| FORUM'99 |
| ■パネルレポート1 観光と農業の共生を目指して ![]() 笛吹農業協同組合代表理事専務/ 山梨県農業協同組合中央会副会長 斉藤敏夫 昭和12年生まれ。 笛吹農協協同組合代表理事専務。山梨農業協同組合中央会副会長。 健康と温泉FORUM '99 in 石和実行委員。 私は生来の農業人でありますので、その観点に立脚しながら、温泉観光地であると同時に農業地帯でもある石和町の発展すべき姿について、考察していきます。 石和温泉郷の歴史は八田地内の畑から昭和36年、高温多量の温泉が噴出したことが幕開けでした。溢れ出た温泉は果樹園内の小河川に流れ込み露天風呂が誕生、当時24歳だった私も、のんびりと浸かったものでした。石和温泉郷は現在、『果実と温泉の郷』をキャッチフレーズにしておりますが、その時からの宿命であったとさえ思えるのです。 さて、テーマである温泉を活かした地域経済の活性化ですが、やはり宿泊客誘致を第一義的に捉えるべきでしょう。この地を訪れる人は、都会生活から脱却して自然と温泉を満喫したいと願う者、病気療養などを目的とする長期滞在者、宴席を主眼とする人、などと様々です。そして、要食事療法者を別として多くの人は、日常生活と異なった、所謂ハレの食事を望みます。私の経験からして、新鮮な地物をふんだんに使用した名物料理は、特に喜ばれるものです。 そこに、これからの地域農業を支える基盤があり、販売農家650世帯(人口3,200人)の経済的豊かさを向上させる術があると考えます。観光と連携した農業こそ、激化する産地間競争に打ち勝ち、確固たる生産基盤を樹立させていく道ではないでしょうか。しかしながら、各ホテルや旅館でも主力農産物であるブドウ、モモ、カキなどを中心とした果物を宿泊客に提供してはおりますが、甲州ブドウ祭りの時以外は個々の取引きに限られているのが実情であります。 もとより、農家サイドの取組みに弱さがあることは否めませんが、これが生産者組織と消費者組織、例えば出荷組合と旅館組合との連帯がより強固になったのなら、私達は確実な年間生産計画が策定でき、輸送費用も軽減されるため、安価で新鮮な果物を提供できることでしょう。美味しい果物で更なる観光客を呼び込み、生産者も豊かになります。観光と農業が両輪となるならば、まさに果実と温泉の郷が現出することでありましょう。 新鮮で安価な果物に接した人は、もう一度味わいたいと願うことを、生産者は確信しています。仮に宿泊施設側との間に親密な連絡網が確立されるのなら、充実した宅配制度も整備されます。農家の収穫の喜びに満ちた宅配や直売で移りゆく季節を感じた消費者は、再び石和温泉郷を訪れる可能性もあります。農産物を介在として触れ合いが生まれ、その人にとって我が町が、第二の故郷になることでしょう。 二月下旬から実施されたハウス桃園の花見事業は、観光と農業が一体となった良い実例です。収穫物ばかりでなく農業は、あのように素晴らしい空間も提供できます。農業は食糧を供給することばかりでなく、浸食されつつある自然の防波堤でもあります。環境を保全し季節を映し出すことによって、人間に安らぎを与えます。地球規模での汚染や異常気象が叫ばれる昨今、その重要性が再認識されています。 そうした視点から、提案いたします。農地の減少につながる大規模開発型のリゾートを目指すのではなく、自然と文化をありのまま活かしたグリーン・ツーリズムの推進です。西欧では都市住民に対して農村で休暇を≠ニのキャンペーンを実施していて、農家民宿などによる長期滞在型の旅行を推奨しています。我が国でも労働時間短縮化の傾向にあり、自然志向や農業体験志向が強くなっています。都市住民も低料金で長期に亘って自然を満喫でき、私達にとっても所得源となる、これこそ農村地域活性化への指針ではないでしょうか。 政府も四年前、農山漁村滞在型余暇活動促進法を施行し、グリーン・ツーリズムの考えを後押ししています。農家民宿も北海道十勝平野や南紀地方、それに本県で誕生しています。幸い本県では『やまなし農村休暇邑』として、18町村が活発な活動を展開しています。石和町でもこのような取組みに参加して、温泉と自然、文化をセールスポイントに、観光と農業が共生できる体制を構築していくべきであります。グリーン・ツーリズムの方策が推進されるなら、深刻な後継者不足や遊休農地の問題なども解消されると考えます。 本町でも近年、未耕作地が目立ち、貴重な生産基盤が放棄されています。こうした傾向に歯止めをかけるため、地方自治体とJAなどが出資する農業公社の存在がクローズアップされています。公益的な目的から農地の保全・管理を行う公社は、農作業の受委託だけでなく、特産品の開発や販売、都会と農村との交流事業も手がけ、地域活性化の中核組織になろうとしています。また、大消費地にアンテナ・ショップを設け、農産物需要傾向を直接キャッチしたり、販売促進を試みています。このように地域おこし≠ノもつながる農業公社を、この地にも設立したいと願っています。 以上、観光との連携を基軸に、これからの地域農業のあるべき姿について、展望してみました。 |