NPO法人健康と温泉フォーラムは医療、環境、施設等、温泉保養地に関わるあらゆる分野における専門家を中心とした団体です。
名湯百選 名湯百選

四万・沢渡温泉 しま・さわたりおんせん

(四万)胃腸病神経痛 皮膚病など飲泉認可
(沢渡)リウマチ痛風 創傷高血圧 動脈硬化など

<所在地>(沢渡)群馬県吾妻郡中之条町四万
<交通> JR上野駅から吾妻線2時間で中之条駅。
車利用は関越道練馬IC〜渋川伊香保1時間〜353号30分で中之条、中之条〜四万バス40分、沢渡まで同25分
<泉質>
(四万)弱食塩泉
(沢渡)含食塩石膏泉

温泉療法医がすすめる温泉 菅井芳郎
(社団法人群馬県医師会 温泉研究所付属沢渡病院院長/内科/医学博士)

出会いとめぐり合いの旅の神様がいっぱい
"上州名物かかあ天下に空っ風"と言われるが、上州の女性は天下一の働き者ということだそうだ。米作りのかたわら現金収入の養蚕が盛んで、日本で最初の製糸工場が生まれたところ、ということでも納得されよう。また空っ風は平野部では、ことの外厳しいが、その空っ風がなく、気立てに優しい"かかあ天下"のところがあった。群馬といえば草津、伊香保で代表される湯どころだが「あと一つ忘れていませんか・・・・・・」と声がかかる四万・沢渡温泉がそこである。   四万温泉は約1200年前、ときの征夷大将軍坂上田村麻呂が東夷征伐の折、一人の古老に教えられて発見した、四万の病に効能ある霊泉と言い伝えられ、沢渡温泉は、かつて鍋釜背負って草津に湯治した帰りの"直し湯"また仕上げの湯として知られている。一見何の変哲もない山の風景だが、四季折々に表情を変え、温泉街を流れる川の水はスゴクきれいだ。厚生省の国民保養温泉第1号指定地というのもうなずけられる。

知っていますか、効果的な入浴法
沢渡温泉に県医師会の温泉病院がある。ベット数300床のリハビリ専門病院で、患者は脳疾患などで片マヒの後遺症をもつ人たちが多いが、口伝えで人気が高く常に満杯状態。「院長先生は、病気は神様がくれた休養だ、と言っていた。ここでは毎日好きな温泉に入れてくれるし、みんな同じ病人だから互いに励まし合って楽しいよ」と、患者の表情は明るく社会復帰目指して機能回復訓練に励んでいた。その院長菅井先生に話を聞いた。群馬は草津、伊香保という素晴らしい温泉に恵まれ、そこで学んだ多くの先輩諸兄のお蔭で温泉に対する関心は大変高い。しかしよその一般のお医者さんはアメリカ医学で勉強した人たちが圧倒的に多く、温泉というものを知らないため理解度はまだまだ低い。高血圧ダメ、心臓病だから禁浴、糖尿病に温泉なんか効くものか・・・・・・とオ−ルナッシングで残念である。   私のところは例外的患者を除いて全員毎日入浴を楽しんでいる。温泉のもつ成分の効果もあるが、最大のメリットは温熱作用と水圧、浮力の活用である。温泉がいいからと言って高血圧患者が温度の高い〈42℃以上〉お風呂に入るなどはもってのほか、高血圧の人は微温浴という、ぬるめのお風呂。心臓の悪い人は全身浴でなく、おヘソまでの部分浴、足の疲れをとるためや冷え症の人はバケツに湯を汲んで足を浸すだけでも効果がある、など様々の入浴法がある。この場合大事なことは脱衣場と浴場の室温で急激な温度差があってはいけない。また入浴は運動や食事と同じで折角温泉に来たのだからと夜中に目を覚ましての入浴は身体のリズムを狂わすので止めた方がいい。これらの事は一般家庭でも守ってほしいものである。

見どころ多く、楽しい伝説
清流四万川は、ところによってはエメラルドグリ−ンのよどみに・・・また渓流から小さな滝となって、いつかは海へと目指している。この風景を見ているだけで、せせこましいストレス社会の不純気分をキレイに流し去ってくれる。そして"流水先きを争わず"ありのままの姿、自然というものが、どんなに大切かを教えてくれている。この流れに甌穴(おうけつ)という大自然が作り出した彫刻があり天然記念物になっている。急流の強い水の力が川底の石を転がして岩盤に凹み(くぼみ)を作っている。それも数万年という長い年月をかけて浸触したものだという。沢渡温泉は草津街道への宿場で、万葉集にも出てくる古くからの地方中核地だった。   町外れのあちこちに苔むした双体道祖神や庚申塔が建って人目を引いている。栽培なめこの出荷に忙しい仲のいいご夫婦が仕事の手を休めて「語り継がれてきた話だが・・・・・・」と道祖神の話をしてくれた。昔むかし、仲のいい兄妹がいた。年頃になったのでいい女房いい夫を捜しに、それぞれ旅に出た。互いに捜し求め一緒になって村に戻った夫婦は、実はその兄妹だった。兄妹夫婦は村におけないと村八分に合い、このため村の外れに道祖神さんはいるのだという。今は、巡り会い、出会いの旅の神様になっている・・・・・・と。また庚申塚は、人間誰にでも三戸(さんし)と呼ぶ悪い虫がいて60日に一回めぐり来る庚申の日、神様にその人の悪口を告げに行く。あることないこと告げ口されてはかなわんと、当夜はご馳走をみんなで作って持ち寄り見張りをする・・・・・・という素朴な信仰行事で、今も庚申の寄り合いは楽しいコミュニケ−ションの場となって続いている。
 
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