東海道線島田隣の金谷から大井川鉄道が走っている。寸又峡入口の千頭(せんず)まで約40kmは懐かしいSLで1時間の旅。展望車やお座敷列車もついている。千頭からの奥大井渓谷はアプト式電車が持っている。アプト式というのはレ−ルが3本で中の1本は歯型の特殊なもの、電気機関車の歯車と噛み合わせて区間1,000mに対し90mの急勾配を、やんこらガタゴト登るトロッコ電車で日本唯一のもの。右に左に移り変る眺めには思わずワンダフルを連発する。高さ100mの真っ赤なレインボ−ブリッジと丸太組みの山小屋風の駅舎は見所の一つ。途中の接岨(せっそ)峡は、たっぷり湯量の奥大井の秘湯〈単純硫化水素泉〉。温泉会館には共同浴場があって素朴な地元の人達との語らいがまた楽しい。寸又峡の宿の主人は「寸又峡に行きたいがどんなところか」と客から問い合わせがあったので |
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「山奥の静けさがとりえだけの温泉です」と答えたら、「どの位静かなの」とさらに聞かれて、「自分で騒いだり音を出さない限り静かです」と返事したという。温泉の泉質は俗に言う硫黄泉で湯花をゴミと見間違えて嫌う客がいたので、ろ過装置をしたら肌がつるつるになる重曹泉みたいになった。ご婦人達は大喜びで、いつしか“美女づくりの湯"という愛称がついた。しかし人気は何と言っても緑いっぱいのシャワ−と、変化に富んだ自然美。温泉地から、ぶらぶら歩きで格好のところにエメラルド色の川に影を映す“夢の吊り橋"があってスリル満点。バンガロ−やキャンプ場も多くこれらの客のため作った"森のいずみ"は、お風呂好きの人達に伝わって、広い駐車場は東京や名古屋ナンバ−の車であふれている。オ−プンしてまだ1年だが入場者は当初の目標を軽く突破、寸又峡にまた一つ名所がふえた。 |