| FORUM'99 |
| ■パネルレポート2 心とからだを甦らす健康保養地 ![]() NPO法人健康と温泉フォーラム理事 勝木 道夫 昭和6年生まれ。金沢大学医学部卒。(財)北陸体力科学研究所及び(医)社団勝木会理事長。日本体力医学会評議員、日本リハ病院・施設協会理事、厚生省「健康日本21企画検討委員会」委員等をつとめるほか、同「健康休暇に関する検討委員会」、社保庁「保険福祉施設事業中期構想検討会」委員を歴任、健康増進医学の実践を一貫して掲げている。日医認定産業医・健康スポーツ医、日本整形外科学会認定医・スポーツ医・リウマチ医・日本リウマチ学会認定リウマチ登録医のほか日本温泉気候物理学会認定温泉医。平成6年よりNPO法人健康と温泉フォーラム理事。石川県教育委員会委員、小松市体育協会会長も務める。 急速な少子高齢社会が進行するなかで、暮らしや健康への先行き不安が募っています。慢性に推移する生活習慣病は一向に数を減らす気配はなく、各種ストレスを引き金とするからだとこころの障害も深刻化する様相です。 飯島裕一氏は著書「疲労とつきあう」の中で、現代人はぐったり疲労のなかにいる、と指摘した上でこう警鐘を鳴らしています。「ゆとりを失った日々の延長上に、うつ病、不安神経症、適応障害などの心の病が待ち受けている。この現実は、ゆったりとした自分のための時間をもつことの大切さへの問いかけでもある」。 「ゆったりとした自分のための時間」を取り戻し、充実した自らの人生を心新たに歩みだす。かつてそうした『場』でもあった温泉地を、保養地医学に基づくプログラムやマンパワーを備えた『健康保養地』に再生させていく────。少子高齢化とストレス社会が昂進する、かつてない不安と不透明の時代にあって、人々はいま、『健康』『保養』をキーワードとし、安心・快適・寛ぎを充たす町づくりを心から切望しているのではないでしょうか。 1.保養地医学を組み入れて温泉地活性化 ヨーロッパやアメリカには、現にこうした健康保養地が数多くあり、からだとこころのバランスを維持し、人生を充実させる場としてしっかりと機能しています。滞在者は多彩な内容を持つ保養プログラムを思い思いに選択し、数日間の癒しの時を過ごします。生活習慣のチェックや栄養、運動指導、マッサージや水治療、さらにはエステティックやアウトドアスポーツなどを含んで、利用者が飽きない、楽しく快適なプログラム構成となっています。 2.手始めに健康保養セミナー実施 ──石川県・小松市、北陸体力科学研究所のチャレンジ── 私たち勝木グループ=リハビリテーション加賀八幡温泉病院、整形外科芦城病院、北陸体力科学研究所など=は、温泉や緑、豊富な食材に恵まれた小松市の東部丘陵地一円を舞台に、わが国にはまだない本格的な健康保養地をめざす『こまつ健康の里計画』を提唱、官民連携の推進体制をつくり、多年の活動を重ねてきました。(財)北陸体力科学研究所が、企業や健保組合、地域の方々を対象に実践を重ねてきた「健康保養セミナー」のノウハウを基本にしながら、より一層の寛ぎと満足、心地よさを満喫していただくために、スタッフやソフト、快適環境の充実と整備を町ぐるみで取り組んでいく計画です。 現在行っているセミナーは言わば『点』に例えられますが、これを『線』に伸ばし、やがては『面』に広げていく。このために、近隣の温泉地や観光資源などを組み合わせた多様な滞在プログラムを作り、関係各方面に健康保養地の意義と可能性をアピールし続けています。小松市を中心に、白山麓や永平寺など広く周辺エリアを包んで展開する広域の健康保養地を、時間をかけてきっちりとつくりあげていきたい、と願うのです。このエリアが培ってきた哲学・信仰や思惟、伝統文化や自然環境は、今の時代を生きる私たちの心の餓えを癒し、充実した人生を新たに踏み出す貴重な指針を与えてくれるはずです。 3.地域ぐるみの連携、情熱が推進の土台 別府温泉の陰に隠れていた湯布院温泉が、「女性客」と「洗練された文化性」に的を絞った町づくりに挑戦し、見事に成功したように、個性的で多様な切り口を持つ町や地域が人気と注目を浴びており、とりわけ「健康」や「癒し」、「味と文化」「発見」などを求める人々の動きは、この経済不況にあっても勢いを増すばかりです。一人一人の個人が自らの価値観に目覚め、からだとこころをリフレッシュし、気分爽快、「最高に幸せな自分を感じる」場を懸命に探し求めているように思われます。だからこそいま、例えばヨーロッパの温泉保養地のように、長く滞在して飽きない、多彩な味わいを持つ健康保養地が希求されているのではないでしょうか。 実現は決して容易ではありませんが、わが町小松をはじめ、国内でも幾つかの町や地域が健康保養地づくりに動きだしています。肝心なのは、こうした潮流を敏感に真摯に受けとめ、地域ビジョンとして計画的、持続的、情熱的に取り組んでいく地域ぐるみの姿勢ではないでしょうか。 小松市を中心とする南加賀地域は「健康」「安らぎ」、「生きがい発見」を核に据えた地域整備を、いち早く掲げて模索を重ねてきました。もとより一朝一夕に叶うものではありませんが、国内外の人びとにくつろいでいただける独自の健康保養地を、国内のライバルらと競い合いながら、負けずに粘り強く追い求めたいと思います。 資料.1 健康保養地に適した条件 ▽行きやすさ(地理的、心理的、経済的、かつ開放感あふれる場所) ▽包括性(こころ・からだ・まち・自然・気力) ▽協調性(医・看護・運動生理・体育・栄養・心理・リハビリテーションの各分野のチームワークのとれたスタッフがいること) ▽継続性(一生・面白く楽しい・バラエティ・文化的、各種イベント) ▽責任性(真面目・科学的・衛生的・障害管理)を基本条件とし、このほか ▼湧出量の多い天然温泉源を持つ ▼保養に適した季節性気候に恵まれている ▼心を和ませる風光明媚な自然環境を有し、地形療法や気候療法、空気浴、森林浴や自然の中での学習散策、有酸素運動に適した歩行療法の道、さらには健康スポーツのための施設やイベントホールがある ▼保養施設の職員・地域住民を問わず、利益追求型ではなく、保養の意義に認識が深く、保養者と地域住民との交流も大切にする雰囲気とともに、清潔さに関心が深いこと ▼認定温泉医、温泉療法医の常勤する中核病院、運動処方の出せる健康増進施設、食事療法の実施ができる食堂のあること──。 *付帯資料は作成中 |