NPO法人健康と温泉フォーラムは医療、環境、施設等、温泉保養地に関わるあらゆる分野における専門家を中心とした団体です。
名湯百選 名湯百選

別府八湯温泉 べっぷはっとうおんせん

鉄輪温泉
神経痛 神経麻痺慢性消化器疾患慢性呼吸器疾患疲労回復 リウマチ性疾患卵巣機能不全
子宮発育不全症更年期障害
明ばん温泉=慢性湿疹 リウマチ性疾患糖尿病 神経麻痺疲労回復 動脈硬化症難治性潰瘍
柴石温泉=リウマチ性疾患 貧血更年期障害 体質改善病後回復

<所在地>大分県別府市
<交通>
鉄輪温泉=日豊本線別府駅より定期バスで30分。
明ばん温泉=日豊本線別府駅より定期バスで40分。
紫石温泉=日豊本線別府駅より定期バスで30分。

温泉療法医がすすめる温泉 延永正
(九州大学教授 九州大学生体防御医学研究所附属病院院長 内科/リウマチ)

別府で"べっぴん"、温泉デパ−ト。歓楽地から保養地に変身計画。
真っ赤な池と、白い池。地底の笑いか、怒りか、すさまじい勢いで熱湯を噴き上げる間歇泉(かんけつせん)。ブツブツの小言に、時折でっかい泥の風船を見せる坊主地獄などなど。湯の街、別府の名所"地獄めぐり"である。別府八湯の一つ、鉄輪と書いて「かんなわ」と呼ぶ、   その空に林立する、湯煙りの光景はちょっとよそでは見られない別府ならではの"シンボル"ではなかろうか。地底のマグマが地獄なら、その地獄から一日24時間、ひとときも眠らずコンコンと湧き出す湯で、年間1,200万人もの観光客を呼び込む一大楽園を築きあげている。

興味の神話、道後の湯元は別府?
世界最大の温泉地は一日14万klの湧出量を誇るアメリカのイエロ−ストン。ここ別府は13万klでナンバ−2にランクされている。さて、その歴史は遠く神代のむかし、昔にさかのぼり、四国は松山の道後温泉の湯元は豊後速見(はやみ)の湯である、と言う神話を生んだ。その『伊予国風土記』に、大穴持命(おおなもちのみこと)が病に倒れた少名彦命(すくなひこなのみこと)を助けようと、別府速見の湯を、豊予海峡の海底に長い竹樋いを通して道後に引き、しばらく浸していたところ生き返った、という神話である。何せ神代のこと、真偽のほどはともかく、古代から温泉がすばらしい効能を発揮していたという物語りは興味深い。   温泉の効能については、その後の『出雲国風土記』にも現われる。「川の辺りに出湯あり(中略)一たび濯(すす)げば、則ち形容端正〔かたちきらきら〕して、再び沐(ゆあみ)すれば則ち万病〔よろずのやまい〕ことごとく除(い)ゆ。古より今に至るまで、験(しるし)を得ずということなし。故、俗人(くにびと)、神の湯といえり」と記録されている。一度湯に浸っただけで顔やスタイルがよくなり、二度浸れば万病ことごとく治る。まことに素晴らしい神の恵みの湯であると。そして、その神というのは誰であろう、火の山の神で人々は限りない畏敬の念で頂上に祠を作り信仰を集めていた。

"どろ湯"はじんわり温まってイイあんばい
日本の温泉は、泉質別に11種類に分けられ、別府にはこのうち9〜10種の温泉があるというから、別府はさしずめ温泉のデパ−トといったところ。市内170ケ所に公営、組合営の共同浴場があり、町の人達は朝昼晩、好きなとき好きなだけ"いい湯だなァ〜"と楽しめる。よそからの入浴も自由に開放し、「お客さん、どっから来たんけ・・・・・・」とハダカと裸のコミュニケ−ションが生まれている。数多いこの天与の恵みを医学的、科学的に解明し、健康づくりに活用しようとして生まれたのが九州大学生体防御医学研究所附属病院で、設立以来かれこれ60年の歴史をもつ。同病院長のかたわら温泉の専門委員である延永正教授に話をうかがってみた。「別府の特色と言えば、いといろありすぎて特徴がない、というのが特色。私は内科でいまリウマチに取り組んでいる。原因不明で見方によってはガン以上の難病。   この治療に鉱泥浴と病院では言っているが、どろ湯が多くの効果をあげている。胃腸病や代謝異常の疾患は、内科的には温泉療法も二次的なもので、肝臓、胆のう、すい臓の消化器や痛風、糖尿病などの代謝疾患の温泉療法は新たな観点から進めて、かなりの成果をあげている。あえて変わったものと言えば"どろ湯"。これは別府独特のものである。」
そういえば、市観光課で"別府でべっぴん"と、どろ湯でパックした美人のポスタ−を作った。なかなか好評で貼っても、すぐ盗られてしまう、と嬉しい悲鳴をあげていた。「行って来たんけ・・・・・・」、「ウンいいあんばいやった。はじめは、ぬるい湯やったが、あとからじわっと温まってきた。いい気持ちやった。この分では、じきにようなるけん、また行ってくる。」神経痛がおきて3日ばかり、どろ湯に行ってきた、という客の会話である。

昔の面影を残して斬新なクア公園を
別府は昭和25年国際観光温泉文化都市に指定されて以来、国際観光港やホ−バ−・クラフトで40分の大分空港。火の国阿蘇を経て長崎に通じる、やまなみハイウェイの基点、ついで九州横断道路の開通と、文字通り九州観光の表玄関の地位を占めている。温泉地には、仕事や日頃のわずらわしさを忘れ一晩パッと騒いで気分転換する、という要素も多分に求められている。この点、別府はマンモスホテルや大旅館が並び、ネオン、キラキラの夜の顔も持つ歓楽型と見られているが、一方には昔ながらの石畳、狭い坂の町に浴衣姿がよく似合う湯治場そのものの風情を残したところも多い。   昭和60年環境庁の国民保養温泉地、ついで同保健温泉地の指定をうけるや、市当局は向こう10年間の第二次総合計画で一大変身の具体案作りを急いでいる。
これに対し専門委員延永教授(前記)は、健康を守る医師の立場から、別府八湯のうち泉質の違う鉄輪、明ばん、柴石温泉を軸に周辺のレジャ−施設を巻き込み、さらに自然をもとり込んだスケ−ルのでっかい、別府ならではの、それこそ特色あるクアパ−ク(多目的温泉公園)造りを提言している。さて、どんなものが飛び出すか、楽しみ多いものである。
 
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