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上山温泉 かみのやまおんせん

神経痛筋肉痛 リウマチ創傷 婦人病病後回復など

<所在地>山形県上山市上山温泉
<交通>JR奥羽本線上の山駅から車5分、山形空港から車1時間
<泉質>含石膏食塩泉

温泉療法医がすすめる温泉 鈴木康洋
(村上市楯岡鈴木内科医院院長
 山形大学医学部非常勤講師/山形労基局労働産業指導医/内科 消化器/医学博士)

浮世離れの入浴料。いまも残る鶴脛の湯
脚を痛めた一羽の鶴が、湯の在りかを教えてくれた。傷を癒した鶴は一声叫んで飛び去った。これを見ていた旅の僧、月秀は鶴脛(つるはぎ)の湯と名付けた。500年余りの昔から語り継がれている上山(かみのやま)温泉発見の伝説である。湯の源泉の周りに湯宿の集落が出来て湯町(ゆまち)と呼ばれ、今もその地名は生きている。寛永元年(1624年)羽州街道が開かれると共同浴場や旅篭屋が建ち並んだ、旅篭に飯盛女を置くことが許されてから宿泊客がふえ奥州三楽郷の一つと   称された。湯町のほか大正年代に新湯、昭和に入って高松、葉山温泉が開発され現在の湯の街、上山となっている。温泉発見の場所をはじめ市内に7つの共同浴場があり、入場料は大人30円。上山ならではの浮世離れした料金である。県都山形の上手(かみて)に位置することから昔は、"上の山形"と呼称していたが名前が長くてまぎらわしいと二文字縮めて上山になった。上の山と中に"の"が入るのはJRの駅名だけである。

時代に呼応した温泉地づくりを
村山市のクアハウス碁点の療法医も務める鈴木先生は次のように話してくれた。温泉効用については、昔から湯治という風習があって山形県は特に盛ん。多くの先生が「効用大いにあり・・・・・・」と具体例をあげて教えてくれている。しかし温泉に1日や2日行ったからって効果は出るものではない。温泉巡りのツア−やグル−プ旅行は気分転換、ストレス発散に結構だが、温泉療法で若返りをはかる健康づくりなら少なくても1週間から10日が望ましい。高齢化という時代の流れは、   こうしたニ−ズに応える滞在型に移行しているということでないだろうか。この点、受入れ側は不勉強なのか、控えめなのか、それともPR不足なのか・・・・・・。目先だけの対応というか、日和見的のようで歯がゆい。温泉は先代、またそのずっと前から受け継いできた、かけがえのない貴重な財産である。このことは誰もが認めるところだろう。ならば、この財産をどうして次の世代に引き継ぐか、今こそ皆で知恵を出し合う時でないか。幸い上山には蔵王という宝の山がある。

蔵王と茂吉・・・・・・沢庵和尚の春雨庵
「来てけらっしゃいス、上山さ。蔵王と城と茂吉のふる里へ」上山のキャッチフレ−ズである。蔵王は樹氷とスキ−のメッカであまりにも有名。上山を起点とするエコ−ラインを走れば、色鮮やかなエメラルド・グリ−ンのお釜が待っている。斎藤茂吉は東大医学部出身の精神科医でドイツ医学を研究した博士だが、歌人正岡子規に師事して歌壇にアララギ派を作って主宰した。松林と桜に囲まれた茂吉記念館は、自筆の短歌や原稿、有名文人と交わした手紙など多数展示され、少年茂吉がガキ大将で戦争ごっこした時、部下に与えた自作の賞状など微笑ましい珍品もある。お祭り好き集れ・・・・・・上山はお祭り、コンク−ルが盛沢山のところ。中でも有名なのが全国かかしコンク−ルで、伝統行事。'92年紅花国体のマスコット、樹氷を形どったタイキ(大樹)君も登場した。春一番のお祭りはGWのお城祭り。裸の餅つき大会に始まって人気は旧城下町をエッサホイサと走る"カゴかき"大会である。温泉街の一角に沢庵和尚ゆかりの春雨庵がある。   仏教界で特別の功労あった高僧に天皇が、直接仏門最高位の紫の衣を贈るしきたりがあって、沢庵禅師に贈られた。ときの天下は徳川で、紫の衣は幕府が与えると決めたことに沢庵が抗議したところ、将軍の激しい怒りをかい上山に島流しとなった。日頃沢庵の教えに尊敬していた、ときの上山城主は庵を建てて温かく迎えた。「心こそ、こころ迷わす心なり 心に心、こころ許すな」沢庵和尚の"六心"の歌である。また、春雨庵で詠んだ歌の中に、「倒されし笹は再び起きるとも倒した雪は跡形もなく」和尚の心境、凄まじいばかりの洞察力が秘められている。自然をこよなく愛した沢庵は、ことに雨が好きだったようだ。庭石は雨にうたれても動かないが、草花はしたたり落ちる雫にもゆれ動く。自然の雨の"動"に感嘆、厳しい冬に耐え抜いて迎えた春・・・・・・この感動を人の心に訴えて自ら春雨庵と名付けた。茶人であったことから茶室もあり、今も各地各流派の茶会が催されている。
 
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