NPO法人健康と温泉フォーラムは医療、環境、施設等、温泉保養地に関わるあらゆる分野における専門家を中心とした団体です。
FORUM REPORT FORUM'99
 
■パネルレポート2 

温泉と健康の街づくり

NPO法人健康と温泉フォーラム理事 白倉 卓夫

昭和7年生まれ。群馬大学大学院医学研究科内科学系博士課程修了。40年ゲッチンゲン大学留学、46年東京都老人医療センター医長、54年群馬大学教授、55年群馬大学草津分院長併任、61年ギーセン大学(バートナウハイム)留学、平成9年定年退官、群馬大学名誉教授、9年より東京都多摩老人医療センター顧問。
現在,日本温泉気候物理医学会・日本臨床環境医学会・日本入浴福祉研究会各理事。
一般向け著書には『温泉・お風呂入浴法』(H5保健同人社)『からだと心に効く入浴健康術』(H6同文書院)『草津温泉』(H9草津町温泉研究会)など。NPO法人健康と温泉フォーラム理事。








 近年におけるわが国の高齢者の急増と人口の高齢化、青壮年者層における生活習慣病を中心とした成人病の増加など、その対策ともあいまって人々の健康に対する関心は極めて高いものがあります。さらにまた、人々の時間的、経済的ゆとりの増大にともなって、如何に健康的に長らえるか、如何にして健康をえられるかといった我々の”本能”はつのるばかりであります。このような背景のもとに、「休養」「保養」「療養」の場としての温泉保養地は日本人がもつ高い温泉志向ともあいまって従来にもまして益々期待されるものがあります。
 そもそも温泉には「休養」「保養」「療養」の三つの効果が期待されております。「休養」では毎日の日常生活のなかで蓄積した心身の疲労を一、二泊の短期間の温泉地滞在で洗い流して元気を取り戻し、再び日常生活に復帰するといった効果を期待することができます。「保養」では人々が普段のストレスの多い、不規則な日常生活から離れて一から三週間位温泉地に滞在することによって、内分泌系、自律神経系などの乱れを本来の正常のリズムに修復してくれる効果が期待されます。「療養」では、温泉の連続浴に加えて、温泉地の気候(気候療法)や環境(地形)、さらに運動、食事、その他の物理療法も併用した総合的作用によって、慢性疾患の治療効果がもたらされることが期待されます(図参照)。この保養、療養では、温泉の連続反復刺激に対する体の働きのトレーニングによって外界への適応能力、外敵に対する防御能力(免疫能)が高まってきます。温泉保養、療養はこの働きを通して健康維持・増進、疾病治療を図るもので、一種の自然療法といえましょう。薬物治療の副作用や限界が問題とされる今、温泉療養に期待される大なるものがあります。
 ひるがえってわが国の温泉地の現状をみると、古くからあった保養、療養の長期滞在型ともいえる湯治場は少なくなり、温泉地には湯治より観光を目的とした来湯者が多くを占めるようになり、温泉地の大型観光地への変貌がみられるようになりました。団体に主眼をおいた大型旅館やホテルが立ち並ぶ温泉街が多くなりました。当然自然湧出量以上の温泉需要は温泉の不足を補うための温泉集中管理システムの出現を生み、天然の温泉を直接肌に感じ、本来の温泉の恵みを享受することも著しく困難なものにしております。温泉地の豊かな自然との触れ合いもなく温泉地を去る滞在形態は温泉地のもつ三養効果からは程遠いものであります。
 私が数年前に温泉に関わる温泉療法医の要望事項を集計したことがありますが、そのなかで温泉地関係者に対しては、(1)科学的なテコ入れのある統一のとれた保養地づくり、(2)保養、療養のための宿泊設備の整備、(3)滞在費、保養プログラム、利用する温泉の泉質の表示、温泉療法医の顧問医への任命(国民保養温泉地)と表示、(4)保養、療養のための接客教育、(5)保養のための旅行計画作成などがありました。また今私どもが目指す当面の目標としては、(1)保養地の整備(保養地の指定とネット作り、マンパワー確保)、(2)温泉学・保養地医学(タラソ・地形・アロマテラピーも含む)の確立と推進、(3)温泉気候物理医学センター、温泉博物館の設立など、があります。
 温泉とそれを取り巻く温泉地には健康維持、健康回復、さらには疾病治療効果の潜在力が豊富に秘められていることは既述のとおりですが、温泉の誤った利用によっては脳・心・その他の急性疾患を誘発する危険も併せもっております。温泉のもつ素晴らしい潜在力を如何に旨く引き出して有効に利用するか、今、温泉地に求められている課題と思われます。
 温泉地のあるべき姿の正しい認識がサービス提供者に求められるのは当然ですが、同時に温泉利用者の啓蒙も不可欠であります。これを実現していくためにはまた、行政側からのサポート、温泉に関わる地学、医学・医療側からのアドバイスも必要となるでしょう。
 本パネルでは、「温泉と健康の街づくりは如何にあるべきか」をテーマに、健康づくりや医療の現場で長年にわたり携わってこられた専門の先生方からお話しを戴くこととなっております。
 各パネリストの講演や討論を通して本パネルが温泉と健康の街づくりに少しでも役立つことを念じております。

*付帯資料は作成中



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