温泉療法医がすすめる温泉|日本の名湯百選

龍神温泉りゅうじんおんせん

和歌山県日高郡龍神村龍神

泉質
重曹泉
適応症
  • (浴用)神経衰弱ことに頭部充血のもの
  • 創傷
  • 火傷
  • 慢性皮膚炎
  • (飲用)糖尿病
  • 肝臓病
  • 腎臓・膀胱結石
交通
JR紀勢本線紀伊田辺から龍神バス急行90分
玉置 友三郎氏の写真

執筆: 温泉療法医

玉置 友三郎

医療法人洗心会白浜病院院長 産婦人科 和歌山県産婦人科医会会長 日本母性保護医協会理事/医学博士

龍神温泉の風景

葵の紋どころをいまに残した“充電”の地

四季を問わず、訪ねたその日が一番素晴らしい……。お世辞抜きに心底からそう思う、安らぎの里があった。徳川ご三家の1つ、紀州の殿様が、鷹狩りに、また時にはお忍びで訪ね、自ら“下御殿”“上御殿”と名付けた別邸がある、龍神温泉がそこである。その昔、役の行者が発見し、のちに弘法大師が高野山に向かう途中、難陀龍王(なんだりゅうおう)の夢のお告げで浴場を開いたことから、その名が付いたと伝えられ、以来1200余年の歴史をもつ。別荘とか別邸というと、何やらお金持ちの、贅沢三昧な持ち物と思っていたが、その見方はいささかひがみだった。アメリカの大統領は、先の湾岸戦争の最中でも週末はキャンプ・ディビットの別荘通いをしていた。激務の人はそれにふさわしい休養が必要なのである。龍神温泉は紀州の殿様が、領地の繁栄と天下国家の大計を真剣に考えて、疲れた神経をいやし大自然に向かい合って、そこから何か……を学びとる“充電の場”だったのである。

温泉旅行の形態に変化の兆し

南紀白浜で病院経営と地域医療の諸問題に取り組んでいる、玉置先生は、龍神温泉について「はるばるこの山奥に来て、よほどの知恵が生まれたのでしょう。葵の紋所のご威光で、永久に地祖免除の恩典が与えられた所ですよ……」と次のような話をしてくれた。和歌山には勝浦、白浜、湯の峰・川湯など名の知れた多くの温泉地がありますが、龍神は一味違った別格のところです。多くは交通の便を生かしたレジャー観光の宿泊拠点となっていますが、龍神はタダである水、キレイな空気、あたりをとりまく自然環境がズバ抜けている。紀州の屋根、護摩壇山(ごまだんさん)の山麓から湧き出るナチュラル・ウォーターは是非味わってほしい天下の名水です。泉質は無色透明の重曹泉で肌がツルツルと滑らかになり、昔から日本三大美人の湯と言われていますが、それも龍神ならではの水と空気が、うまくブレンドして環境がプラスされているから尚更でしょう。余暇の増大で従来の観光旅行の形態は変化しつつあります。高齢化社会に対する温泉の医学的利用も課題の一つで、今後の在り方が問われています。

少し前ですが地区医師会で温泉医療についてアンケートをとりました。これまでは表立った反応はなかったのですが、今回は関心度が非常に高くなっている。温泉地と一般地の老人ホームの調査でも結果が出ている。

(温泉地)(一般地) ○体調よい 2/3 1/3 ○投薬必要量 1/3 80% ○入浴回数 毎日 たまに

温泉地のホームのお年寄りは、温泉の効用大ありとして余生を元気に楽しく過ごしていることがはっきりしていた。温泉地は従来の“遊び場”へと転換が迫られている。このためのリゾート構想、また温泉療法と指導員の育成、さらに保険適用の制度推進の声が強く出ています。

さすが森林王国、“槙”の風呂

村の面積の95%が森林で、銘木紀州檜、熊野杉の産地。人材育成の林業開発センター深山荘には自慢の温泉もあり、レクリエーション広場には、“木の国・龍神”のシンボル、龍の里タワーが立っている。樹齢400年の栂(つが)の大木を使った昇り龍のモニュメント。また龍神温泉下御殿のお風呂は圧巻。一つは槙の巨木を二つ割りにした槙風呂、あとの一つは木の香もかぐわしい檜風呂。これといった飾りのない自然流が龍神らしく、また驚きだった。「山国ですから、探せばまだあります。しかし、かなり山深い所なので運び出すのが大変です。玉置先生のお兄さん熊野本宮、湯の峰のあずまやさんの槙風呂も見事です。あずまやさんは自分の山に200年掛かりで槙を植林してるのですから大したものです。槙風呂の良さを知ってくれるお客さんに来て頂けると宿屋冥利に尽きます。」龍神姓を名乗るご主人の話である。不滅の法灯を守る高野山から龍神温泉に抜ける、高野・龍神スカイラインも開通した。その昔屋島の戦に敗れて高野山からこの地に落ちのびて来た平家の一族が、山の頂上で平家の行末を護摩を焚いて占ったことからその名が付いたという護摩壇山には、護摩木を積み上げた形のタワーがそびえている。タワーからの眺望は別天地。冬期間、運がよければ思わず息をのむ霧氷群が見られる。