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いわき湯本温泉の展望
1.いわき湯本温泉の特色 いわき湯本温泉には35軒の旅館が市街地に点在し、駅をはさんで東部丘陵地には石炭化石館や、温泉利用型健康増進施設であるいわきゆったり館がある。また、湯本温泉西方には当地域を代表するスパリゾートハワイアンズがある。いわき湯本温泉は古い歴史をもち、江戸期には温泉宿場町として繁栄していたが、明治以降には炭鉱町となり、1979年の炭鉱閉山を機に温泉町としてこの30年の間に再復興を図ってきた。従って、伝統的な温泉街という雰囲気は部分的にしか残されていない。一方で、閉山後に常磐ハワイアンセンター(現スパリゾートハワイアンズ)が開発され、この温泉施設と双子となって発展してきた経緯もあり、リゾートの雰囲気と和風の雰囲気を併せ持つ温泉地域を形成している。 2.いわき湯本温泉の健康利用の推進 いわき湯本温泉地域が「健康づくりの拠点」にシフトするためには、以下のような課題がある。 今後の健康客には、地域周辺の利用客と、広域からの健康志向客がある。この2種類の利用客に対応した健康サービスの開発、誘客戦略、施設等の環境整備が望まれる。 (1)住民利用の推進 いわき湯本温泉はいわき市の中心部に位置するため、市民が日常的な温泉利用による健康づくりの拠点として格好な場所である。特に、ウィルポート、ゆったり館は施設、スタッフともに対応能力があり、平日には十分に利用されているとはいえない。いわき市の健康政策や福祉政策の一環として、住民の健康利用の推進策や支援策を講じる必要があろう。 (2)「健康パーク」づくり 慢性病をもつ人々、術後のアフターケアーが必要な人々、健康づくりをしたい人々が自由に集い、仲間を見つけ、相互のコミュニケーションから健康的なライフスタイルを学び合うための公園、これがドイツのボトロップ市で実験されている「健康パーク」のコンセプトである。健康パークは地域病院、市民グループ、自治体の協力で構想され、地域公園と病院との間に、喫茶室、体操室、集会室、身障者浴室などのある「健康の家」が設けられ、屋外には体操広場、ハーブ園、散歩道が整備されており、市民が自由に利用できる。 また、ゲルゼンキルヘェン市の自治体浴場では、来訪者に対し、低料金で運動プログラム や健康学習プログラムを提供しており、「健康パーク」と称している。いわき湯本温泉病院とゆったり館との関係を調整し、「いわき健康パーク」といったコンセプトで誰でもが利用できる健康づくりのための公園や遊歩道・緑地等の環境整備を推進することも考えられる。 (3)ヘルスツーリズムの推進 短期的な課題としては、ウィルポートやゆったり館を利用した代表的な健康サービスプログラムやサービスメニュー(水中運動、美容、リラックス、ヨガ、整体、周辺の散歩・スポーツ・体験観光他)を明らかにし、いわき市周辺の企業や団体の提携施設として、PR・プロモーションを図ることが考えられる。特に、ゆったり館を利用する健康づくりにとっては、いわき湯本温泉の旅館が宿泊先となるため、個人客、カップル客の滞在に対応した宿泊サービス体制が課題となる。 (4)「健康保養地いわき」のイメージ形成 長期的・広域的な課題としては、「健康保養地いわき」といったイメージをどう形成し、誘客・プロモーションするか?を模索すべきである。いわき市には、湯本温泉、スパリゾートハワイアンズをはじめ、鉱泉、海浜浴場施設などが散在している。各所で、自然に触れながら休養・癒し・健康増進が可能ないわきというイメージを構築する必要もある。また、各所の健康づくり拠点では、当然市民の健康づくりが推進されていることが前提である。 3.いわき湯本温泉の環境改善 (1)自動車の町から安全快適な町へ 居住者にとって利便な町は、訪問客や周辺住民にとって魅力あるものとは限らない。また、自動車利用者にとって快適な町は、往々にして歩行者特に高齢者や障害者には不都合な町である。 温泉地環境の最大の課題は歩行者と自動車との調整であり、いわき湯本温泉もその例に漏れない。海外の温泉地では自動車交通規制に始まり、歩行者専用路の設置、バイパス道路の整備、駐車場の整備など1985年から90年代にかけて、温泉地の交通インフラの整序を行っている。イタリアのアバノ温泉は日本の温泉と同様、温泉ホテルが建ち並ぶ風景であったが、温泉地内の道路の一部を歩行者専用路にしたことにより、沿道の店舗が充実し、町並みも美化されたため、住民、保養客の集合拠点となり、温泉地の顔が形成された。温泉地は交流人口が多いため、歩行者専用路の設置による経済波及効果は高い。 いわき湯本温泉の市街地は歩ける距離圏にある。通過交通が少なく、旅館・共同浴場などの主要施設が集積するルートの一部を自動車交通規制や歩行者専用路にするなどの方策を検討すべきである。また、湯本温泉とゆったり館との連携のためには、遊歩道などの整備が望ましい。なお、温泉地における旅館と店舗との関係づくりについては山中温泉などの取り組みが参考になろう。 (2)いわき湯本温泉の美化 温泉地の体験は部屋・浴室、旅館、入り口、歩道・町並み、景観というシーンの体験である。また、これらシーンの改善は集客に結びつく。その方策としては花や絵を飾る・坪庭を設けるといった身近な改善から、御幸山公園に花木を植える、湯本川の改修に際し修景するといったものまである。湯本温泉ではパブリックアートの設置、ポケットパークの設置など美化運動を行ってきているが、身近な美化運動や花一杯運動などにより、更に魅力ある温泉地となろう。また、手作りの立体的な案内図を作成することは、住民が町並みの良さや改善点を理解することにつながる。こうした温泉地の学習運動も重要である。 (3)保養客センターの設立 住民、周辺からの日帰客、保養客の交流や案内のための複合施設が「保養客センター」である。ドイツでは、健康づくりのための相談や文化的な催し、創作活動などのレジャープログラム、周辺旅行案内など多様なサービスのセンターとなっている。日本では、観光、物産、旅館共同組合、観光協会など多様な活動がなされているが、客に対する一元的なサービスは皆無である。サービス享受者の視点にたった、情報案内、健康相談、レジャーサービス体制を構築するとともに、それらの拠点を検討すべきである。 (4)改善策の具体化 21世紀の中核産業の1つが健康産業であり、温泉地はその一翼を担う。温泉地の課題は商工、観光、労働、厚生、環境、農水、建設など既存の行政部局に横断的に関連する。これら担当部局の事業枠内で、温泉地やサービス内容の改善を具体化する必要があろう。 また、ヘルスツーリズムの推進のためには、様々な地域人材の育成が重要になる。医学・福祉・観光・経営といった領域横断的な人材を既存の学校システムと連携してどう育成するかは今後の課題である。 |