NPO法人健康と温泉フォーラムは医療、環境、施設等、温泉保養地に関わるあらゆる分野における専門家を中心とした団体です。
FORUM REPORT WORKSHOP
 

道後温泉の経営戦略と旅館のあり方


奥村武久
NPO法人健康と温泉フォーラム 理事



●日本最初の温泉フォーラム
 「健康と温泉フォーラム」が最初に開催されたのは、昭和61年11月26日(いいふろ)で松山市・道後であります。
 大島良雄・植田理彦・阿岸祐幸他多数の先生方にご出席いただき盛大に開催されました。当時は新しい試みとして全国的に注目されました。高度成長の末期ではありましたが、旅行といえば職場の団体旅行が主体で、全国の温泉地は歓楽型、旅館は大型化という画一的時代でありました。
 道後温泉においても、昭和63年の瀬戸大橋開通を目前にして、時代の変化や温泉の本来の目的・役割についての先見性を失い、反省を忘れ、フォーラムの精神を活かす事ができませんでした。


●DO!GO!21
 平成5年「道後温泉誇れるまちづくり推進協議会」を設立し、「グランドデザイン」を策定して新しいまちづくりに取り組むこととなりましたが、時代の変化に充分には対応できない点がいくつかありました。
 平成14年(2002)6月、「DO!GO!21〜道後地域グランドデザイン21〜」を策定し、温泉療養を取り入れた本格的な「まちづくり」「宿づくり」に取り組んでいるところであります。
 「DO!GO!21」では、「クラッシック&モダン」をスローガンに掲げ、歓楽地型から温泉地として本来あるべき姿への脱皮を目指しています。お客さまの期待に応えているかという点から地域の有様を総点検し、目指すべき姿に近付くため、幾つかのプロジェクトが提案されています。その最大のものは“第三の外湯”設置であります。


●第三の外湯
 日本最古の温泉である道後温泉は、聖徳太子を始めとした古代から現代に至るまでさまざまな伝説や歴史に彩られています。こうした歴史を踏まえ、魅力あふれる温泉館をつくろうというものです。道後温泉本館は、建築後100年以上たつ木造3階建ての堂々たる建物(重要文化財)であり、現在も共同湯として使われています。本館の写真は観光パンフレットには必ず登場し、道後温泉の“顔”、“シンボル”となっています。
 これも含めても外湯が2つしかなく、もっといろいろな“湯”を楽しんでもらうためにも、外湯の設置が望まれ、その実現は長年の課題でもありました。


●転機を生かす
 「DO!GO!21」策定の過程で、大きな出来事がありました。
平成13年(2001)3月、芸予地震が発生、大きな旅館が廃業し、空き地が発生。県道の両側にホテル、旅館が建ち並ぶ一角で、その跡地利用が大きな課題でした。実は、以前は別の場所が“第三の外湯”候補であったのですが、宙に浮いた状態となっていました。今回空き地が生まれたことから、「第三の外湯構想」は一気に現実味を帯び、グランドデザインにも明記されました。


●民間による自発的活動
 「DO!GO!21」策定の母体となった協議会は、平成4年(1992)に組織され、今年で11年目になりました。今日でこそ、「誇れる」地域づくりは、1つのキーワードとなっていますが、「誇れる」という言葉には、関係者の熱い思いが込められています。
協議会では、道後温泉の将来を自分たちで考え、行動し、問題があれば解決する、そういう活動を行っています。活動は民間の会員によって支えられ、幾つかの部会に所属し、それぞれの立場を超えて参画しています。行政からの経済的な支援は受けておらず、純然たる民間からの会費などで運営されているのです。
 もちろん、地域づくりは民間のみでできるものではなく、行政との共同歩調が必要であります。部会での話し合いは行政の施策に及ぶこともあるし、内容によっては行政から話を聞くこともあります。行政に具体的提言や要望を行うこともあります。仮設で実施し、好評のため平成14年秋から本格実施することとなった、道後温泉駅前の公園“放生園”の“足湯”はその1つの成果でしょう。


●道後温泉への期待を反映
 民間の自発的活動がこのように長続きし、しかも成果を上げつつあるのは珍しいことかもしれません。また、道後温泉関係者だけではなく広い層から協議会に参加があるのは、松山のまちづくりに道後温泉が更に重要な役割を果してほしいという期待の表れとも言えましょう。
 道後温泉は、瀬戸内しまなみ海道開通後の反動に加え、他の観光レジャー施設との競合、多様化するお客さまのニーズへの対応といった課題も抱えている。「DO!GO!21」に掲げられた項目の実現には多くの調整を要するが、関係者の協力を得て、一つ一つ歩みを進めています。


●そして再び温泉フォーラム 
 平成13年。社団法人民間活力開発機構と松山市の共催で「温泉療養フォーラム」が開催され、行政・地域・業界共に温泉の本来のあり方について認識が新たになりつつあります。


●旅館の経営戦略
 旅館の経営戦略については、47万都市に立地する地域特性・歴史・文化・都会の魅力を活かした宿づくり。真にお客様が求める施設・料理・サービスシステム・心地よい癒しの「時間と空間」づくりを目指しています。


●売れる、価値ある宿づくり
 日本の宿泊産業はどう変化するべきかであるが、温泉地旅館の休廃業、倒産が相次いでおり、生き残りを駆けて構造的改革が求められています。
 改革の手法は地域特性、他館やホテル戦略情報を集め、科学的に分析して、その地域に必要とされるもの、存在価値のある宿かどうかの判断をする必要があります。新築、増築等により条件が異なりますが、建物施設設備、料理提供、サービスシステム、料飲販売システム等個々に分析して議論を深めなくてはなりません。
 「知識と情報を集め、比較することにより新しい価値観を創造する」比較力を身につけることが大事です。サービス業でなく、メーカーとしての意識改革をしなければ、お客様の価値観に対応できません。
 温泉旅館としては浴場に力を入れるのは当然ですが、ホテルに対し優位性を保つためには「和」を追求しなければなりません。大型旅館は必然的に「洋」を取り入れることになりますが、洋については客室、会議室、バンケットホール等、「和」を排しホテル並みの「洋」に徹する事が肝要です。
 調和とは結果であり、その意外性がお客様に受ける。旅館として利用する人には情緒ある旅館であり、ホテルとして利用する人には利便性、機能性があり、ホテルにないやすらぎと癒しがある。宿の最大の商品は快適な空間と十分な時間であり、24時間の時間を提供しなければなりません。料理システム、サービスシステムはそれらを確立しているホテルに学べばよいと思います。都市ホテルの料亭、和食、和式宴会等は旅館より優れている所が多く見受けられます。外国人が多いので日本文化を提供しなければならない必要があるのでしょう。料金システム、マーケティング、販売促進等についてもホテルに学べばよいのです。


 また、業界全体の問題点、なすべきことですが、お客様は先に温泉地を選び、次に宿をお選びになります。
地域の業界活動やまちづくりはもっと力を入れなければならない。しかし、業界の論理が先行しすぎることには問題があります。「よい人が、よい店をつくり、よいまちとなる」という原点に帰る時であろう。




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