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名湯百選 名湯百選

玉造 温泉 (1990年9月発刊名湯百選より)

リウマチ 神経痛皮膚病 婦人病

<所在地>島根県八東郡玉湯町玉造
<交通>JR山陰本線玉造温泉駅からバス10分、出雲空港から車で30分、松江まで8キロ
<泉質>含食塩硝泉

温泉療法医がすすめる温泉 若林哲也
(医療法人石和温泉病院健康管理増進センタ−所長/内科 物理療法/医学博士)

神話と歴史に彩られた勾玉といで湯の玉造
山陰と言えば雲路、出雲の温泉と言えば第一にあがるのが玉造温泉であろう。何せ神代の昔から、その名を留める古湯。出雲風土記に「川辺に出湯あり、男女老少道路に駱駅として群衆市をなす。灌すれば即ち形容端正、浴すれば即ち万病悉く除く、俗人名づけて神湯といえり・・・・・・」とあり、名湯の一つに数えられてきた。   読んで字の如く、玉を造る・・・・・・歴代天皇が即位の折、引き継がれる三種の神器、剣、鏡、勾玉(まがたま)の、玉を作ったところだったことはあまりにも有名。シンボルの“玉”と“湯”の二字を並べた玉湯が、そのまま町名になっている。

玉は神と呪性を宿すアクセサリ−
国道沿いの温泉入口に、三種の神器を表現した温泉シンボルの“玉”が、またほど近い庭園に勾玉発祥の地を記念して作ったという赤い勾玉像が建っている。陶芸家で現代彫刻の第一人者である、清水九兵衛氏(陶器の六兵衛氏)の作品。玉も石から生まれ、石も磨けば玉になる・・・・・・という、教訓を表わしたもののようだ。温泉街は川をはさんで並び建ち、中でも“まが玉橋”はひときわ目を引く。旅館やホテルは、健康長寿を願って付けたと思われる名前が多い。お風呂も四国の青石など銘石を積み重ね、敷きつめた自慢のものばかり。圧巻は、「多分日本一でしょう」という大露天風呂。数寄家造りの離れに、ほのぼのとした湯の香が立ちこめ、のんびり1日ひたれば1日長生きしそうな気分さえした。   キラキラ光る宍道湖を望みながら、ぶらぶら歩きに格好の高台に、玉作り史跡公園がある。そこにはカヤ葺の古墳時代から平安時代に至る工房跡が復元され、町立の玉作資料館もあってメノウ細工や、松江藩のご用窯だったという布志名焼の実演も見られる。アクセサリ−の玉で身を飾る風習は遥か縄文の昔むかしにさかのぼる。古代人は磨き上げた玉に必ず孔をあけ、紐を通して飾った。玉は魂に相通じ、呪性、宝性、祭性を持つと信じられていた。玉が神秘的で美しいのはこのためであるといい、古代人の精神生活の一端をかい間見た思いであった。それが現代につながっている・・・・・・ことにはしばしウ−ムだった。

出雲の11月は神有月(かみありづき)
わが国で、最も早くから開けた神の国、出雲。数々の神話の中でもヒ−ロ−の大綜蝟ス(おおくぬしのみこと)を祭神としてまつる出雲大社は見逃せない。荘厳な社(やしろ)は、国造り、国譲りの代償として作り与えられたという伝説がそのまま裏打ちされた壮大な社殿。伊勢神宮の神明造りと対照される大社造りの代表である。拝殿、また神楽殿に張られた、しめ縄はどうして作られたものか、その大きさにはド肝を抜かれた。大黒様と呼ばれる福の神、いまは縁結びの神として親しまれているが、大社には独特の拝み方がある。「しじゅうご縁がありますように・・・・・・」と賽銭(さいせん)は45円。二礼四拝手一礼の拝み方で、拍手はしあわせを願って4つ叩く。   2つは自分のため、あとの2つは相手の願いをこめたもの。思えば思われる・・・・・・思いやりの大事なことを教えていた。10月を“神無月(かんなづき)”という。全国の八百万(やおよろず)の神様が、ここ出雲の地に集まるので、そう呼ばれるのだが、出雲だけは“神有月(かみありづき)”と呼び例年旧暦10月に神在祭が営まれる。神様がいない10月、神前結婚式はおかしい・・・・・・と、はるばる遠く全国から挙式の申し込みが殺到、出雲路は幸せ一杯のカップルが溢れ、境内の杉木立におみくじの花が咲く。おまいりした大社参道には、名物、手打ちの出雲そばの店が並んでいる。いつまでも元気で長生きを・・・・・・の健康食だナと、思われた。

保養型に目を向け“がっしょがけ”で・・・・・・
「玉造はクセがなく、名湯と言樓る帥ヵェの温泉です。推薦した手前、また行って来ました」と、語ってくれたのは、山梨県・石和温泉病院、健康増進管理センタ−所長の若林哲也先生。食塩を含んだ芒硝泉で、神経痛やリウマチなどに鎮静効果があるほか、飲んで女性の大敵、便秘、糖尿病などによい。しかし温泉は、どこにも言えることだが、注射と違って1、2日で効くというものではない。玉造は見どころが多いので観光ついでの歓楽地型になっている。   お客は宿に着くなりまずお風呂、そして寝る前、さらに翌朝またドボン・・・・・・。これでは家に帰って「ああ疲れた」ということになる。多くの見所、聞き所を持ち、気候風土の環境抜群のところだけに、この繰り返しだけでは勿体ない。ズバリ言うなら“宝の持ちぐされ”になりかねない。これからは長い時間かけても保養型に向きを変えたらいい。“がっしょがけ”で、やろうじゃないか・・・・・・と言いたい。
 
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