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湯本温泉地のリニューアル
1 温泉地経営の基本的考え方 温泉地にあるホテルや旅館の経営は、お客が「もう一度来たい。」と思うことを願って行われている。そのためにいろいろの努力が行われる。例えば、設備投資をして客室や浴室などを快適なものにし、常に笑顔をもって客に接し、おいしい料理を作って客を喜ばせるなどである。このようなことが基本的に大切なことはいうまでもないことであるが、温泉地におけるサービスが、このような旅館の中で行われるサービスだけで満足されるものだろうか。温泉地を取り巻く自然環境とふれあう心地よさ、街中を散歩し日ごろ見られない情景に接する楽しさ、その街の歴史や文化にふれて感動することなど温泉地全体の個性の良さが、宿泊施設のサービスに合わさってはじめて客は満足し、「もう一度来たい。」ということになるのであろう。 日本温泉協会が創立70周年を迎えたのは1999年であるが、その記念誌に29人の方々がこれからの温泉地のあり方について提言をされている。この中で、半数を超える方が温泉地の発展のためには自然環境や個性ある街づくりが重要であるを指摘されている。つまり、温泉地が人気を博するためには個々のホテルや旅館におけるサービス提供のみならず温泉地全体を向上させることが必要なのである。これを温泉地経営と呼ぶことができる。この意味での温泉地経営は温泉地が存続する限り必要なものであり永続性と一貫性をもった考え方に基づいて進められなければならない。この考え方に基づいて多くの温泉地においては「街づくり基本方針」や「観光基本計画」などが作られているのが通例である。ここ湯本温泉においても「湯本街中百貨店計画」や「いわき観光戦略プラン」が策定され温泉地づくりが進められている。 ![]() しかし、このような提言が実行される体制が整っているかどうかがさらに重要である。いかに立派な提言が揃っていても絵に書いた餅であっては何もならない。温泉地にはいろいろな機関や団体が関係している。例えば、観光課や商工課などの行政機関、商工会議所、観光協会、旅館組合、商店会、住民自治会などである。これらの機関や団体の意見が完全に一致することは難しいにしても基本的な部分でコンセンサスができていなければ温泉地経営ができる筈がない。特に観光や温泉で生活をしていない住民の合意をいかに取り付けるかが重要であろう。また、旅館と商店及び観光施設との協力関係も同じく重要である。しかもこれらは、温泉地の中から声が湧き出てくる内発性、他を頼らない自主性、内部の意見を調整できる自律性の三つが揃っていなくてはならない。それがあってこそ、はじめて温泉地経営主体が存在しているといえるのである。過去の成功事例にはこの関係を築くために活躍したその土地のキーパーソンがいる例が多いようである。 2 温泉地の方向転換 温泉地は何を基準にするかによりいろんな類型に分けることができる。千葉大学の山村教授は環境庁の資料と日本交通公社の「全国温泉案内」により全国の温泉を療養型、中間型、観光型の三つに分けその類型別構成比を示しておられる。これによれば1990年の類型別割合は、療養型3.7%、中間型13.1%、観光型83.2%となっており大多数の温泉地が観光型である。療養型と中間型は利用目的が療養あるいは保養であり、温泉地経営の目標が立て易いが、観光型の温泉地は利用目的が千差万別である。自然環境や歴史、文化の観光に重きを置いたものから、食事や遊興に重きを置いたものまでいろいろなタイプが存在しているが、これらの温泉地の多くが日本経済の高度成長期に一泊二食宴会型というワンパターンの温泉地になったことはよく知られているとおりである。現在はそれらの各温泉地がそのパターンから抜け出しそれぞれの温泉地の個性創出に努力をしている時代であろう。これに成功した温泉地は今後とも生き残れるがそれができなければ滅び行くしかない。 ![]() 観光型の温泉地をどのような温泉地に作り上げていくかは、その温泉地の歴史、文化、自然環境などの観光資源およびその地域の観光施設などに基づいて進めることとなるが、二つの点について注目が必要である。一つは、温泉地経営はその時代、時代における社会経済の状況に基本的に左右され、現在は歓楽的な温泉地は、ほとんど求められていない時代であること、二つは国が「健康日本21」という健康政策を展開しているような健康志向の極めて強い時代であるが、家庭の風呂や銭湯に入るのと同じような方法で温泉に入り、それだけで健康づくりや疾病の予防ができるという考え方には、医療サイドからの強い警告があるということである。どのような温泉に、どのような条件で、どのような方法により利用すれば療養または保養の効果があるのか十分な検討が必要である。今まで観光型の温泉地であったところが、これからの温泉地経営の方向を決めるためにはこのことを十分にわきまえなければならない。 湯本温泉地は古い歴史を有する温泉地であり過去における温泉地の特性としてはいろんなパターンがあったかもしれないが、戦後のパターンとしては、昭和30年頃の最盛期は芸者が250人いたという状況からみてかなり歓楽的な温泉地であったことが窺える。現在の日本においてそのような温泉地を望む人はごく少数派であることは現在ではその芸者が5人しかいないということからも推し量ることができる。湯本温泉地の経営方針の転換が必要であることを理解されている関係者は少なくないのであろうが、どの方向に進べきかということになれば多くの問題があり簡単ではない。観光型の温泉地の大多数が抱えているものと同じ悩みを抱えているというのが湯本温泉地の現状であろう。 3 湯本温泉地の個性的街づくり 湯本温泉地は、歴史が古い、街中に温泉旅館が点在している、東京から特急で2時間、スパリゾート・ハワイアンズをはじめ近くに多くの観光資源や観光施設が多いなどの特性をもっている。これらの特性を活かして総合的に街づくりを進めるのが湯本温泉地の生き残る道である。 一つは街中に温泉旅館が点在するとい街の個性を活かした街づくりでありこれは商店街とのタイアップが特に重要であろう。二つめは保養温泉地としての拠点作りの推進である。湯本温泉地にはすでに「さはこの湯」と「ゆったり館」という健康促進型の温泉施設があり市民中心に利用されているが、これを来訪者が喜んで利用するようなシステムをつくり保養温泉地の拠点として活用すべきである。また、さはこの湯のほかにも数個の個性ある「湯けむり浴場」を建設する計画がみられるが是非促進しさはこの湯と同じ位置付けで活用すべきである。三つめは道路、河川、緑地公園などの一般的な街の公共整備の促進を図ることは、街の安全と美観を向上させ温泉地としての魅力を増加させるという視点からも重要であろう。 ![]() 保養型の温泉地を目指す場合最も大きな問題点は、宿泊施設の経営問題である。滞在型の宿泊料金の設定、泊食分離、健康食事のメニュー、滞在プログラムの提供など多くの解決すべき問題点が横たわっている。湯本温泉地では、バルネオセラピストの制度を既に発足させ第1期の資格取得者が既にいくつかの旅館で実務についておられる。この意味では既に保養型の温泉地を目指して進んでいる。しかし、これらの問題点を解消するにはかなりの時間が必要である。 湯本温泉地は一方で街づくりを進めながらもう一方で上述の宿泊施設の経営改革を進め、当面は観光型の、そして将来は保養型の温泉地に発展していくのであろう。 |