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いわき湯本温泉の経営戦略の取組と課題
「温泉の社会的活用と21世紀型温泉保養地の経営戦略」の命題では、私如き立場で、皆さまに意見を発表するのはおくがましいと思いますが、一温泉地「いわき湯本温泉」の取組と課題として発表させていただきます。 この「いわき湯本温泉郷」を有する湯本地区と、行政との関係をまず、ご認識いただきたいと思います。大きな特徴として、いわき市は36万の人口を持つ広域都市(14市町村の合併)であると言うことです。本年より中核市として認定されております。その中で、3万数千の人口を持つ常磐地区の中の湯本地区となるわけです。 行政的な予算配分につきましては、自ずと、全体の1割、その中の何パーセントかとなるおそれがあります。その様な中で、行政との協力による事業展開につきましては、予算的にかなり難しいものがあります。 しかしながら、広域観光の視点から、市の総合計画の中の位置づけで、港まち小名浜と温泉まち湯本という際だった都市機能を持つ2つの地域を主軸とし、沿岸地域の観光レクリエーション機能や文化資源、自然資源を活かした「賑わいのある港まち、湯のまちづくり」を推進する、となっております。また 市としてもこれからの施策につきましては、交流人口の増加が重要であると認識をしております。 その様な中 いわき湯本温泉郷の経営戦略の取組と課題につきましては、2000年にまとめられた、いわき商工会議所の「いわきの観光戦略プラン」−年間交流人口1000万人をめざす5カ年計画−の策定事業によるものが、多く含まれます。 この事業は、いわきの「観光を切り口としたいわきのアイデンティティを構築する」と言うことをメインテーマに作られたものです。5カ年計画としたのは、他の先進都市と比較して、基本計画策定が5〜10年の遅れをとっているとともに、激しく変革する社会状況を、情報の収集・分析をもとに、必要不可欠な、新しい観光経営感覚で早期に認識し戦略をたてなければならない時期にきていると言う現実、また、行政側の観光意識の高揚、市民の観光に対する認識を深めることなどを目的に、観光全般にわたる「いわき」の課題・提言・具現化の方向づけをまとめたものであります。 その中で、いわき湯本温泉郷の「いわき」での位置づけと、今後の方向性や展開の模索などのなか、現状の温泉地経営というものが旧態依然としてそのまま進めば、温泉街の経済的地盤沈下が発生することは明らかに思われます。現にここ数年で7万人近い入り込み数の減少が見られています。 ![]() 「いわき湯本温泉郷」においての課題として、情報発信力の不足(設備、組織、内容など)。温泉地としてのらしさが乏しい。地場産品にも特色がない。全体として豊かな自然を生かしていない。ソフト面の人材教育が不足している。行政の観光全般に対する支援が弱い。行政のいわきの観光に対する独自の基本計画を策定していない。国際化が進むなかでの受け入れ態勢の不備。行政と民間の協働作業による受け入れ体制の強化が必要。地域間競争のための特徴の明確化を計る。などというものです。 これらの課題を踏まえ、これからの温泉地は、社会的な価値観の多様化、旅行スタイルの変化に対応し、「健康サービス産業」として、温泉そのものにつかることは勿論「健康」「自然環境との一体感」など、五感で地域文化を感じ、体験することを提案していくことにより、利用者に心身共に十分な満足感を与えていくことが、必要とされます。そのために、次の各項目を重点に事業展開を図っております。 (1)温泉地経営について、地域のコンセンサスを得た形での意志の統一 (2)団体客・男性客から、個人客・女性客へのシフトに対応したサービス、施設の整備 (3)一泊宴会型から、健康、体験などを盛り込んだ連泊・滞在型、泊食分離への移行 (4)利用者の立場から料金の明確化・特徴の明確化など、個性を出した経営を展開 (5)リーズナブルな価格設定の為の共同システムの検討開発 (6)周辺の仕掛け作り、環境整備等に取り組むための、行政と民間の協力・役割分担 (7)スパリゾート ハワイアンズ、旅館、関連施設間の連携により、「泊まる」「食べる」「楽しむ」「学ぶ」などを、利用者が自由に組み合わされる、システム・ネットワークづくり (8)自分たち自身が誇れる特色(個性・サービス・地場産品等)づくり (9)利用者が自分なりに過ごせる、プログラムづくり・スタッフの育成 その様な策定事業のなか、具体的事業の一つとしまして、健康への温泉利用というテーマの事業で、日本貿易振興会(ジェトロ)のミニLL事業(後にLL事業に昇格)に選定されたことが事業推進の大きなきっかけとなりました。 ミニLL事業では、いわき湯本温泉郷を中心としたいわきの観光街づくりの面とドイツ・バーデン州に対する温泉リクリエーション施設の経営ノウハウの交流という面において、商工会議所が主体となり、(社)いわき市観光協会・地区の街づくり団体のじょうばん街工房21・いわき湯本温泉旅館協同組合・いわき湯本温泉観光協会をはじめ、スパリゾート ハワイアンズなどの企業とともに進めてまいりました。 前記の課題と重複しますが、1泊2日の宴会型、すなわち「温泉」=「単純な娯楽観光資源」という認識のままでは、温泉地は荒み、淘汰されていく時代に来ている。温泉があるから地元に集客があるといった考えでは、現実に合わなくなっている。むしろ、これからのニーズは温泉地の個性とは何か、高齢化社会に向けて人に優しい設備は整っているか、人々に「癒し」をいかに与えることが出来るか、そのために何に取り組んでいけばいいのかを模索する時代と認識することからはじまりました。 一方は、魅力的な商品(お土産)が少ないことから、品質の確かな、ドイツワインを選定し、湯本でしか手に入らないオリジナルワインとして特色づくりを図り、同時に地場産品の活性化と消費拡大を図ることを目的としました。 結果、世界的に有名な温泉保養地(バーデン・バーデン)や主になるバーデンヴァイラーとの幅広い産業交流を行い、日本とは異なった温泉利用(保養・医療を中心とした、施設移入や飲泉、ドイツにおけるおんせんのコンセプト)を学び取り入れことにより、新しいニーズに対応した個性的な提言が為されております。 その中の一つにバルネオセラピスト(温泉保養士)育成があります。 バブル崩壊後、一向に回復の兆し見えない経済不況のなか、いわき湯本温泉郷もここ数年、「やすらぎ」と「癒し」をキーワードに事業展開を図っておりましたが、交流を通じ、新たに、温泉と健康の重要性を再認識するとともに、いわき湯本温泉郷の「温泉」そのものを学ぶ機会に恵まれ、関係者でも、以外と知らないこと、改めて納得すること、体系的に理解することなど、はじめて知ることが多く、改めて「温泉」の有能性に驚かされました。これらの知識を是非ご利用なさるお客様にもお知らせしたいという願いの中から構築されたものです。 当初、厚生省認定の「温泉利用指導者」や「健康運動指導士」の養成を考えましたが、一般の就労者や経営者が取得するには、あまりにもハードルが高く、断念いたしました。しかしながら、その思いは捨てがたく、温泉利用者へのアドバイザーとして、カリキュラムを整理し、温泉地として基礎知識のレベルアップをめざし、養成講座の内容がまとまりました。これらの育成事業につきましては、温泉関係者として、温泉を再認識出来ましたので、その活性化につながると思い各地にノウハウを発信していきたいと思っております。 これからの経営スタンスとして、国民のゆとりあるレジャー活動を推進する平和産業、国際文化交流の促進、日本の伝統文化を後世に伝える、癒しの産業と地域経営を位置づけ、変革する社会情勢を踏まえ的確に判断するとともに、単なるお金儲けではなく、社会性を踏まえながら適正な利益を追求し続けていかなければならないと思います。 |