NPO法人健康と温泉フォーラムは医療、環境、施設等、温泉保養地に関わるあらゆる分野における専門家を中心とした団体です。
名湯百選 名湯百選

修善寺温泉 しゅぜんじおんせん

神経痛リウマチ性疾患 慢性胃腸病

<所在地>静岡県田方郡修善寺町
<交通>新幹線三島駅から伊豆箱根鉄道で修善寺駅まで30分 さらに修善寺温泉までバスで7分
<泉質>単純温泉弱食塩泉(ナトリウム-塩化物泉)

温泉療法医がすすめる温泉 齋藤幾久次郎
(中伊豆温泉病院名誉院長 日本温泉療法医会会長 内科/リウマチ 温泉医学)

歴史に育まれた伊豆の名湯。今も湯船の「独鈷の湯」
夜明けを告げる鐘の音の余韻が町を流れる渓流に消えた。
修善寺温泉は約1200年前の平安初期に弘法大師が発見したと伝えられる、湯どころ伊豆最古の名答湯である。川のほとりで病に倒れた父親の体を洗っている少年の姿を見た弘法大師が、その孝心に心をうたれ、川の水ではさぞ冷たかろうと手にした仏具の独鈷で岩を
  砕いたところ霊湯がこんこんと沸き出したというのが同温泉のはじまり。町のまんなかを流れる桂川のほとりに、いまもその「独鈷の湯」が人の情けを伝えるかのように残り、修善寺のシンボルとなっている。温泉とともに歩いた町の人達が「弘法さま」と呼んでいるのが曹洞宗の名刹修禅寺で弘法大師を開基とした温泉発祥のお寺。朝5時、昼11時、夕6時の一日3回、時の鐘を九つずつ打つ。4日で百八つ。煩悩消滅、欲を捨て心おだやかに、人には親切をと大師の心を教えている。

しっとり落ち着いた京風情のたたずまい
伊豆はその昔流刑の地であったという説があり、山合修禅寺(かつてはお寺と同じ字の町)を安住の里とした。桂川、嵐山などの地名があるのは京の都から遠く落ちのびた人達が、都をなつかしく偲んで名付けたものだろう。
伊豆の交通の要所であり、木賃宿がうまれ、湯治場、そして外湯だった温泉を内湯に引いた内湯宿、旅館、ホテルへと姿をかえてきた。
  これらの旅館は弘法様と一緒という「同行二人」そのままにお寺の前に土産物店と軒をつらねており、その移り変わりのさまがそこかしこに見えかくれしながら、しっとりと落ち着いたたたづまいを見せている。

改正温泉法で飲用第1号に指定
温泉はアルカリ性単純泉で身体になじみやすい泉質が、と語ってくれたのは中伊豆温泉病院名誉院長の齋藤幾久次郎先生。腰痛や慢性関節リウマチ、神経痛、胃腸に効くという人の話から湯治という風習がうまれた。が実際はいまも昔も、その温泉をとりまく環境が大きく左右し、近年とくに気候風土の環境が見直されてきた。温泉地は休養向き、それに保養、療養向きの3つに分けられる。
私のところは病院だから療養が主体だがそれでもリハビリの浴室は富士山が一望という場所に作っている。病気予防の保養、日頃のわずらわしさなどからのがれるストレス解消の短期休養には、距離的にも便利な修善寺が最適ではなかろうか。いろいろ歴史的なもの、また多くの文人墨客が訪ねてきていて、その史跡は数知れず見るべきものが有り余る。
  「修善寺に行かれましたか。」御詣り前の浄めの場はどこの神社寺院にもあるが、修善寺は龍口から水ではなく温泉の湯が水槽に流れている。温泉法が改正され飲用のマル適制度ができて、修善寺の湯は伊豆で第1号の飲用温泉となっている。ヤカンやポリ容器に入れて持ち帰り、お茶代わりに飲んでいる人がいるということだが、温泉は野菜と同じで源泉に近い新鮮なものほどよい。さぼっている胃をダイレクトに刺激して胃酸を出させ、空腹になると胃がチクチク痛む胃酸過多症にも効果がある。また冷やして飲めば慢性の便秘によい。

温かき湯の涌くところ、温かき人の情けも涌く
歌舞伎『修善寺物語』の名セリフである。修善寺、寺宝の夜叉王の古面を題材にした岡本綺堂の戯曲で修善寺を舞台にした最大の傑作といわれている。
また川端康成もその書『伊豆の旅』に独鈷の湯を記し、有名な『伊豆の踊り子』には主人公とお踊り子が修善寺で出会い、そして天城越えして下田へ旅する模様を書いている。
源氏滅亡の悲劇もこの地で、
  北条政子寄進の経堂指月殿は父と子の葛藤のはざまに立った母政子の切々たる思いをいまに伝えている。歴史の町だけに見所は十指にあまるが町当局は「歴史だけでは足りない。新たな客を呼び一日でも長く滞在してもらうには」と新名所づくりを始めた。すでにその半分ができている。

安らぎもとめるふれあいの自然公園
これまでの公園をさらにひろげ温泉地を背にした山を丸ごとそっくり、というスケールの大きい自然公園。
春の梅、桜から秋の紅葉まで年中花が咲きたっぷり森林浴の遊歩道で健康づくりをしてもらうという。面積80ヘクタール、中には文豪夏目漱石が書斎にしていたという宿の建物を移築して茶室としているほか、
  岐阜県徳山村の民家9棟を復元し、匠の村と名付けて和紙の手漉きなどを実演する。
また一段高い縁の丘にはイギリス村、カナダ村の西洋ゾーンがありミニSLを走らせる。お年寄りから子供まで楽しめるところ、早くもウグイスや多くの野鳥たちが陣取っていた。
 
名湯百選


HomeColumnOn-LineFileSearchSite map




NPO法人健康と温泉フォーラムについてのご意見、ご感想をお寄せください。