「芦原は遊び場で温泉地ではない」と極言する人たちも多い。永平寺詣りの精進落としの花街として栄え、一時は300人を越すきれいどころがいたという。歓楽型温泉地は、どこも多かれ少なかれ男の天国的色彩を残しているのだが、「芦原の温泉は芦原しかない。温泉といっても大事な地下資源。決して無尽蔵ではない。資源はいつかは枯渇する。お湯が止まったらオシマイなんだよ。温泉好きの人は多い。その人間の一番大事なものは健康である。となれば、温泉は健康のために使うことが一番いい・・・・・・」と、これからの"芦原丸"のカジとりを示唆してくれた先生がいた。船長さんと言いたい、その先生は加賀八幡温泉病院の山口院長である。早速話を聞いた。北陸は裏日本有数の湯どころで10人10色の面白い泉質を持っている。
どの温泉地もそうだが、それぞれの企業が思い思いのやり方でやっているので、とかくの事は差し控えたいが、温泉と泊りだけでは・・・・・・。飲み食いして貰わないと・・・・・・というのが大半の旅館で、高級志向で行くか、ウマイもの食わしてお金をとるか、そのどちらかで、中間ではダメと心得違いしているところが多いのは残念だ。私は医者だが「病気は患者本人に治す気がなければ治らない。医者はそのアドバイザ−に過ぎない」ということを、立場を置き替えて肝に銘じてほしい。 |
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芦原は地理的条件に恵まれ過ぎている。飽食時代になって糖尿病患者が増えているのと同じパタ−ンに見えて仕方がない。
芦原から東尋坊に向かう道すがら、高台に変った形の白い洋風の建物が目に入る。明治の初め日本海を往来した北前船の出船、入船で賑わった三国町のシンボル的建物で、現在郷土資料館。オランダ人が設計した木造5階建て8角形という奇抜な建物で、昔の小学校を模したものだという。館内には千石船の模型や金系銀系に象牙、ギヤマンを織り込んだ遊女の豪華な打掛け。また北陸三大祭りの一つ、勇壮な三国祭に繰り出す巨大な武者人形山車など港町の心意気が込められた数々が陳列されている。資料館近くに滝谷寺(たきだんじ)がある。歴代領主の崇信を集めた古刹で国宝、重文など文化財の宝庫。老樹の並ぶ参道を登ってたどり着く庭園は一見に価する。三国で忘れられない名物は、甘エビと越前ガニ。保存冷凍設備の普及で年中料理の一つになっているが、本当は冬の味覚の王者。寒い早朝に漁れたカニを丸ごと塩ゆでして熱いうちにかぶりつく・・・・・・。甘エビは天然のワサビ醤油をちょっと付けて、ピリッとくる辛さがエビのとろける風味を一層引き立てる。共に本場三国ならではの味である。 |