温泉療法医がすすめる温泉|日本の名湯百選
俵山温泉
山口県長門市俵山
- 泉質
- 良アルカリ性単純泉
- 適応症
- 神経痛
- リウマチ
- 関節炎
- 打撲症
- 切り傷
- 火傷
- 交通
- JR山陰本線長門市駅からバス40分 山陰本線小月駅からバス70分
西日本の代表的湯治場、足をのばせば天下の景勝
カラン、コロンと下駄の音がよく響く。タオルをぶら下げた浴衣姿がぴったり似合う湯のマチ。それが俵山温泉だった。西日本随一と言われる療養温泉地で、環境庁の国民保養温泉、中でも数少ない保健温泉地の指定を受けている。昔、むかし猟師が珍しい白い猿を見つけて矢を放ったが見失い、翌日血痕をたどってさがしたところ、傷ついた猿がうずくまっていた。
そこには湯がコンコンと湧き出ていて、白猿の姿は一瞬にして消えた。湯の在りかを教えてくれた猿は誰あろう薬師如来の化身だった。以来千有余年、村人たちは薬師如来を俵山温泉の神様としてあがめ、子猿をしっかり抱いた白猿像を、おさすり薬師さんと呼んで湯治客の信仰も集めている。
あと一つほしいクアオルト的なもの
ご兄弟が揃って内科、外科、整形外科のお医者さんで現在3代目、斎木医院、俵山病院グループの医療法人生山会理事長、斎木貞彦先生に話を聞いた。医者で、かつて長門市長を務めた伯父が地域医療、とくに予防医学に熱心で、大勢のお客を迎える温泉地が、これではダメだと俵山に市で最初の下水道を施設した。また自分の診療所をさっさと閉鎖して、「病人が一番安心していられる病院を作れ、医術は算術ではない、借金が怖くていいものが出来るか、患者の安全地帯となるものを作れ……とハッパをかけられましてね。温泉も自前で掘って、今の俵山病院が出来ました。掘った温泉はアルカリ性もPH10という、すばらしい湯を掘り当てました。
これからの俵山をどうするかみんな真剣に考えています。私は医療は引受た。温泉の人たち、みんなで自分たちの病院を作ろう。第3セクターでもなんでもいいじゃないですか……と呼びかけているんです。」俵山は美しい自然環境が俗化されずに残っており「空気がウマイ……」と、都会の人なら必ず言う、清明な大気に温泉があるのだから、健康増進ゾーンになること疑いなしである。40余軒の旅館がある湯治客大歓迎で料金も安い。内湯をもっている旅館はごく僅かで、客は町の真ん中にある“町の湯”“川の湯”の共同浴場通い。これがまた俵山ならではの温泉情緒をつくり出している。
前が海、後ろは山で二つとも国定公園
車で山を下ること30分余り、眼下にキラキラ太陽がまぶしく光る日本海……。NHK朝の連続テレビ小説“和っ子の金メダル”の舞台になった、北長門海岸国定公園、青海島がある。荒海の自然が作り出したその景観は、遊覧船から眺めると海上アルプスという異名もうなずける。奇岩の島めぐりには、岩(がん)がけコースがある。黄金洞では夫婦円満を、観音洞は安産と子宝を、また仏(ほとけ)岩にお祈りすれば、願いごとかなって幸せをつかめます……と。
波がくだけ散る岩礁が多くあるところを瀬叢(せむら)というそうだ。東山魁夷画伯が精魂こめて書いた皇居新宮殿の壁画のセムラはここをモデルに書いたもの、と言われ、どの角度から見ても正に一幅の絵である。また青海島と反対の内陸部コースを走れば、これまた天下の絶景、秋吉台国定公園に着く。何万年、何十万年か地中の岩にすき間からたれ落ちた、しずくが生んだ鍾乳洞や、日本最大のカルスト台地が待っている。
