名湯百選　温泉療法医がすすめる温泉

	名湯百選

酸ヶ湯温泉　すかゆおんせん

慢性筋肉リウマチ神経痛神経炎金属中毒糖尿病慢性皮膚病心臓弁膜症痛風慢性気管支カタル常習便秘など

＜所在地＞青森県青森市荒川八幡平十和田国立公園八甲田山
＜交通＞ＪＲ青森からＪＲバス１時間１０分、青森空港から車１時間
＜泉質＞酸性含二酸化炭素、鉄、硫黄、アルミニウム、硫酸塩化物泉ほか

温泉療法医がすすめる温泉　佐藤眞
（弘前市御幸町佐藤外科院長　日体協認定スポ－ツドクタ－
　日本医師会認定産業医／外科　放射線科／医学博士）

"大樹細根"の心が通う健康保養地
「健康で働けることは人間にとって一番の幸せです。その健康保持のため、いささかでもお役に立ちたいのです･･････」酸ヶ湯温泉の理念である。青森市から十和田湖ル－トのほぼ真ん中、八甲田山の中腹に藩政時代から豪華なヒバ造りの大浴場"千人風呂"の温泉として知られている大きな建物の一軒宿。千人風呂の青森ヒバは悠々緩々（ゆうゆうかんかん）、樹齢約２００年、		深い雪に包まれて育った、いつまでも芳香放つ逸材で、憧れのぬくもりの木である。純朴な北国の青森ヒバ同様、お客大事の宿のサ－ビスと心配りは、かゆいところに手が届かんばかり。広い二つの駐車場を埋めた車のナンバ－プレ－トは遠く九州、四国から北海道まで･･････。人気の程を見せていた。

驚きの温泉効果８４％が、良くなった
酸ヶ湯が名湯に選ばれたことには全く異存なく、むしろ推薦者のなり手が多かった。弘前市で外科医を務める佐藤眞先生を訪ねて早速話を聞いた。「雲仙・普賢岳の噴火は大災害となりましたね。火山の噴火や地震予知は専門家の知識を結集し、かつ最新鋭の観測体制をもってしても予測つかないというのが現場でしょう。温泉の効果も実は火山と同じで我々の人間の考えなど到底及びもつかない大自然の力が秘められているようです。病気の症状にもよりますが正に"干天の慈雨"です。人気のナゾもこの摩訶（まか）不思議な自然そのものです･･････」と。酸ヶ湯については、これまで多くの著名な先生が調査研究し、今も続けて貴重なデ－タを残している。最近の湯治客１,２００人に対するアンケ－ト調査によると、疾患別では以前は消化器系が多かったが、この頃は腰痛、神経痛、リウマチ疾患が約７０％を占めている。		湯治回数は５回以上が大半で中には毎年続けて５０年以上来ているという客が２人いた。温泉効果は８４％の人が「良くなった」「楽になった」「全快したみたいだ」と答えている。酸ヶ湯は標高９２０ｍの高地にあるため新陳代謝を高める紫外線が強い上、清澄な森林オゾンが豊富。この自然の中での大気浴に源泉そのままの温泉浴は普通１０日間で病原菌と闘う力の血球数値が満杯状態に達して全身若返る･･････という。現在どの家庭にもお風呂はあるが、それでも湯治を希望する人が多いのはこのためで、温泉効用がいかに高いかを裏付けるものでなかろうか･･････。宿に昭和４年からの宿帳が残っていた。南は九州鹿児島、また遠く旧ハルピン、サハリン（旧樺太）から話を伝え聞いてか、何日間かの食物を背に船を乗り継いで、はるばるやって来ていた。"病気を治して健康をとり戻したい"一念の客の姿が宿帳に焼付いているようだった。

散歩と健脚コ－スがいっぱい
マニアなら絶対見逃さないものが一つある。それは旅館のマッチ。たかがマッチと言うが棟方志功が原寸大で作ってくれたといういわく付きの物である。八甲田は、その名の通り主峰大岳を中心に８つの峰々が連なる山の総称で、明治３５年旧陸軍歩兵第５連隊の雪中行軍遭難事件はあまりにも有名。その救助にも活躍した、山の案内人鹿内（しかない）辰五郎さんは以来八甲田に住むこと６０余年。急変する山の気まぐれ天気で遭難、救助した人の数１,０００人以上という山男達の大恩人。宿から散歩に手頃な地獄沼の遊歩道に、志功が"八甲田の仙人"という愛称に得意の天女像を書いた顕彰碑が建っている。酸ヶ湯名物、ご婦人達に大人気のふかし湯もすぐそばにある。		車か路線バスで、ちょっと足をのばせば文豪大町桂月ゆかりの蔦（つた）温泉がある。ここは肌ざわりのよい単純泉。さらに進めば、ほどなくせせらぎの音が聞こえてくる。そう、十和田湖の奥入瀬である。約４０００年前、十和田の水が外輪山の一番低い壁を破って流れ出し、岩を削って自然が作り出した岩を噛む急流、早瀬、渕、岩壁の滝など変化に富んで訪ねる人を魅了する。約７km余りの区間、どこも絵になるところからカメラマンや絵筆を走らす人、また万歩計を腰にした熟年夫婦が楽しそうに語らいながら行き交いしていた。十和田湖は遊覧船もよいが一番高い瞰湖台からの眺めが素晴らしい。