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| 一般講演 ヨーロッパの健康保険と温泉保養地における新しい動向 〜バーテン・バーデンの新プロジェクト ジーグルン・ラング ![]() 工学博士(建築)、ドイツ-バーデン・バーデン市主席市長。バーデンバーデン温泉保養事業団(BKV)時代から温泉管理事務所長として、国際温泉観光都市としての「バーデンバーデン」の運営、マーケティングに従事。1994年からは新たなる運営形態をスタートさせ、観光客・保養客誘致のための様々なプロジェクトへの取り組みは日本の温泉地にとっても興味深い事例が多い。 1.はじめに ヨーロッパの温泉保養地を持つ国では、それぞれに温泉の伝統があります。この伝統は、地理的特徴、気候条件、地域的天然薬効など様々です。例えば、温泉水、源泉、温泉泥、海浜地帯、新鮮な山の空気、高度、さらに各国の生活様式などがその要素になります。 全ての温泉保養地には、1つの共通した基本哲学があります。療養客や訪問客の福祉と健康を増進し、利用客の厳しい要求をほぼ満たす必要があるという点です。 各温泉地が差別化できる特定の立地条件を自己アピールすることによって、温泉保養地が温泉愛好者の基盤を維持しながら、積極的な意味で経済的基盤を確立することです。 こうして達成された質の高い温泉保養地サービスは、次のような基本的要素と密接なかかわりがあると言えます。 − 特に牧歌的で絵のように美しい風景がある − 歴史と文化を漂わせ、人通りの多い中心街にある − スポーツおよび余暇活動が含まれている − ホテル、病院、レストラン、商店街などのサービスの質がいい − 物価が妥当である − アクセスが便利である 今、思い付くだけでもこれだけあります。しかし、基本的条件や受けられるサービスの利点とは別の要素、つまり、温泉保養地に対する思い入れ、強い意志を持った決断、最高のものを達成するための事業者の全力投球があってはじめて温泉保養地は成功できます。ヨーロッパの各温泉保養地の間で益々激化する競争時代の今、そのことが特に重要になります。 2.変化する条件 ヨーロッパの大半の国々で温泉療養のための政府助成金が、ここ数年間切り上げられており、今や他の経費切りつめによって、補完しなくてはならない時代になっています。介護やリハビリテーションサービス、治療経費の自己負担が増えています。当然ながら、次の点をよく考える必要があります。 − できるだけ長く健康でいるためには何ができるか? − 健康増進のためにどの程度まで自己負担する余裕があるのか? ヨーロッパ温泉保養地の新しいアプローチは、こうした動向を視野に入れて、健康や予防処置の新しいサービス提供を、健康増進型志向客の獲得につなげることです。 こうした利用客は温泉地に多くを要求します。この客層は自分たちの休暇の大半を費やして、ほとんどが費用を自己負担して訪れています。自分自身の健康増進もしたいが、同時に娯楽に興じたり、スポーツをしたり、文化を享受したり、積極的に自分の休暇もプランニングしたいのです。 ヨーロッパの温泉保養地の中には、療養サービスの伝統的な領域も怠ることなく、しかも訪問客の新しい要求にも対応できているところもあります。緊急病院が、より一層経済的利益で機能せざるをえなくなっていることや、患者に集中ケアが必要でなくなったときできるだけ早く、リハビリテーション病院へ転送することを余儀なくされていることから、結局のところ、療養とリハビリテーションの必要性は存在し続けるだろうと思われます。 温泉保養地では、2つの異なる領域のサービスを平行して拡張できます。それらは: − 高品質で専門的なリハビリテーション病院の医療ケア − 健康でいることを望み、そのための費用を自己負担する人たちの健康増進サービス この国で、例えば、恵まれた海岸地域、高い山間地域、各景観による様々な特色、そして、湿原地、温泉水鉱泉、健康にいい気候などに応じて、構成や焦点を変化させた新しいサービスが提供されなければなりません。 3.「温泉保養地」という用語について ヨーロッパの有名な温泉保養地や温泉地では、提供できる各種サービスを誇りにし、その療養客や保養客が求める要求に合致できるサービスの維持、拡大に努めています。