NPO法人健康と温泉フォーラムは医療、環境、施設等、温泉保養地に関わるあらゆる分野における専門家を中心とした団体です。
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鹿教湯温泉 かけゆおんせん

高血圧症中風リウマチ性疾患神経痛動脈硬化症外傷性障害

<所在地>長野県小県郡丸子町
<交通>JR信越本線松本駅からバスで50分
<泉質>単純温泉

温泉療法医がすすめる温泉 藤田勉
(県厚生連リハビリテ−ションセンタ−鹿教湯病院院長
 内科/老人医学脳卒中に関するリハビリ医学専門)

温泉街全体がリハビリム−ド一色。

鹿が教えたいで湯、鹿教湯温泉

この「鹿教湯」の名については、昔、ある猟師が山中で鹿を射たのだが逃げられ、翌日その鹿が湯に浸って傷を癒しているのを発見。

  そこで猟師も湯に浸ってみると、狩りの疲れがたちどころに消えてしまい、以来、病に効くいで湯として広まった、というエピソ−ドがある。また、そのときの鹿は、文珠菩薩の化身だと伝えられている。

脳卒中後遺症のリハビリに優れた鹿教湯病院
古くから中風の名湯として知られる鹿教湯温泉には、リハビリや健康・保養のための施設が充実している。小さな温泉街にデンと腰をすえる「リハビリテ−ションセンタ−鹿教湯病院」がまずそれだ。鹿教湯病院は昭和31年より診療を開始。当初は、自然温泉と近代医学とを直結させた、高血圧関連の治療が中心だったが、現在では成人病、特に脳卒中後遺症のリハビリ施設のメッカとなっている。診療科目は内科、外科を始めとして13科目を有し、脳卒中の発症直後から社会復帰までの一貫したリハビリ治療体制を確立。理学療法や作業療法、言語療法、もちろん温泉を用いた水治療法も行われている。水治療法には、病気の回復の程度に則した数種類の入浴法がある。バイブラ浴室の温泉への入浴は、リハビリ訓練の前後によく行われる。バイブラ浴室と呼ばれる入浴室には、気泡の出る浴槽が3槽設置され、   障害度別に使用し、皮膚や筋肉へのマッサ−ジ効果を高める。通常は約20分で入浴、温度は40〜42℃だが、狭心症などの内科疾患がある場合は主治医の指示によって温度調節がされる。やや重症向きのハバ−ド浴室は、床ずれがひどい患者などを車イスからリフトへ、さらに浴槽内へとスム−ズに入浴できるシステムをとっている。ほかに、介護浴室、家族浴室など、回復の度合に応じた入浴法が専門医の適切な指示のもとに実施されている。

温泉の効果は、精神的なものも大
ここで、温泉がなぜ身体にいいのか、また温泉療法の基本とは何なのか、鹿教湯病院の藤田勉院長に話をうかがった。「患者の身体全体を診療の対象としてみる温泉医学は、東洋医学的な色彩が濃厚。少し前までは、病気そのれ自体のみを徹底分析する西洋医学に押され気味だった。が、最近はようやく、これが見直されつつある。患者のもつ病気だけを撃退するのではなく、ストレスがいかにからだに悪影響を与えるかなど、精神的作用も含めた患者の全体像に注意することが大事だと考えられるようになってきた。鹿教湯温泉の場合、泉質に硫酸カルシウムが含まれており、硫酸カルシウムは皮膚を通じて鎮痛剤の役目を果たすからリウマチに効く。   しかも、ごく微量で軟らかい温泉なので刺激が小さく、脳卒中にも効果的である。また、鹿教湯温泉は比較的低温だから長時間の入浴が可能。よって血圧も下がり、何よりもゆっくりと長時間入っても心良いが、利尿促進や発汗過剰は脱水を起こす危険性もある。汗をかいたという精神的な充足感が効果があり、言わば心身両面に働くと言える。このように、温泉療法は、単なる即効性の鎮痛剤的役割を果たし、患者がイライラを解消し満足感をもたらすだけでなく、副作用的な反面もあるので環境や、診療体制を築いていくことが先決なのではないか。患者は素人療法はせず、信頼できる温泉療法医・施設のもとで保護することをおすすめする。」

家族で、グル−プで“クアハウスかけゆ”
鹿教湯温泉の温泉保養施設として次にあげられるのが、"クアハウスかけゆ"。いわば、多目的温泉保養センタ−と言われるものだ。日本古来の湯治的な温泉場から一歩進み、近代医学的に裏づけされた効果を臨んで設置された。浴場内には、かぶり湯、全身浴、泡沫浴、   打たせ湯、圧注浴、箱蒸し、寝湯、歩行浴の8つのポイントがあり、利用者の健康状態によって組み合わせの異なる入浴コ−スが用意されている。浴場のほかに、温泉プ−ルやトレ−ニングル−ム、飲泉コ−ナ−も設けられ、和気あいあいと健康づくりに取り組めるム−ドとなっている。

リハビリ・健康増進のスポットが町中に点在
温泉地を少し歩くと、あちこちに健康増進やリハビリのための場所があるのが目につく。まず、当地の名所・旧跡や神社・仏閣21ケ所を順序よくまわる遊歩道、"鹿教湯二十一番名所めぐり"。このコ−スは川べりや谷合いを抜けるがさほどキツくはなく、一巡りするのに約12km。各名所でスタンプを押す楽しみもある。鹿教湯病院の裏山には、健康増進訓練道路、トリミィロ−ドがある。ランニングコ−ス、散歩コ−ス、医学的コ−スには20mごとに歩道訓練スペ−スが6ケ所設けられている。川砂利や青竹などが敷かれた歩道を歩いて、医学的な早期回復訓練を促そうというものだ。また、"健康ひろば"では、トレ−ナ−つきで早朝に体操が行われ、誰もが気軽に参加できる。   こうした訓練道路、クアハウス、そして散策ル−トのある鹿教湯は、町ぐるみでリハビリや健康増進に取り組んでいる保養向きの温泉地である。そのほか、気候的な面から見てみると、鹿教湯温泉は長野県美ケ原高原の東側にあり、長野県は雨量も非常に少量なところで、日本屈指の乾燥した土地柄にある。そのため、皮膚の生理的機能が低下して多湿が身に応える高齢者にとっては、最適の保養地である。しかも、筑摩川に端を発する清浄な水、すぐそこまで迫りくる木々の緑など、人間の病気を回復させるに至る自然の力も十分備わっている温泉である。
 
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