NPO法人健康と温泉フォーラムは医療、環境、施設等、温泉保養地に関わるあらゆる分野における専門家を中心とした団体です。
FORUM REPORT FORUM'99
 
■パネルレポート1
「健康の里」キャンペーンで鹿教湯温泉がやったこと

鹿教湯温泉観光協会協会長
斎藤ホテル総支配人  斎藤兵治

昭和13年生まれ。立教大学経済学部卒、鹿教湯温泉地域暖房株式会社設立に参画。
(昭和48年工事開始49年完成)鹿教湯温泉旅館組合長(昭和52年)任期2年。「健康の
里」のコンセプトで、地域活性化に努力。鹿教湯温泉健康保養協会設立に参画。
(昭和53年)丸子町商工会役員就任(昭和55年)、通産省の助成を受けパソコンフォーラムを開催、時代の先鞭を切る。社団法人「21世紀ニュービジネス協議会」設立に
参画(昭和62年)長野オリンピック誘致運動などに参加。斎藤ホテルの建設準備に
従事(昭和63年)時代に先駆けた個人客対象の温泉地ホテルの原型を開発、現在
取締役総支配人。鹿教湯温泉観光協会長就任。(平成9年)





 「抽象的な概念こそが世の中を動かす。」これが鹿教湯温泉の地域づくりの基本です。その抽象的な概念は本物で、時代の先を読み、革新的でなければなりません。
 ご当地武田氏の「人が石垣、人が城。」などは典型的な成功例だと思います。
 そんな意味で、鹿教湯温泉が20年前に提案した「“健康”を温泉地活性化の柱とする。」は本物だったと確信しています。まだ、CIという言葉はありませんでしたがこの結論を道引きだす過程は完全にCIの考えに合致したものでした。地域の歴史や特性を拾い出し、地域の強みを十分に認識しての結論でした。こうしたCI的手法を積み重ねた上に、さらに、具体策を検討する時、「抽象的な概念こそが世の中を動す。」を認識していたことが成功の大きな要因であったと考えます。
 鹿教湯温泉は一昨年「開湯800年祭」を行いましたが、実質的には、戦国期から江戸初期にかけ真田の武将(と言うことは武田の武将、当ホテルなどの先祖)が計画的に温泉地開発を行ったものと考えられています。
 注目すべきことは、その400年前に「健康の里」を意識して作られているのではないか推察せざるを得ないほどに「健康」のために地域が巧妙に構成されていることです。
 もともと、戦後、鹿教湯温泉が世に出るきっかけとなったのは、鹿教湯病院がリハビリテーションと言う概念を日本に初めて提案・紹介し、脳溢血の後遺症は適切な時期に適切に訓練することにより回復させることが出来ることを証明、医学的な治療システムを確立したこと。さらに、この医学的な技術を社会的なシステムにまで拡大・確立し得たことにあると考えております。
 しかし、リハビリテーションの基本を素人なりに分析してみますと、次の二点に要約出来ます。一つは体を動かすこと。そして次に「社会復帰しよう。」とモチベートすることです。
 ところが、鹿教湯温泉が400年前の温泉地経営スタート時点において、すでにこのことを承知していたと推察できるのです。
 鹿教湯の街は、山深い谷間の平地に東西の温泉街と南北の街道を十字にクロスさせ、中仙道の裏街道の要地としての位置づけと温泉を利用した保養地としての二面性を巧みに共存させています。
 温泉街は東から順に、山の小高い中腹に文殊堂・薬師堂と信仰の対象となるものを配置、きざはしを降りて渓谷には風流を楽しむ五台橋(日本版マディソン郡の橋)そして、大事な共同浴場。崖とも表現される急坂(“かけゆ”は“がけゆ”とも言われています。)を上ってようやく温泉街、街道とクロスする中心地には諏訪神社、さらに東へと小道を伸ばして文殊堂の山とは対峙する尾根に、こちらはかなりの高所に、月見堂・稲荷神社、と西へほぼ一直線上に並んでいます。
 要するに地域全体をリハビリテーションのために作ったのではないかと考えられるのです。宿から共同浴場へ険しい坂道を日に何度が通う、風呂上がりには五台橋で涼み、文殊堂に願をかけるためにきざはしを上り降りする。そして、急坂を宿へと向かう。宿で一休みした後には街のにぎわいを楽しむために諏訪神社に参拝する。さらには、散歩を兼ねて月見堂から稲荷神社へと足を伸ばして眺望を楽しむ。いわゆる“中気”には大変な効果があっただろうと予想されます。
 事実、鹿教湯に残る古文書には群馬県新田郡新田郷からお代官さんが中風の治療のために滞在した“中風日記”が残されています。(余談ですが、筆者の読んだ範囲では日記のほとんどが宿の料理・献立の記録です。時代の変遷にかわりなく、温泉旅館の魅力の一つは“食”にあるのだと興味深いです。)また、江戸城大奥のお女中衆が湯治に来た記録があるとも聞いています。
 そして、驚くべきことには、明治の20年代に出版された信州の温泉を紹介する本の記事のなかで「鹿教湯温泉が昔から中風に効くと言われているのは、入浴のために宿と浴場の間を歩くことにあるのだろう。」と見事に看破していることです。残念なのはこうした伝統的なノウハウ(甲府にも文殊堂があります。もしかすると信玄が信州へもたらしたものかも知れません。鹿教湯に隣接する大塩温泉は信玄の隠し湯と言われています。)は、その後、欧米からの近代医学や文化を取り入れることに夢中になった日本では、一世紀近くも歴史の中に埋没してしまったことです。
 「健康の里」のキャンペーン時に、私どもはこうした伝統とノウハウを生かして、「高齢者のスポーツ」に取り組みました。当時としては画期的で時代を先取りした「抽象概念」でした。宮下充正東京大学名誉教授(当時、教育学部助教授)の提案でした。健康開発財団の協力を得て「健康広場」「21番名所巡り」「健康手帳」などをヒットさせ、温泉を家族全員で楽しめる水着着用の「クアハウス」、温泉プールを利用しての「水中運動」「水中歩行」へと発展させ、現在は「里山歩き」に取り組んでいます。
 今春からは、これらのノウハウを集大成して「鹿教湯温泉健康学校」と称した地域をあげての顧客管理システムを立ち上げます。是非応援ください。