一般の観光名所や保養地よりも質の高いサービスが期待されています。洗練された町の景観、公園、安らぎ空間、高水準の医療サービスなどは欠かせないものです。 ドイツ語圏の国々では、「温泉保養地」という呼び名は多くのリゾート地がそう呼ばれようと努力し、その結果、授与される賞とされており、いわゆるサービス全域の高品質保障という格付けになっています。 ドイツでは、かなり以前の1892年に、「ドイツ温泉協会」が設立されました。「健康保養地」あるいは、「温泉保養地」というタイトルを得るために満たさなくてはならない多くの基本的要素を、この協会が指定するようになりました。1904年には、「健康保養地と温泉地における健康管理機関のための常任委員会」が設立されました。その委員会が数回の編纂後、遂に1937年、「鉱泉、健康保養地、温泉の定義」を「温泉療養価格体系の手引き書」とともに出版しました。 ドイツ温泉協会は第二次世界大戦後、再び活動を開催し、1951年には「健康保養地と温泉等」に関する格付けのガイドラインとなる手引き書を出版しました。その格付けは定期的に更新され、新しい動向に対処できるように調整されています。 ドイツ温泉協会会長は、自己診断テストを使ってその格付け定義を認識しています。 新しい連邦国家の町では、この定義の条件を整備した後、国家的格付けに申請します。この制度は、膨大な公的助成金によって支えられています。 4,一般市民の健康管理における認識の変化 既に申し上げましたように、ここ数年間の政府助成金の大幅削減に平行して、新しい意味の健康管理に関する息吹が感じられます。具体的には: − 自分の健康に対する関心が益々高まってきたこと − とりわけ、自己の健康管理コスト負担分に関して高まるコスト意識 − 正規の医療を補足する形の全身体的医療に向けた動機 この動向は、「経験に基づく医療」についての会議や講義等の出席者の多さによって確認されています。 こうした中、「自然療法」も提供できる医療活動が盛んになり、自然療法の薬品や製品の製造者は、薬効力の科学的根拠に基づいたものを提供するようになってきています。この種の医療サービスや施設に対して発生するコストを負担する健康保険会社も増えています。 温泉保養地は、この新しいターゲット客層を惹付け、獲得するチャンスを感じとっています。例えば、バーデン・バーデンのように医療サービス領域を「生きる喜び」や予防処置と関連付けています。病気といった言葉を避けることは、それなりの効果があることです。保養客がコストを自己負担し自分の健康のために休暇を「犠牲」にするとき、保養客と事業者の両方が利益を得ることになるでしょう。そこで、バーデン・バーデンのアプローチをご紹介しましょう。 5,バーデン・バーデンの各種サービス バーデン・バーデンには2000年以上の歴史があり、保養客や療養客が必要とするあらゆるタイプの設備が整っていることから、今日国際的に知られた健康管理センターとなっています。 ここアルプス北部は、およそ2000年前にローマ軍が軍事遠征で立ち寄った所です。その時ケルト人は、黒い森の山麓丘陵地帯で、温暖な気候と多くの温泉鉱水のあるこの場所に居住し礼拝堂を設置しました。ケルト人は、ここに小さな町を形成するほど長く留まることとなり、現在、新しい建物が建てられる度に、その遺跡が何度も排出されています。 入浴や暖房用に使用されていた温泉は、当時すでに重要な役割を果たしていました。皇帝(カラカラ帝)、兵士、馬のための建物の一部さえ、数多く展示されており、一度お訪ねになることをお勧めします。今後ほぼ2年間で、新しいハイテク設備が完備され、訪問者たちは難なく地面を浮上して、あちこちに行き来できるようになります。 バーデン・バーデンは、過去1000年の間に「人」が安らぎ、同時に社交を楽しむ国際的社交場となり、「ヨーロッパの夏の都」と親しみを込めて呼ばれてきました。安らぎと社交は、温泉宿泊にはつきものであり、カジノ、劇場、コンサート、飲泉場での語らい、出会い、さらに連帯意識の形成などの役割も果たしていました。 温泉地の出会いの場としての機能は、ますます重要になってきました。今日、健康療養客、会議出席者、休暇を過ごす人、スポーツマン、文化に興味がある人、自然愛好家など、どんな理由でバーデン・バーデンに旅行しようとも、ここでの滞在が忘れられなくなり、再び訪れたいと思えるような様々な体験ができます。 