NPO法人健康と温泉フォーラムは医療、環境、施設等、温泉保養地に関わるあらゆる分野における専門家を中心とした団体です。
名湯百選 名湯百選

十和田温泉郷 とわだおんせんきょう

(猿倉・焼山)神経痛 皮膚病 婦人病 糖尿病 高血圧
(蔦)神経痛 筋肉痛 関節痛 打ち身 くじき 慢性消化器病 病後回復 切り傷 火傷 慢性皮膚病 動脈硬化症
(谷地)婦人病 冷え症 神経痛など

<所在地>青森県上北郡十和田湖町
<交通>青森駅からバス酸ヶ湯経由で猿倉まで100分。猿倉タクシ−蔦20分、タクシ−焼山30分。
マイカ−は東北道十和田ICから蔦まで90分
<泉質>
(猿倉・焼山)硫化水素硫黄泉
(蔦)ナトリウム硫酸塩、炭酸水素・塩化物泉
(谷地)単純硫化水素泉

温泉療法医がすすめる温泉 小笠原真澄
(秋田県鹿角市大湯リハビリ温泉病院院長 小笠原達記念温泉医学研究所/リハビリテ−ション)

"天下無類"と世に知らせた大町桂月
「住めば日の本、遊ばば十和田歩きゃ奥入瀬、三里半」
紀行文で十和田を広く世に紹介した文人、大町桂月が詠んだ歌。桂月は明治41年、初めて十和田を訪れ、その景観に感動して「山中に仙境あり、ただ人知らず」、また「山は富士山、湖水は十和田」と絶賛している。四国高知の出身だが、
  以来、十和田、奥入瀬に魅せられ晩年は常宿の蔦温泉に本籍を移して生涯の地とした。親交あった金波浄瑠璃の小笠原子爵に宛てた"蔦温泉より"の手紙は明治の末から大正、昭和の初期まで当時全国統一だった国定教科書、小学校の国語読本になっている。

教科書の紀行文にも姉弟の慕情
教科書の手紙は次のような内容で候文だが一部簡略した。「蔦温泉は十和田の山中に候へども湖から45里も離れている。焼山は蔦川と奥入瀬が合する処。焼山からさかのぼること3里半で十和田湖に達する。この3里半の風致渓流は天下無類に候。湖の断岸絶壁、奇厳怪石、老樹古木がこれまた天下無類に候。焼山より蔦川をさかのぼること半里、山坂を登ること半里で蔦温泉に達する。山の一軒宿だが風呂場は三つあり、一つは湯滝、一つは狭長で湯舟深く、一つは広大にして浅く、立てば湯が腰に及ぶ。湯舟の大きさは三間四方もあり、三方空地でガラス窓なれば浴しながら月を賞することが出来る。土地は清浄、人は純朴、殊に今は積雪三尺もあり4月の末まで解けないので人の往来絶えて心がのんびり致し候。私は引続き籠城して色色著述に従事し、雪解くる頃飛び出して山登りを致し申すべく候。   〈中略〉今夜は旧の11月27日で、故郷の姉から申し来りていわく「月の出に阿弥陀(あみだ)様が現われるから拝め」とのこと。私は信じないが、親はすでになく、兄弟中生き残れるは姉と自分だけの二人。その姉が南国で見る、らん月を私は北地で見て姉を偲ばんと徹夜致し居り申し候・・・・・・」〈後略〉湖畔に高村光太郎の傑作として名高い、十和田のシンボル"乙女の像"がある。光太郎晩年のモニュメントと思っていたが、さにあらず十和田を世に広めた大町桂月と、開発に尽力した当時の武田知事、地元小笠原村長3氏の功績をたたえた顕彰碑である。像のモデルが光太郎の愛妻、智恵子で、2人手を合わせた格好で立っているが、光太郎はこの山奥に智恵子を1人立たせるのは可愛想だと2人の智恵子にしたものだという。

温泉本来の姿を、すべて兼ね備えた名湯
焼山、谷地、蔦、猿倉と4つの温泉を総称して十和田温泉郷と呼んでいる。桂月の手紙にも出ている焼山は、その頃僅か民家5、6戸だけのところのようだったが、奥入瀬・十和田湖の玄関口という位置にあることから30余年前、猿倉温泉から山道12kmを引湯して温泉地となり、今では近代ホテルが建ち並ぶ町の中心地となっている。蔦・谷地両温泉は美しい緑に囲まれた静かなたたずまい。宿のお風呂の真下の岩盤からゴボッ、ゴボッと温泉が湧き出ている。針一本でも容易にさがすことが出来るほど透明なさわやか温泉。猿倉は十和田の秘湯と呼ぶにふさわしい温泉で、のんびり疲れを癒す常連の湯治客が多い。推薦医の小笠原先生は、「十和田は秋の紅葉が人気ですが、真冬でも素晴らしい。外輪山の白と黒漆を流したような湖面の風景は幽玄の世界・・・・・・。   じっと春を待つ辛抱強い東北の人の姿を映してくれているようにも見える。春は奥入瀬のブナ林などが一斉に芽吹いて生命の美しさを感じさせる。そう言えば四季折々に一番いい顔見せて、訪ねる人を感動させる。やはり天下の景勝地ですね。温泉も療養・保養・休養の全てを兼ね備えた名湯です・・・・・・」と、賛辞を惜しまない。先生は"名湯百選 II"に登場した大湯温泉の名医、小笠原達先生の愛娘。達先生は先年惜しくも他界されたが、お父さんの夢だった温泉研究所をいち早く病院に併設するなど立派に遺志を継いでいる。「温泉は西洋医学にはない不思議な力を持っている。と、父は"温故知新"ー古きをたずねて新しきを知るーを常に口にしていました。片マヒで歩けなかった患者さんが車イス、そしていつの間にか歩けるようになっていく・・・・・・。寒冷地という土地柄から高血圧病患者が多い。
 
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