湯涌温泉の伝統行事"氷室(ひむろ)の日"に金沢大学医学部を訪ねて、野原先生に湯涌推薦の弁を聞いた。江戸時代から氷室の節句〈旧暦6月1日〉があり、加賀藩では毎年氷室に蓄えた白山の雪を将軍家に献上していた。これが庶民の間に広がり、夏越しの体力を養うため麦饅頭を作り"氷室の饅頭"として一般家庭で、また嫁入り先や親しい人に届けたり、会社商店では従業員に配る風習がある。氷室はいわば夏に備えた雪氷の冷蔵庫。夏バテ防止、健康第一を思いやる庶民の願いをこめた知恵である。北陸には有名温泉地が数多くあるが客のほとんどはあちこち引っぱり回されて、温泉に泊まって帰るという一泊観光型。それも結構なのだが、楽しい旅行も元気だから出来る。元気と病気はたった一字違いだが、この一字は天国と地獄の差。温泉は地獄の病気にならないために利用してほしいと申し上げたい。人間いつかは年をとり高齢化社会の仲間入りをする。そして次に来るのは病気。大半がいわゆる成人病で、高血圧、心臓病や脳血管疾患が多い。これは共に血管がもろくなって起こる病気だから、のんびり温泉に浸って血行をよくするよう心掛けたらいい。年に1回2、3週間の湯治でグンと若返る。 |
|
今の高齢化老人福祉事業は、残念ながら病気になった人達が主な対象になっている。病気は待っていてくれない。だから自分の健康は自分で守る―ということに早く気付いてほしいと常々思っている。この点、湯涌は昔の湯治場形態が残っている。新しく温泉団地も出来ているが、共々健康志向を目指していることは嬉しい。1〜2泊の客に交じって長期滞在で、じっくり"充電"している年配者が多くなったと聞いて正にわが意を得たりと思った。前田の殿様が、元気回復の湯治をしていたところである。みんな殿様に見習おうじゃないか・・・・・・と言いたい。
|