温泉療法医がすすめる温泉|日本の名湯百選
寸又峡温泉
静岡県榛原郡本川根町寸又峡
- 泉質
- 単純硫黄混合泉
- 適応症
- 慢性皮膚病
- 慢性婦人病
- 切り傷
- 糖尿病
- 神経痛
- 筋肉痛
- 関節痛
- 運動マヒ
- 慢性消化器病
- 冷え症
- 病後回復
- 疲労回復
- 健康増進
- 交通
- 大井川鉄道千頭駅からバス40分。車は東名静岡ICから約2時間

一番のもてなし、ご馳走は千変万化の大自然
“あかねたすきにスゲの笠”童謡や、ちゃっきり節に唄われているのがお茶どころ静岡。お茶は霧深くかかるところほど味、香りのいいものができるという「なる程……」と実感させられたのが川根茶。山また山の段々畠にお茶の木がエンエンと続く、その奥に寸又峡温泉があった。ネオンをつけない、客引きはしない、芸者は置かない、派手な看板は出さない、温泉地のみんながかたくなに守り続けている“ないない4項目”だが、全ては健全で健康的な観光地づくりを目指しての守り事。推薦医の永田先生は「千変万化の表情を見せる四季折々の寸又峡の自然美と、その環境は素晴らしく、ちょっとよそにはないでしょう……」とベタほめである。
ストレス解消には、温泉が一番
高齢化社会と言われるが、同時にストレス社会でもある。私の勤務地、浜松には多くの会社、工場があり朝から深夜まで張りつめた気分の企業戦士が集まっている。働き盛りの30才、40才代の中堅どころの突然死、脳梗塞、狭心症が多い。原因はほとんどと言っていいほどストレスがからんでいる。「ストレスがたまってね……」、何気ない会話をよく耳にするが、まじめ人間ほど、陥り易いから甘く見てはいけない。動悸、息切れ、頭痛、手足の冷え、食欲不振、口の渇き、胃痛、下痢、便秘、腰痛、不安、イライラ、不眠、記憶力の減退、頻尿、生理不順、倦怠感、疲労感、肩こり、背の痛み、耳鳴り、めまいなど原因の不明瞭な症状があったらストレスがたまってきた警戒信号の発信と見てよい。放置すると突然死、脳梗塞、心筋梗塞、ガンにつながることすらある。こうした症状を訴える方は例外なく“仕事の虫”で私は何はともあれ、とにかく温泉に行ってゆっくりするようにすすめている。温泉に行くと言えば遊びに行くと勘違いする者も多いが、温泉は保養、休養のいわゆる“リラクゼーションの場”である。職場から離れた転地療養で、大自然と対面して、思いっ切り深呼吸して……頭を空っぽにする。温かい温泉に浸るとき、そのぬくもりはお母さんに抱かれて甘えていた頃の幼心を呼び戻してくれるだろう。2、3日から一週間“本日休業”と、のんびりして来たらいい。人間が人間性を取り戻して人間らしくなるというのは、こういうことではなかろうかと思っている。
日本唯一のアプト式電車が
東海道線島田隣の金谷から大井川鉄道が走っている。寸又峡入口の千頭(せんず)まで約40kmは懐かしいSLで1時間の旅。展望車やお座敷列車もついている。千頭からの奥大井渓谷はアプト式電車が持っている。アプト式というのはレールが3本で中の1本は歯型の特殊なもの、電気機関車の歯車と噛み合わせて区間1,000mに対し90mの急勾配を、やんこらガタゴト登るトロッコ電車で日本唯一のもの。右に左に移り変る眺めには思わずワンダフルを連発する。高さ100mの真っ赤なレインボーブリッジと丸太組みの山小屋風の駅舎は見所の一つ。途中の接岨(せっそ)峡は、たっぷり湯量の奥大井の秘湯〈単純硫化水素泉〉。温泉会館には共同浴場があって素朴な地元の人達との語らいがまた楽しい。寸又峡の宿の主人は「寸又峡に行きたいがどんなところか」と客から問い合わせがあったので「山奥の静けさがとりえだけの温泉です」と答えたら、「どの位静かなの」とさらに聞かれて、「自分で騒いだり音を出さない限り静かです」と返事したという。温泉の泉質は俗に言う硫黄泉で湯花をゴミと見間違えて嫌う客がいたので、ろ過装置をしたら肌がつるつるになる重曹泉みたいになった。ご婦人達は大喜びで、いつしか“美女づくりの湯”という愛称がついた。しかし人気は何と言っても緑いっぱいのシャワーと、変化に富んだ自然美。温泉地から、ぶらぶら歩きで格好のところにエメラルド色の川に影を映す“夢の吊り橋”があってスリル満点。バンガローやキャンプ場も多くこれらの客のため作った“森のいずみ”は、お風呂好きの人達に伝わって、広い駐車場は東京や名古屋ナンバーの車であふれている。オープンしてまだ1年だが入場者は当初の目標を軽く突破、寸又峡にまた一つ名所がふえた。
