NPO法人健康と温泉フォーラムは医療、環境、施設等、温泉保養地に関わるあらゆる分野における専門家を中心とした団体です。
名湯百選 名湯百選

地獄・垂玉温泉 じごく・たるたまおんせん

(地獄)慢性関節リウマチ 神経痛 筋肉リウマチ 糖尿病 貧血 皮膚病
(垂玉)神経痛 筋肉痛 関節痛 打ち身 冷え症 婦人病 疲労回復

<所在地>熊本県阿蘇郡長湯村河湯
<交通>JR豊肥線本線立野から南阿蘇鉄道阿蘇下田バス25分
<泉質>(地獄)単純酸性硫黄泉(垂玉)単純硫黄泉

温泉療法医がすすめる温泉 岡川行重
(八代市通町医療法人岡川会岡川病院理事長/内科 内分泌代謝 糖尿病 東洋医療)

地獄・極楽、いで湯のロマン。自然に浸る素朴なやすらぎ
轟々と噴煙を上げる阿蘇中岳の噴火口を覗いて見た。地球は生きている。"火の国"の呼び名がぴったり・・・・・・と実感させられた。阿蘇は現役の活火山で昭和20年以来だけでも30数回爆発を繰り返している。昔から信仰の山、そして修験の場であった。その頃、噴火を"山の怒り"と信じ、噴火するごとに従五位から1階級ずつ位を上げて怒りを静める祈りが続けられた。   叙位叙勲は、かつて信仰の火山の神に与えられた格付の称号で阿蘇は正一位の最高位に叙せられている。カルデラ地形の阿蘇五岳の南麓に地獄・垂玉の両温泉が並んでいる。大自然の山ふところに抱かれたたたずまいは、辺りに漂う湯の香もろ共古き良き時代の素朴な人情味がそっくり受け継がれている。

患者あっての医者。その心・・・・・・。
同温泉の推薦医岡川行重先生は、さきの名湯 IIで水俣湯の児温泉推薦の岡川正臣先生と親子揃っての登場である。岡川病院の初代は一介の町医者ながら「病人の気持ちを誰よりも解かってくれる先生だった」と慕われた名医。2代目院長〈現会長〉は、その父の遺志を継いで、いち早く病院救急車を導入して救急病院の指定を受け、「病気には夜も日曜日もない」と、1年365日"開業"の体制をとって地域の人達の安心地帯を作った。また水俣、湯の児温泉に、元気を取り戻して健康を作る温泉研究所を兼ねた診療所を開設。八代市の本院を1部5階建てのレンガ色タイルの建物に全面改築した。バトンタッチを受けた3代目行重先生は「おじいさんの生き方、また親父さんの考え方から、家族的あたたか味のある病院を目指している。   病気になって来るところから健康維持の場に少しでも近づけたい・・・・・・」というのが目標という。近年、患者の薬害がいろいろ言われていることからなるべく薬を控えて患者自身の持つ自己防衛力をどうしたら高めることが出来るか、その方法として東洋医学にひかれ温泉利用の素晴らしさを知った・・・・・・という頼もしい温泉療法医の若手ホ−プの一人である。

喧噪忘れる多彩なお風呂
温泉レポ−トに話を戻そう。昔、山里の村人は獣道をよじ登って山の中腹にある神社に豊作を祈願、秋には収穫に感謝するのが慣だった。神社から見えていたのが噴煙、ときには火の玉を噴き上げる地獄絵さながらの光景、なまけ者や悪さをするとあの地獄に落ちるぞ・・・・・・お宮参りは岩にしがみついての体力作りと、しつけ教育の場でもあった。後年、地獄の山は静まり地獄ならぬ極楽の湯が湧いていた。働き者で信心深い村人達への"お山の恵み"だったのだろう。地獄温泉の由来である。しかしかつては入湯の掟があって武士と修験者以外は入れなかった。火薬の原料となる硫黄が豊富に採れることかららしく、一般町民に開放されたのは明治の新時代に入ってからである。昔はさておき"仇討ちの湯"といういささか穏やかでない名前の湯があった。あけびに似た「うべ」のつるを屋根代わりにしただけの自然と対面した露天風呂。その一段上に女湯がある。   同じ高さでは覗かれるのが女湯、それを逆手にとって覗く側にした?のでその名をつけたという、してやったりのお風呂だった。足元から酸性硫化の水素ガスがチュンチュンと湧いている。泥湯で見た目は悪いがPH2.8で、さわやかさは抜群。湯の湧き出る音が雀の鳴き声に似ていることから"すずめの湯"と名が付いていた。玄関口に大きな丸提灯を下げたこの宿には、ほかに12、3ヵ所の風呂があって多彩な風呂めぐりは都会の喧噪わずらわしさを忘れさせてくれて日長の1日も早い。地獄から約1km下ったところに垂玉(たるたま)温泉がある。200数十年前、霊山阿蘇36坊の末寺金龍山垂玉(すいぎょく)寺の修験者が発見したと伝えられる古湯で、これまた野趣に富んだ脱都会の一軒宿。カラコロ下駄を履いて離れの露天風呂は見事な滝を眺めながらで爽快そのもの。その滝ツボに泉源がある。山の谷間にカヤ葺の"かじかの湯"は渓谷美を添えた自慢の風呂で、見知らぬ者同志の語らいも楽しく長期滞在客が多い。
 
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