1)鹿教湯温泉の入湯客数
 石油ショック不況をものともせず、別添資料の集団保養によりグングン業績を伸ばし、「健康の里」キャンペーンの成功で最高成績を記録、余波が数年続き(三才山トンネル開通でヒンターランドも拡大)、バブルの好景気へと繋ぐ、バブル崩壊の影響が平成6年ごろからようやく出はじめたことに注目してください。
 

2)氷灯ろうに彩られた冬の「五台橋」(日本版マディソン郡の橋)
寒いからこそおしゃれして、
湯の里のそぞろ歩き。
鹿教湯温泉幻想冬物語。
五台橋は、
現世と聖地を繋ぐ。
灯と雪がきらめき夢の世界。

「赤い炎は私の心ネ
きらめく氷は貴方の心ヨ
熱い想いで熔かします。
貴方の冷たい氷の心。」

江戸期から数多くの浴客がそれぞれに思いを込めて登り降りした薬師堂へのきざはし、隣接して長野県県宝の文殊堂がある。今年の冬は70日間に渡って毎夜200個、延べ14,000個の氷灯ろうが幻想の世界を作り出した。新緑の紅葉に燃える秋、この五台橋では日本版マ・ディソン郡の橋にふさわしく“出会いの湯”としての「通り抜け茶会」が開かれる。(7月1日〜7月31日、10月1日〜10月31日)

●資 料
[人に優しい地域の宿づくり賞応募用紙]
 主催団体:鹿教湯温泉旅館環境衛生同業組合     代表者名:永井利幸
 担当者名:永井康雄支部組合:鹿教湯温泉旅館環境衛生同業組合 役職:事務局長
 連絡先住所:〒386-0322 長野県小県郡丸子町鹿教湯温泉
 電話番号:0268-44-2331 FAX番号:0268-44-2255

