングに見立てた広縁部分に置いた椅子・テーブル・チェスト・照明器具などを東南アジアの籐や竹、チーク材などを中心にしたものでセットしてある。これがなかなか「現代的な風流」の雰囲気を醸していて、数寄屋造りの本間と違和感なく受け入れられる。かえって本格的な日本建築の厳めしさをやわらげ、「リゾート気分」を演出しているのは不思議であった。日本人の感覚が変わってきているのであろうか。 |
中でも出色は貸切風呂として作られた「do湯遊」である。川風が涼しい河畔に、外気をいっぱいに採り入めるように窓を開け放した浴場で、ジャグジー付きの湯舟は清潔感のある青石。流し場は赤いマーブルのインド砂岩を敷きつめてある。これだけでも気持ちがいいが、板敷きの脱衣場兼リビングが付属していて、アジアンテイストの重厚な椅子とテーブル、そして化粧台が赤石壁に囲まれてセットされている。もうここだけでも十分この宿へ泊まった価値がありそう。TVセットも完備しているから、まさに裸で過ごせるリビングルーム。いろいろな浴場を見ているが、これほどリゾート感覚にあふれた貸切風呂はめずらしい。6名定員とはいうが、ふんわりとしたバスローブを着けて恋人と楽しみたい、おばさんでもふっと夢見るような風呂であった。 所在地/神奈川県足柄下郡湯河原町宮上716 交通/東海道本線湯河原駅からタクシー8分 宿/万葉の里・白雲荘 0465-62-2341 1泊2食付き2万4300円〜 問合せ/湯河原温泉観光協会 0465-64-1234 |
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