バーデン・バーデンは、この先も温泉保養地として存続できるのでしょうか? 私は、この質問に対してはっきりイエスと言えます。伝統的な意味での「療法」は、過去10〜15年間にかなり痛手を受けましたが、バーデン・バーデンはその伝統と象徴にずっと忠実にあり続けるつもりです。私たちの温泉水は、これからもずっと、私たち患者の健康のために存在し続けるでしょう。 そうした前提に立って、私たちは温泉地の新しいサービス領域にも進出しました。例えば、健康増進や機能回復サービスなどであり、必要な場合、医療専門家の指導も受けられます。「バーデン・バーデンのリュウマチ健康管理センター」は、健常者と病者の両方のために必要な設備を全て備えています。 例えば、 − 温泉浴の楽しみ − (モニター付きの)健康トレーニング − 健康増進のための個別対応プログラム − 予防処置的温泉水の利用、温泉泥、マッサージ、運動療法等々 − 外科的補助のためのいくつかの病院(緊急病院)の整備 − 退院後のリハビリ処置のためのリハビリテーション病院 − 健康維持のための保養地探訪の散歩 こうした時代背景にあって、類似療法用製品のメーカー2社がバーデン・バーデンにあり、この製品の輸出が、世界中にバーデン・バーデンの名を知らしめたことを私は申し上げておきたいと思います。これは、日本に化粧品の輸出をしている2社の化粧品メーカーについても言えます。両方のパートナーもバーデン・バーデンの高級イメージから恩恵を受けているのです。 バーデン・バーデンは、サービス領域を拡大できるのでしょうか? 私は、この質問にもイエスと答えられます。 サービスの拡大領域を、次のような目標に設定しています。 − 健康志向型の自費患者の要望に応え、バーデン・バーデンを新しい活動エネルギー源を与える活力のある環境造りを推進する − ヨーロッパで2番目に大きいバーデン・バーデンのフェスティバルホール(オペラハウス)の新設と共に、輝かしい未来を築き上げる − 「ヨーロッパのメディアとイベントの大学」のような大学をもっと増やし、メディアの拠点(ラジオ局やテレビ局)としてのバーデン・バーデンに重点を置く。 − 医学、健康、メディア、文化といった課題を取り上げる会議規模を更に拡大させる。 − バーデン・バーデンの経済を成す何本かの柱をベースに新たな産業や商業を誘致することで、雇用の創出を図る。 − 変化する社会動向に対処し、若い人々が住みたくなる魅力的なバーデン・バーデンにするため、新しい住形態を開発し実施する。 バーデン・バーデンは、温泉保養地としての優れた名声や信頼維持に努めています。同時にバーデン・バーデンの未来を左右し、未来を手にできる新しいプロジェクトも企画しています。これらプロジェクトの一部は、すでに実施されております。例えば、1999年にその優れたプログラムによって、世界的評判を獲得したフェスティバルホールです。2000年の私たちのプログラムも、フェスティバルホールのような成功が得られることを切に願っております。 「ヨーロッパのメディアとイベントの大学」は2−3ヶ月前にすでに創立されました。日本でも、いつか、このパートナー校ができるかもしれませんね? 作りましょうよ? 6.バーデン・バーデンのもつ特別な雰囲気 バーデン・バーデンの何がそんなに特別なのかと、私はしばしば尋ねられます。何がそんなに多くの訪問者を魅了するのかと。 バーデン・バーデンの一つの特徴は、あちこちに見られる絵のような風光明媚さと豊富な歴史の伝統です。市民投票によって、8年計画のさらなる発展が求められています。 美しい建物や公園、周辺の景観、ホテルなどがあり、さらに新しいホテルが町の中心に現在建設中です。無数の花で飾られた歩道橋のあるオースト河、花が咲き乱れる春など、溢れんばかりの美しさが多くの訪問者の心を捉えます。 再来客のほとんどが海外からであることから、このコスモポリタンな環境と言葉の多様性とが合間って、温泉保養地の快適環境に影響を与えていることも事実です。商店街のサービスも訪問客のニーズに合わせてきています。 人懐っこいサービス精神溢れる市民や観光イベントのパートナーの親切な態度も、訪問客が私たちの町でくつろげるひとつの要素になっているのでしょう。私は、そうあることを願っています! |