NPO法人健康と温泉フォーラムは医療、環境、施設等、温泉保養地に関わるあらゆる分野における専門家を中心とした団体です。
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湯田中・渋温泉郷 ゆだなか・しぶおんせんきょう

全体的にリウマチ 痛風 呼吸器疾患 胃腸病など

温泉療法医がすすめる温泉 白木秀男
(医療法人六医会理事長
 東京帝国ホテルインペリアルタワ−I・Tクリニック院長/内科 小児科/医学博士)

志賀高原の人口、いろいろな“顔"もつ湯の里
山の中にあるので、もとは山の内温泉とも言った。諏訪、戸倉上山田と肩を並べる信州の湯どころ、湯田中・渋温泉郷である。妙高、戸隠などの北信五岳をはじめ2,000m級の山々に三方を囲まれた、静かな山合いの湯のマチ。僅かな30余kmの谷間に、よりどり見どり、   それぞれ特徴をもった9つもの温泉が連なっている。郵政省が久々に放ったヒット作の地方切手で、人気ナンバ−ワンに選ばれた"お猿の温泉"、お年玉年賀はがきの賞品にもなったが、このお猿の風呂も同温泉郷の中にある。

善光寺さんのおかげ、心の寄りどころ
1998年の冬季オリンピックの開催に、日本がまた名乗りをあげた。札幌オリンピックに続いて、2度目の冬季大会である。その国内候補地に決定したのが長野。スキ−の花形、アルペン競技の主会場が志賀高原。湯田中・渋温泉はその志賀高原の入口にある。IOCの決定は、まだかなり先のことだが、町の人たちは何がなんでも、と夢のオリンピックに向かって動き出している。よその温泉地は、特別のところを除いてほとんどが客足にダウンで、町起こし、客起こしにあれこれ知恵をしぼっているが、   オリンピックの国内候補地決定が、スキ−熱にさらに拍車をかけ、シ−ズン中はどこも"満員札止め"の盛況。これも「善光寺さんのおかげです」と、素直で素朴な表現をかくさない。"遠くとも、一度は参れ善光寺"と、信仰を集める善光寺。ご本尊は1400年前、百済の国(韓国)から献納された阿弥陀如来で、日本最古の仏像とか。一つのお寺だが、天台宗と浄土宗の二派があり、大勧進貫主と大本願尼宮上人の2人が、宗派を越えて共に住職をつとめ、善男善女のご祈祷を捧げている。

温泉地選びは一声かけて、が賢明
長野は、私のふる里・・・・・・という白木秀男先生を訪ねた。東京内幸町の帝国ホテル・インペリアルタワ−でI・Tクリニック、また新宿西落合の自宅に医院をもつ院長先生である。「湯田中・渋温泉郷は、文句なしにいいところです」、開口一番の言葉がこれだった。「町を流れる川、志賀高原を源とするあの水がキレイだ。水がキレイだと言うことは、空気もキレイ。緑の山々に囲まれた環境風土は、第一級でしょう・・・・・・」という。湯田中・新湯田中、星川、安代、渋、上林、地獄谷、川をはさんで、角間、穂波と、9つの温泉があるが、人間と同じで、それぞれ個性というか特色を持っている。気分転換の1〜2泊なら、どこでもいいが、保養、療養なら自分の症状に合った所を事前に調べて訪ねることが大事だ。   例をあげると、「渋温泉」は含食塩石膏泉、同芒硝泉で温まりの湯、神経痛リウマチ痛などに鎮静作用があり、高血圧、糖尿病、動脈硬化によい。「湯田中・新湯田中」は弱食塩単純泉で、軽い心臓病、動脈硬化の予防、脳卒中の片マヒや交通事故など後遺症の機能障害回復に、飲んで胃腸、便秘に効く。「穂波、角間」は含塩硫黄泉、慢性関節リウマチ、皮膚病などによい。「上林」は芒硝泉、含食塩石膏泉、「地獄谷」は含石膏正苦味泉と、それぞれ"顔"をもっている。それも代表的な顔(泉質)を例にあげただけ。同一温泉に、また別の顔もあるので、専門医に相談するのが一番賢明な方法である。

湯の香に文化の香り、健康が一番の“顔”
お猿のお風呂は地獄谷温泉にある。お客が餌をやるので人なつこい、親子の情景は微笑ましく心なごむところ。そばに時折り熱湯を噴き上げる、間けつ泉があり地下エネルギ−のすさまじさを見せている。上林温泉は、志賀高原を愛した文化人の集まりの場だった。大正デモクラシ−のハイカラ文化の建物などが名残りを留めている。洋風木造建築の志賀山文庫は、東京にあった旧渋沢邸を移築したもの。同文庫には、この地を訪ねた多くの文人墨客の作品、小説は初版本だけ16,000点、そのほか絵画など、ゆかりの資料3,000点を所蔵している。温泉熱を利用したベコニアガ−デンは、真冬でも一年中切れ目なく花がある。   日本画壇の巨匠横山大観は、角間温泉の高台に別荘を持っていた。ワラぶき屋根の一見簡素なものだが風格がある。今は、"つみ草の宿"と名を変えている。渋温泉は、昔から大小さまざまの宿が軒を並べて、ほんのり湯の香ただよう湯治場情緒が色濃いところ。外湯と呼ぶ共同浴場めぐりが面白い。外湯は9つあって、苦(九)労を流そうというもの。見知らぬ者同志が、ハダカの付き合いで、お国自慢の会話が生まれ「明日は○○か××に行こう」と、誘い誘われて湯治をより楽しいものにしている。このように湯田中・渋温泉郷はどの温泉見ても、そこには"健康が一番大事・・・・・・"と感じさせるこれまた“顔”があった。
 
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