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草津温泉 くさつおんせん

アトピ−性皮膚炎 尋常性乾癬リウマチ性疾患 気管支喘息高血圧症 創傷

<所在地>群馬県吾妻郡草津町草津
<交通>吾妻線長野原駅からバスで25分

温泉療法医がすすめる温泉 白倉卓夫
(群馬大学医学部教授 群馬大学医学部附属病院草津分院長 内科/血液学専門)

日本と世界の温泉文化が生きづく町、草津。

ベルツ博士が伝えた"世界無比の高原温泉"

草津温泉は草津白根山の東斜面中腹に位置する。標高は1,200mで、7、8月の平均気温は19.6℃、湿度は年間平均で70%と軽井沢より低く、避暑地として格好の高原性気候をもっている。明治期、草津を訪れたドイツ人医師ベルツは、「日本の町というよりはチロルの村落が念頭にうかぶ」と、草津の風土についての印象を述べている。

また、「草津には無比の温泉以外に、日本で最上の空気と理想的な飲料水がある。こんな土地が、もしヨ−ロッパにあったとしたら、カルルスバ−ドよりもにぎわうことだろう」とも語り、当時世界一の温泉保養地であったチェコのカルルスバ−ド以上の環境を草津がもっていると評価している。現在、草津の源泉は100ケ所、自然湧出量は日本一で毎分34,000リットルである。草津の温泉は古来より名高く、日本武尊(やまとたけるのみこと)が東征の折発見したとも、行基によって開湯されたとも伝えられる。鎌倉時代には、源頼朝が草津御座の湯に入浴したことが『鎌倉日記』に記されている。これが、草津が記された最初の文献である。また、戦国時代には「きずの湯」として武田信玄ら大名達に重用されたと言われる。江戸期に入ると、草津は西の有馬(兵庫県)と並んで温泉番付日本一とされ、その評価はゆるぎないものとなる。

18世紀初頭には「かこい湯」と「幕湯」という内湯が設けられ、加えて、湯治客に対する宿屋同志のサ−ビス競争が始まる。

 

文政6年(1823)に発行された十返舎一九の『上州草津温泉往来』によれば、草津は料理屋、酒店などが軒を並べ、美女のいる楊弓、吹矢などの娯楽施設あり、講釈師、落語家を招いてのサ−ピスありという盛況ぶりであったようだ。明治になると、ベルツにより草津温泉の医学的研究が行われる。ベルツはヨ−ロッパには存在しない強酸性泉である草津温泉に着目し、帰国するまでの間に時間湯を研究し、これを世界に紹介した。この研究論文が『熱水浴療論』であり、1896年版のドイツ内科学書に収められ、草津が世界的に知られるようになった。ベルツにより始められた草津温泉の医学的研究は、東大物理療内科の研究者に引き継がれ、昭和26年群馬大学医学部草津分院の開設に伴って、物療内科と分院の双方により継続され、幾多の研究成果が得られている。また、ベルツは草津温泉の優れた自然資源に驚き、明治23年には草津の高原に11,000坪の土地を買い求め、自ら温泉サナトリウムや遊歩道の計画に着手したが、帰国によって、理想的な温泉保養地づくりは夢となった。

現在、草津温泉ではベルツの構想を実現すべく、温泉保養地の建設に向けて様々な取り組みがなされている。江戸時代の町並みを残す旧市街地では、共同浴場の保全・整備とともに、江戸時代の街並みの復元などが行われ、湯治場の再興がなされている。また、周辺の高原では、ヨ−ロッパ型の温泉保養地が形成されつつある。


強い酸性泉の湯は殺菌力があり、慢性皮膚病に効く

草津温泉は源泉100ケ所を越え、泉質も若干異なるが、主たる泉質は含硫化水素酸性明ばん緑ばん泉で、pH2.1の強酸性の温泉、泉温は50〜70℃と高温であることが特徴である。かつて草津には「草津七湯」と呼ばれた滝の湯、かっけの湯、綿の湯、鷲の湯、地蔵の湯、熱の湯などの共同浴場があり、日本の伝統的な浴法15のうち、12もの浴法が実践されていた。現在残っている共同浴場は、地蔵の湯と熱の湯の2つのみで、草津独特の入浴法である「時間湯」が地蔵の湯で行われている。「時間湯」は44〜48℃の熱い湯を、湯長(ゆおき)の号令で草津節を唄いながら板で“湯もみ”して温度を下げ、かぶり湯をした後、3分間の入浴をする。これを日に3〜4回行う方法である。これを1週間ほど繰り返すと、股、わきの下などの皮膚の軟部がただれてくる。

昔は、暮坂峠下の沢渡温泉が草津の仕上げ湯と言われ、草津温泉の湯ただれをここで癒したと言う。ベルツは『熱水浴療論』の中で、高温水のかぶり湯が入浴中の貧血を予防する合理的な方法であること、1週間ほどで痛風などにすこぶる効果があったと述べている。その後の研究では、湯ただれが起きるとともに、血液中の殺菌力が著しく強まること、

 

また血液中のコレステロ−ルが減少することなど、慢性皮膚病、高血圧症などへの効果が明らかにされている。現在、群馬大学医学部附属病院草津分院では、喘息、リウマチ、高血圧の治療のために補助手段として温泉を利用している。喘息、リウマチの治療には40℃以下の温泉プ−ルで運動を行う運動浴療法を用いている。この療法では喘息、リウマチなど免疫性疾患に効果があり、温泉が免疫機能を低下させるものと考えられている。

高血圧の治療は午前中に40℃の温泉に10分程度入浴する方法がとられる。草津分院長の白倉卓夫医博からはその研究に基づき「42℃以上の高湯浴になると血液粘度は上昇し、血圧は初期には上昇するものの後には低下しつづける。人の血圧は昼間は高くなり、夜には低下する日内リズムがある。したがって夜間の入浴は血圧を大幅に下げ、血圧粘度を高めるため、脳血栓や心筋梗塞になる可能性が出てくる。これを予防するための有効な手段として、スポ−ツドリンクなど血液濃縮を防ぐための水分を補給すること。また就寝前の血圧降下剤の服用と温泉浴も同様の効果をもたらすため、医師の指導を受けて療養することが必要」との提言をいただいた。


浴場巡り、スポ−ツ、療養に適するリゾ−ト地
草津の人口は約8,500人であるが、年間の訪問客は280万人にのぼり、日本でもっとも盛況な温泉地の一つとなっている。草津の魅力はその気候風土であり、冬はスキ−、夏は避暑地として通年の利用が可能であること。また、草津白根観光、共同浴場巡り、スポ−ツ、温泉療養など、リゾ−トライフを楽しむことができることである。草津温泉には新旧の二つの顔がある。旧市街地は、小規模ながら中心広場(湯畑)、公園(西の河原)、共同浴場、宿泊・サ−ビス施設からなり、ヨ−ロッパの温泉保養地と同様の都市構造をもつ。   共同浴場は17ケ所を数え、訪問客は様々な温泉の利用とともに、野外での散歩、見物などの余暇活動を楽しむことができる。一方、旧市街地の周辺には中沢ヴィレッジをはじめとするヨ−ロッパ型の温泉リゾ−トがあり、スキ−、ゴルフ等のスポ−ツ、温泉浴を楽しみながら美容・健康増進が行える。また、この一隅には、草津分院があり、医師の指導による本格的な温泉療養ができる。夏期には、国際音楽アカデミ−開校され、一流のア−チィストと全国からのファンが集い、草津の新たな魅力となっている。
 
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