長野県は日本一の長寿県、しかも老人医療費は全国最低、こうした健康県作りに貢献した鹿教湯温泉。

人に優しい温泉の伝統
鹿教湯温泉は、江戸の初期から中風の名湯、そして湯治場としてしられていました。(こうした温泉場は全国各地に数多く存在していたのでしょうが)明治・大正期の日本経済の近代化が進んだ時代の流れの中でも、また、WWU後の高度成長経済の過程を経た現在でも連綿として伝統を受け継ぎ、健康保養のために、しいては「人に優しい宿づくり」ために、を地域全体として目指し取り組んでいます。
たとへば、

「集団保養」の実績
鹿教湯病院と旅館組合を中心に温泉全体で長野県厚生連が農民の健康管理のために行った「集団保養」事業を、農民の健康管理活動の一環として協力し40年(延1,768,803泊)にわたって行って来ました。(他に「愛知保養」「傷痍軍人会保養」などの実績もあります。)
7泊8日の鹿教湯滞在中に、栄養士の作成した献立による食事(三食)の提供、病院での血圧測定などの集団検診を行い、健康のために学ぶ「院長講話」や婦長、保健婦などによる勉強会など健康保養カリキュラムを実施してきました。

「保養協会」の設立と「健康の郷」
これを受けて、鹿教湯温泉は20年前から地域をあげての健康づくり運動普及のための組織「鹿教湯温泉健康保養協会」を発足させ「健康の郷」づくりに励んでいます。
 この協会には鹿教湯病院や鹿教湯温泉観光協会はもちろんとし、旅館組合、商工会、飲食店組合、地域の自治体、丸子町、など鹿教湯温泉にかかわる全ての組織が参加・加盟しています。そして、地域をあげて「栄養」「運動」「休養」など健康増進の基本となる知識の普及活動や、体験・実践指導などを行ってきました。たとえば、クアハウスやヘルスケアトレーナーに象徴される温泉を利用した健康施設やシステムの先駆的な提案・普及運動をしています。

独自な健康増進事業
 地域内の神社境内で行われる「健康広場」ではヘルスケア・トレーナーが入湯客に軽い体操やフォークダンスなどを指導し楽しんで頂く朝のイベントですが、定着し、年間5万人〜6万人が参加する大イベントとなっています。
 鹿教湯オリジナル(鹿教湯発)でスタートし現在は健康増進の手法として広く社会に定着しているものに、前記の「健康手帳」の他に「プールは泳ぐためのものではない、歩くためのものである。」と国民の多くの意識を変えてしまった「水中エアロビクス」や「水中歩行」もあります。歩くと言えば、「健康のために歩こう」を温泉客に楽しんでもらうために考えられた「21番名所巡り」はスタンプ・ラリーの原点として大きなブームを呼び、今も全国各地で数多くの人々を「健康のために」歩かせています。
 特に、大学の研究者等と共同して「提案」し、その実現のための手法を「開発」し、世に広めた「高齢者も健康のために運動することが必要である。」と言う考え方は画期的でした。
 また、その(高齢者も運動)効果を認識させるための広報・普及運動を時代に先駆けて行う過程での成果として「クアハウス」に象徴される多目的温泉利用館の建設ブームは一種の社会風潮なども作りだしました。(水着を着用して男女・家族ともに入浴を楽しむ。などが鹿教湯発のアイデア)国民の健康増進に大きな成果を挙げた事は特筆するべきものと考えています。
 たとえば、浴客に対しての「健康手帳」「グッドヘルス・ノート」(健康に関する一般的な知識を紹介するとともに、それだけでなく、自分の健康管理に必要な基礎的なデータを記載出来るようにしたノート)等の配布なども昭和の40年代の早い時期に行い、社会的な先べんを付けています。これ等は現在自治体など多くの組織が行う健康啓蒙事業の中心的な手法の一つとなっており先駆的な事業であったとの評価を受けています。
 「ヘルスケアトレーナー」と言う表現はこうした活動を通して、鹿教湯が提案した言葉と概念ですが、現在19の国家資格類似の資格制度が有ると聞いています。鹿教湯が如何に先見的な健康増進事業を社会に提案・実現させてきたか、の良い見本です。協会設立以来毎年定期的に開催してきた「鹿教湯健康フォーラム」は、その時々の最新の健康情報を地域に広く発信する役割をはたして来ました。温泉地が地域の一員としての役割をはたす上でも大きな意義を持っているものと考えます。
 現在も、「里山歩き」と言う新しい考え方を提案しております。地域の経済や生活に密着してきた身近な自然の中を歩き、埋もれてしまっている先人達が残して来た歴史的遺産、峠の道標や道祖神など、を楽しみながら健康増進をはかって頂くのです。

