NPO法人健康と温泉フォーラムは医療、環境、施設等、温泉保養地に関わるあらゆる分野における専門家を中心とした団体です。
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玉川温泉 たまがわおんせん

リウマチ性疾患 慢性皮膚病(アトピ−性皮膚炎尋常性乾癬) 高血圧症(脳卒中後遺症)糖尿病 喘息

<所在地>秋田県仙北郡田沢湖町玉川字渋黒川
<交通>JR田沢湖線田沢湖駅からバスで1時間35分
<泉質>酸性緑ばん泉

<宿泊先ご案内> 湯瀬ホテル 秋田県鹿角市八幡平字湯瀬湯端43番地 電話番号 0186-33-2311

温泉療法医がすすめる温泉 野口順一
(岩手県立中央病院皮膚科長 皮膚科/慢性皮膚病)

地獄の熱湯がこの世の極楽。死百死病のうち402病が治る?
大人3人が輪を作ってもまだ足りない、底なしの大釜からゴボゴボとたぎる湯が川となって溢れ出ている。記録によれば、大同年間の806年頃に起こった大噴火の火口跡というから、1200年近くもの長い間、ひとときの休みもなく、湯を噴きあげていたことになる。   湧出量はこの一ケ所だけで毎分9,000リットル、湯量も泉質もいまなお変わらず、おそらく日本一の源泉だろう。田沢湖から約40k、岩手県境にある八幡平の中腹、標高740mの山合いに、もうもうの湯煙りをあげているところ、それが玉川温泉である。

ピリピリ、チカチカ、温泉が病気をさがす
広い木造の大浴場、男女別々の入口だが、中に入れば同じところ。昔の風習をそのままに残した男女混浴である。他に女性専用の浴場もあるが、大浴場では思い思いの格好で湯浴みを楽しんでいた。大きな浴槽のほか温度差をつけたいくつかの湯船があり、中に100%源泉の湯、というのがある。これは、盛岡の岩手県立中央病院皮膚科長、野口順一先生の助言、指導で作ったという。源泉は98℃の熱湯、普通どの温泉も水を半分近く混ぜて適温にするのだが、   それを途中ゆっくり時間をかけ、温度をさまして引き込んでいる。源泉100%の湯に入ってみたら肌がぴりぴり、チカチカして強烈そのものだった。「お客さん、どこが悪いだね、悪いところがあるから、しみるんだヨ。なんでもなければピリピリなんかしない。ここの湯はお医者さんみたいなものだ。3日もすれば悪いところが赤くなってすぐわかる。大丈夫心配ね〜ヨ、一週間たてば何もかもすっかり良くなるヨ・・・・・・」と、肩をポンと叩かれ元気づけられた。

皮膚病は病気の源。温泉で特効
毎週一回、同温泉診療所で湯治客の療養相談に応じている野口先生に話をうかがった。先生は、あらかじめ往復はがきで連絡すれば日時を指定し、また電話相談にも応じてくれる。玉川は酸ヶ湯、草津と同じ強酸性硫黄泉だが、塩酸の含有量がズバ抜けて多い。慢性皮膚病は、いったん湯ただれを起こさせて毒素を放出させる方法、また病巣一ケ所にまとめる“よせ”という治療法がある。成分が強いだけに効果も顕著に早い。この世に病気が現われたのは皮膚病からで、『古事記』にも出ている。言うなれば日本医学の原点であろう。戦前戦中の小学校の教科書に書かれた、大国主命と因幡の兎、   フカに身ぐるみ皮をはがれたウサギを助けた、という神話。元をただせば皮膚病で塩分の多い海水で治した、いわゆる水治療法である。8世紀の奈良時代に湯屋が建てられ、僧行基が全国行脚して温泉を開発し湯治がはじまった。15世紀の戦国時代には戦傷者を温泉で治療した、ある。その後、漢方、西洋医学が入って薬物療法が主流を占め、湯治はいつしか医学の片隅に追いやられてしまった。近年になって「温泉を見直そう・・・・・・」の声が高まって来たことは喜ばしい限り。まして高齢化社会の折、予防医学の面でも日本古来の温泉、湯治療法がもっと活用されて当然だろう。

珍石、天然記念物の"北投石"を産出
玉川温泉で"北投石"と呼ぶかなりの放射能を含み、熱燐光を発する石が産出される。温泉水そのものには放射能は少ないが、これは、湧出口から川となって流れているわずかの距離の間に沈澱して化石となるもので、10年間でようやく1mm程度の堆積層を作っていくという。日本ではもちろん玉川だけ、世界でも台湾と南米チリの計3ケ所だけという珍石である。   国の天然記念物のほか、特別文化財に指定され採取することは当然のこと、持つことも許されていない。前頁の写真は、その北投石でこれだけの大きさになるには、温泉の川の流れも変わるので、ゆうに5、600年はかかっているだろうと研究者は言う。原産地だけに標本として特別に所有を認められたものである。

未解明の研究で12人の博士誕生
さて、その玉川温泉、冬期間は雪に埋もれるため5月から11月初旬までの営業だけだが、ひとり皮膚病のみならず「よろず、どんな病気にも効果がある」と、ほとんど常連客でつねに満杯状態。毎年正月4日に受付を開始するが、当日だけで1,000件の予約申し込みが殺到。1月の受付で80%から90%埋まってしまうという。客は全国各地に留まらず、昭和23年サンフランシスコから当時一世、いま二世三世が15、6人の団体で毎年はるばるやって来るという。また、東京には玉川温泉愛好会が出来ている。「なかばあきらめた病気が治りました。温泉以上に温かかったみなさんの親切のお陰です。これは喜びとお礼の一端です・・・・・・」と、長期滞在の自炊部に寄贈されてきた全自動洗濯機がズラリ並んでいた。   「お客さんはどちらから・・・・・・」と声をかけると、福島から従弟夫婦3組でやって来たという。「1月に申し込んで、来れるのは7月だものナ。おらげのところにもいろいろ温泉あっけど、効き目は病気でなく、財布の方に利く・・・・・・」と大笑い。朝5時、ゴザを片手に名物の"岩盤浴"に出かけて行った。この岩盤浴は、地熱で暖かい岩の裂目から噴き出す熱気を患部に当てながらゴロンと横になって一休みするのだそうだ。痛いリウマチも3週間でピタリ、一年間は再発しない、と客の方が療法を知っていた。奇蹟の玉川温泉、まだ解明されない何かがあり、その研究で現在までに東北大から8人、岩手医大から4人の医学博士が誕生している。(※死白死病とは、時としてとりかえしのつかない病気の数が404もあるので注意という意)
 
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