「友の会」の発足
 2年前から、地域内に「鹿教湯温泉湯福の郷友の会」と称するボランティア組織を発足させました。組織の目的には「自らを健康増進のためにモチベートすると共に地域住民をも健康増進に向けてモチベートする。」と記してあり、健康保養協会が行う健康増進事業や観光協会の各種の事業に参加し、楽しみながら自分の健康増進をはかるとともに、地域の人たちや浴客の健康増進をもお手伝いするなど数多くの活動を行っています。
 昨年秋には一ヶ月にわたり「通り抜け茶会」に協力、延べ5,400名のお客さんに「茶」をサービスしました。

日本一の長寿県“長野”へのこだわり
 以上、長野県が提唱・推進した「減塩運動」など地道な県民の健康管理運動と共に、これ等鹿教湯の先駆的な事業が一般県民の健康増進意識を高め、健康に対する知識を広める事に強く影響を与え、日本一の長寿県を作りあげた大きな要因になったと考えています。

●資 料

『実施要領』

第1回「人に優しい地域の宿づくり賞」

「人に優しい地域の宿づくり賞」とは
 財団法人全国ホテル旅館振興センター並びに全国旅館環墳衛生同業組合連合会の主催で行い、厚生省の後援のもとに、21世紀の超高齢化社会に向けて高齢者や障害者を含む全ての人々が、安心して快適に楽しめる社会環境づくりをめざして創設したものです。
 この賞は、地域の旅館や旅館組合の参加する行事で、地元の団体・ボランティアグループ等が、協力しておこなうイベント・祭り・展覧会・デイサービス活動などを対象とします。そしてその内容が高齢者等をはじめ、全ての人々にやさしい配慮がなされており、地域の自然や文化・歴史・趣味などを通じて、訪れる人達も自由に参加出来、旅の楽しさを更に満喫する事ができるもの。更には地域の宿泊産業の振興を中心に社会福祉に寄与する内容の活動であれば、全てが応募の対象となり、その中から選考委員会が審査し「厚生大臣賞」をはじめ多数の賞を企画するものです。

(選考のポイント)

1)いきがい
   高齢者や障害者をはじめ全ての人が、地域の自然や文化、歴史、にふれたり、祭りやイベントの見物などが快適な環境のなかで楽しめたり、音楽や芸術など趣味を通じて旅行者や地域の人々と心のふれあいがあったり、快適な宿泊の提供などがあって、いきがいを感じられるもの。

2)おもいやり
   環境・飲食・交通等の安全性に対する配慮があり、高齢者や障害者が利用する旅館やイベントの公共施設、会場、食堂などの施設面、サービス面で、おもいやりのある配盧があるもの。

3)よろこび
   大勢の人が参加出来て、趣味や娯楽的内容のイベントであったり、また、現在すでに行われているお祭りや展覧会等で高齢者や障害者の人達も、健康な人と一緒に楽しめる内容の企画があったりするもの。

4)あたたかさ
   高齢者や障書者が利用する、専用駐車場や会場施設が車イスなどに対応したり、ボランティアによる対応が配慮されていたりするもの。高齢者や障害者に対して旅館における気くばりがオリジナリティなもの。

5)やすらぎ
   急病人や怪我人などに対する医師や介護用品の配慮があったり、救急病院との連携があったり、保険の設定による対応があったり、更に地域のボランティアによる支援活動などがあったりするもの。医療機関等との協力により、リハビリや社会生活などの中での保養や温泉保養の面から旅館を利用してやすらぎが得られたりするもの。
<主催>財団法人全国ホテル旅館振興センター、全国旅館環境衛生同業組合連合会
<共催>都道府県旅館環境衛生同業組合
<後援>厚生省、日本経済新聞社、他
<協賛>関係諸団体等
<協力>全旅連シルバースター部会
<選考委員会>振興センター審査委員、学識経験者、障害者団体等、関係諸団体代表者等をもって構成する。

*付帯資料は作成中です。



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